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ジャイキリ本の著者が明かす②「これまでの会社が30年くらいかけて経験する4つのステージの成長痛を、楽天では5年で経験できた」

2016.09.05

 2012年の発行以来、『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――「ジャイアントキリング」の流儀』は何度も読みたくなる本だ。人気サッカー漫画『ジャイアントキリング』をサンプルに、ビジネスにもスポーツにも生かせる組織論を展開する書籍で、インターネットのショッピングモール「楽天市場」の出店社に向けた学習機関「楽天大学」の学長を務める仲山進也さんが筆を執った。

 仲山さんは現在、企業の経営者やマネージャーに向けてチーム作りのノウハウを伝える活動にも取り組む。勝てるチームに成長させていく「チームビルディングプログラム」はどのようにして生まれたのか。自らのキャリアを踏まえながら話してくれた。

インタビュー・文=菅野浩二
写真=兼子愼一郎

――1999年、仲山さんは大手企業のシャープ株式会社を辞めて、創立間もない楽天株式会社へ移籍しています。当時の楽天は社員20名ほどのスタートアップ企業でしたが、今では大企業の一つとなっています。そのバックグラウンドは仲山さんが手がけられている「チームビルディング」とどうつながっているのでしょう?

仲山進也 2001年に、ブランディングコンサルタントの阪本啓一さんが訳した『あなたが伸びれば、会社も伸びる!―起業経営者のための4段階成長術』というビジネス書を読んだのです。数多くの起業家にインタビューをして「会社の成長ステージ」を体系化した本で、「第1の創業ステージはこんな感じで、成長軌道に乗ってくるとこういう問題が起こってきます、その問題をうまくクリアできると次のステージに行けて、失敗するとこういう風にダメになります」というようなことが4つの成長段階ごとに書いてありました。その本を読んだ時に、「これって楽天に入社してからの日記みたい! ホントこの順番にこんなことがあった!」と感じたんです。
 ネットの世界は変化のスピードが速いので、たぶんこれまでの会社が30年くらいかけて経験してきた4つのステージを、楽天では2?3年で経験できてしまったわけです。日々起こる「成長痛」は、楽天特有のものではなく普遍性があることで、それを一通り経験できたことは自分の財産というか強みなのだと気づきました。

――三木谷浩史社長もその本で書かれているような動きをしていたということですか?

仲山進也 本には、「成長に応じて起業家がこういう風に役割を変えないと、次のステージには行けない」と書かれているのですが、確かに三木谷の役割はそういう風に変わってきたなと思います。

「5月と6月に開催されるサッカーキング・アカデミーでは、アクティビティを通してチーム作りの視点がかなり変わると思います」

――今、楽天大学で実施されている「チームビルディングプログラム」はどのようにして体系立てられたのでしょうか。

仲山進也 「楽天市場」の出店者さんは全国各地の中小企業が多いのですが、ネットショップが軌道に乗ってきたことで人数が増え、人や組織のことで悩まれる方が増えてきました。そのテーマで伝えたい内容はすでに自分の中にあったのですが、一つ大きな問題がありました。

──といいますと?

仲山進也 それまでの講座は、「買いたくなるページの考え方」のようなテーマだったので、ある商品を題材にして「この商品を売るページのラフ案を考える」といったワークをやりながら、大事な視点を体験的にインプットすることができていました。
 でも、組織の問題については、まだ体験していないことをどうすれば擬似体験できるかがわからなかったのです。座学で「そのうち、こういう問題が起こります」と説明しても、全然伝わらないんです。たとえば、出店者向け月刊誌があって、毎号、店舗さんのインタビューが掲載されているのですが、もはやお決まりのパターンのように「売上が急に伸びて月商500万円前後になり、発送業務がパンクする」という経験談が語られています。「お客さんに遅れを謝りながら、三日三晩寝ないで梱包して大変だった」のような。でも、それを読んでいるはずなのに、皆さん同じようにパンクするんです(苦笑)。

――他人事なんですね。

仲山進也 そう、実際に自分の身に起こるまでは他人事なんですよね。なので、どうやったら伝わるかがわからなくて頭を悩ませていた時に、「チームビルディングファシリテーター」の長尾彰氏と知り合いました。彼は「体を動かすゲームをしながらみんなで一つのことをやり遂げるような『アクティビティ』を通して、チームワークとは何かを体験的に学べるプログラム」をやっていました。まさに私が欲していたところだと思い、自分の問題意識を話すうちに「一緒に組んでやりましょう」ということになったんです。
 長尾氏とは「このメッセージを伝えるためにはどういうアクティビティをした後に話をするとわかりやすいか」など、100時間以上話し合ってプログラムを作っていきました。

――そのアクティビティは、サッカーキング・アカデミーで開催される5月23日(月)の単発セミナーや6月6日(月)からの3Days短期セミナーでも体験できますか?

仲山進也 はい、体験できます。チーム作りの視点がかなり変わると思います。特に、自分一人で責任を背負い込みすぎてピリピリし、むしろチームにネガティブな空気を醸し出してしまっているようなリーダー。そういう人にはものすごく喜ばれる傾向があります。

──「チームビルディングプログラム」に参加した会社の事例で、うまくいっているところはありますか?

仲山進也 「よなよなエール」というクラフトビールはご存知ですか? 最近、スーパーやコンビニでも見かけるようになってきているのですが、その急成長がビジネス誌などでも注目されているビールメーカー「ヤッホーブルーイング」さんがつくっているビールです。社長の井手直行さんが、数年前に「チームビルディングプログラム」に参加して、3ヵ月のプログラムをまるまるコピーして自社内で開催しました。それを6期までやり続けた結果、「お通夜」のようだった社内の雰囲気が劇的に変わって、急成長の原動力になっています。


ジャイキリ本の著者が明かす③「意見の対立を超えるプロセスを経ないと、チームにはなれない」

参考記事:作業がはかどる「朝の30分」こそムダ話に使え

ジャイキリ本の著者が明かす①「当時の楽天はまだ20人しかいなくて、日々新しいことが起こる状態でした」
ジャイキリ本の著者が明かす③「意見の対立を超えるプロセスを経ないと、チームにはなれない」
ジャイキリ本の著者が明かす④「言われたことしかやらずに自分で仕事をつくっていかない人は「やる気がない」のだと誤解していました」

楽天株式会社 楽天大学 学長
仲山考材株式会社 代表取締役
仲山 進也(なかやま しんや)

北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。
シャープ株式会社を経て、1999年に社員約20名の楽天株式会社へ移籍。初代ECコンサルタントであり、楽天市場の最古参スタッフ。
2000年に「楽天大学」を設立、楽天市場出店者42,000社の成長パートナーとして活動中。
2004年、Jリーグ「ヴィッセル神戸」の経営に参画。
2007年に楽天で唯一のフェロー風正社員となり、2008年には仲山考材株式会社を設立、Eコマースの実践コミュニティ「次世代ECアイデアジャングル」を主宰している。
著書『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』
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By サッカーキング編集部

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