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本田がゼロトップ? 日本代表監督の有力候補、スパレッティってどんな監督?

2015.02.13

日本代表監督の有力候補に浮上しているスパレッティ  [写真]=Getty Images

 ハビエル・アギーレ監督の解任以来、日本代表の後任候補の報道は連日メディアを賑わせている。そこで今回は有力候補と見られているルチアーノ・スパッレッティについてイタリアサッカー専門誌『CALCIO2002』の編集長に聞いた。スパレッティのキャリアと戦術、さらに日本代表を率いた場合どんなチームを作るのかを予想してもらった。

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 1959年3月生まれのスパレッティは、34歳の時にエンポリで現役を引退すると、そのまま監督に転身してチームの指揮を執った。当時3部だったエンポリを2部へと昇格させ、監督キャリアは順調に滑り出したと思われたが、「下積み」はその後に訪れる。地方クラブを任されるも、努力が実を結ぶのを待ってもらえずクビを宣告されることを繰り返したのだ。1999-00シーズンのヴェネツィア(名波浩が在籍していた)では、1シーズンのうちに2度解任される屈辱を味わっている。セリエAでの実績がなかった当時、「卓越した理論を持ちながらも実践ができない未熟な監督」と見られていた。

 転機が訪れたのはウディネーゼの監督に2度目の就任をした2002年。アルベルト・ザッケローニフランチェスコ・グイドリンが育てたチームを受け継いだ彼は、見事に結果を出す。

 ウディネーゼは地方クラブでありながらもスカウティングと育成ではイタリア屈指の実力を誇る。育成上手なのは選手に限らず監督に対しても同様で、早急な結果を求めず成長を期待してくれるこのクラブは彼に合っていた。

 就任から3シーズンの成績は6位、7位、4位。1997-98シーズン、ザッケローニの下での3位には及ばなかったものの、若手を育てながら結果を出す手腕は高く評価された。

 そして2005年夏に初めてのビッグクラブとなるローマの監督に就任。セリエA優勝には手が届かなかったものの、3シーズン連続で2位となるなど、財政難という不利を覆す好成績を残した。

 この時に称賛を集めたのが、「ゼロトップ」という新たな戦術、現在の「偽9番」の原型となるシステムだ。チームで最高のプレーヤーではあるが、ケガでコンディションが安定しなかったフランチェスコ・トッティの長所を最大に引き出すために考案されたもの。トッティが頻繁に中盤まで下がることで、どこまでも彼をマークする相手DFをペナルティエリアから引きはがし、そこに2列目、3列目のMFが飛び込んでいく流動的な攻撃スタイルを確立した。

 4-2-3-1の「3」にあたる2列目に据えられたのは、マンシーニ、シモーネ・ペロッタ、ロドリゴ・タッデイといった選手たち。戦術理解に優れ、精力的に動けるタイプだが、決してワールドクラスではない。彼らは守備のタスクもきっちりこなしながら、ボールを奪うとすぐに反転してゴールに迫った。スパッレッティの「ゼロトップ」を機能させるカギは、攻守の切り替えの早さ、そして綿密な連動性だった。

 監督としてのスパッレッティの特徴をもう一つ挙げるなら、チームを強化する上で補強に頼ろうとしない点だ。既存戦力と下部組織から引き上げた若手でチームを作り、若手は育て、ケガ人やベテランは復活させ、それでも足りない部分だけを補強でカバーしようとする。彼の指導者キャリアの重要な位置を占めるエンポリ、ウディネーゼ、ローマのいずれも育成を得意とするクラブであることは無関係ではないだろう。ローマを解任された後、昨年3月まで4年半の長期政権を敷いたゼニトでも、クラブが潤沢な資金を持っているにもかかわらず、彼はフロントに補強をねだりはしなかった。

 さて、スパッレッティが日本代表監督になった場合、どんなチームを作るのか。過去の実績から想像するしかないが、戦力に合わせて柔軟な戦術を用いる彼が、「日本人の特性を生かしたサッカー」を採用することは間違いない。ローマで見せていたような、攻守の切り替えが早く、流動的な攻撃サッカーを選択すると見るのが妥当だろう。

 この年代のイタリア人監督であれば誰でもそうであるように、ベースとなるのは4バック。そして、クイックネスに優れるがパワーに欠ける日本人選手の傾向を考えると、ローマ時代の「ゼロトップ」を再び採用するかもしれない。その場合、トッティの役割を演じるのは本田圭佑になるだろう。岡田武史監督の下で1トップは経験済み。長くロシアリーグにいただけに、スパッレッティが本田を熟知している点でもこの起用法は十分あり得ると言える。

 就任にあたって「世代交代を厳命された」のであれば別だが、若手だけでなくベテランもしっかり活用するのがスパッレッティのスタイル。例えば遠藤保仁や長谷部誠。攻守のバランスと切り替えというスパッレッティ戦術のカギを握るダブルボランチには、高度なインテリジェンスが求められる。ここは2人の経験を活用すると予想する。特に遠藤の長短のパスを駆使したゲームメークは、チリ代表のダビド・ピサーロを重用したスパッレッティの好みに合うはずだ。

 それでも、やはりスカウティングと育成に長けたクラブで長く働いているだけに、世代交代は期待できる。坊主頭で眼光が鋭く、いかつい感じを受けるが、ユーモアもあるし、ザッケローニと同じくチームの和を尊ぶ「協調タイプ」の監督だ。

 ただ、現在のヨーロッパでフリーな監督の中では、スパッレッティは最も実績ある者の一人。クラブでも代表でも、監督交代が必要ならば常に彼の名前が挙がるほどの「優良銘柄」だ。実際に招聘するとして、彼のモチベーションを刺激し、日本行きに「Si」と言わせるのは、そう簡単ではないだろう。

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