2013.04.02

サッカーの夢を叶える本 Powerd by I DREAM

テーマ募集

このコーナーでは、選書してほしいテーマを募集しております。時勢に合ったネタ、サッカーとは直接関係のないテーマ等々、なんでもかまいません。ブックディレクターの幅允孝氏が、あなた好みの本をセレクトしてくれます。

サッカーにまつわる経済/経済的効果が気になります

スポーツイベントの経済学―メガイベントとホームチームが都市を変える

原田宗彦(平凡社)

 石原前都知事から猪瀬現都知事に変わる時、焦点のひとつは2020年の東京五輪招致だった。震災復興、景気回復への願いを込めての招致と言われているけれど、なぜ五輪開催が日本の経済のためになるか。本書は、そうしたスポーツイベントとホームチームの存在が都市に及ぼす、経済的な影響力や可能性を論じている。

 五輪商業化の先駆けは、IOC委員長のピーター・ユベロスとアディダス社長ホルスト・ダスラーによって、マーケティングの観点でスポーツを眺めた「スポーツ権益の再販」というビジネスが完成する、84年のロサンゼルス五輪からだ。

 

サッカービジネスほど素敵な仕事はない
たった一人で挑戦したFCバルセロナとの取引

浜田満(出版芸術社)

 サッカーにまつわるお金の多くは、選手の給料や移籍金、スタジアムでの入場料、ユニフォームの販売といった現場で生まれている。著者の浜田満は、海外クラブチームの日本展開を請け負う会社でサッカー仕事のキャリアを始め、バルサのライセンス商品の開発、オフィシャルショップの開店等を担当し、『キャプテン翼』の大空翼をFCバルセロナに正式入団させた、驚きの展開にも関わっている。

 その時のつながりを活かし、バルサのソシオ受付の日本代理店として独立。バルサ来日に合わせ、たった3週間の準備期間で臨んだ14日間限定の募集にも関わらず、あっという間に300人の募集があった。その後、来日試合終了後も継続して増加し、日本にファンがいるのかと不安視していたバルサ幹部は喜び、契約は継続となった。

 

サッカーで燃える国 野球で儲ける国
スポーツ文化の経済

ステファン・シマンスキー/アンドリュー・ジンバリスト(ダイヤモンド社)

 気になるタイトルである。最近の天文学的な移籍金の話しだけを聞いていると、サッカーも儲かってるじゃないか! と言いたくなるのだが、儲かっているのは一部のビッグクラブのみで、構造的には儲からないようになっているようだ。

 スポーツを文化的側面と経済的側面から論じた本書は、アメリカ人のジンバリストが野球を、イギリス人のシマンスキーがサッカーを書き、“野球は利益という狭い焦点をもった独占的な産業として発展してきたのに対して、サッカーは競争の激しいクラブを集めた包容力のある連盟として発展してきた”として、論が進められる。

 

「Jリーグ」のマネジメント
─「百年構想」の「制度設計」はいかにして創造されたか

広瀬一郎(東洋経済新報社)

 元電通マンで、トヨタカップやワールドカップなどサッカー関連のイベントを多数プロデュースしてきた著者。Jリーグ経営諮問委員会の委員も務め、Jリーグを中からも外からも知る人物が書いた、Jリーグ「百年構想」の「制度設計」の裏側。

 93年のJリーグ開幕から20年。今年は、Jリーグの成り立ちを振り返り、制度がしっかりと継続運営可能かどうか検討するにはちょうどいいタイミングかもしれない。どこにどれだけの経費をかけ、売上を確保するのか。普通の企業が当然やることを徹底してやることがどうしたって必要になっている。Jリーグのロゴ制作で、博報堂が最初に1億円と脅しながら3000万円の提案をし、ありえない突っぱね、最終的に1000万に落ち着いた。さすが代理店という“ふっかけ”話しではあるが、開幕前年からJリーグは空前の好景気だった。博報堂は、3年間2億円という公式スポンサー権を8社に何の苦もなく売ってきたのだ。そんな時代でもあったということ。

 

ヤバい経済学

スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー(東洋経済新報社)

「90年代のアメリカで犯罪が激減したのが中絶の合法化のおかげとは?」「銃とプールと危ないのはどちらか」「麻薬の売人はなぜいつまでも母親と住んでいるのか」「相撲取りと八百長のインセンティブ」。本書の項目は、こうした気になって仕方がない文言でうめつくされている。

 起こった出来事の表面をすくい、理解したつもりになっていることが、経済学的思考法を使うことで一気に違った顔を見せ始める。原因と結果を、インセンティブ(=人の意思決定や行動を変化させるような要因)を拠りどころに論理的に考えれば、相撲取りが八百長をすることは必然的なことになってしまうのだ。実際、八百長報道が明るみに出る以前、偶然にも本書はそのことを説明してしまっていた。神聖なスポーツと呼ばれる相撲の勝敗ですら経済学で分析できてしまう。

 
幅 允孝(はばよしたか)

BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。
国立新美術館ミュージアムショップのスーベニアフロムトーキョーやTSUTAYA TOKYO ROPPONGI、LOVELESSなどにおける本のディレクションや、d-labo(スルガ銀行ミッドタウン支店内)などのライブラリー・ディレクションを手掛ける。ほか、編集、執筆、ディストリビューション等、本周りのあらゆる分野で活動中。最近では、渋谷のSHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS、銀座のHANDS BOOKSがオープンしました。

BACH : http://www.bach-inc.com

 

スルガ銀行が提供するウェブサッカーマガジン。サッカーから人生まで、すべての夢の、サポーター。あなたのゴールを、アシストします。「『サッカーの夢』を叶える本」コーナーの他に、サッカーと関係のある著名人のインタビュー集「ゆめのはなし」や、ライター竹田聡一郎氏の連載コラム「日々是蹴球」など、充実のコンテンツが揃っています。
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