室谷由紀女流二段がフットサルの魅力を語った
普段はスーツや和服を身に包み、盤面と向き合うプロ棋士たち。繊細にして緻密な駆け引きの世界に生きる彼らだが、最近では将棋界でフットサルが大ブームとなっている。
今回「サッカーキング・ショップ」と「日本将棋連盟フットサル部」がコラボレーションし、サッカージャンキー製のTシャツとスマートフォンケースを限定販売することが決定。この商品はファンから「ゆきりん」や「むろやん」の愛称で親しまれている室谷由紀女流二段が開発に携わった、将棋連盟公認グッズだ。
そんな室谷女流が「究極の癒し」と表現するフットサルの魅力や将棋との共通点、さらに、自身が監修したグッズについて語ってくれた。
インタビュー・文=いしかわごう
将棋は“受け”でもフットサルは“攻め”
――室谷女流の中で、フットサルの時間というのは、どういう位置づけなんですか?
「私にとっては、“究極の癒しの時間”です。大事な時間ですし、フットサルがなかったらつらいですね。私の中では、将棋を勝つためにはフットサルをしないといけないんです」
――そんなに優先順位が高いとは思いませんでした!
「フットサルに参加したいから、他のお仕事を断ることもあるぐらいです(笑)。しっかりと休むことで将棋も勝てると考えていますし、休むのも仕事だと思っていますね」
――フットサル部の面々のプレーを見ていると、棋風とプレースタイルって似てきませんか。
「やっぱり性格が出てるんでしょうね。深浦先生(深浦康市九段)はだいたい自陣を守ってますよね、フットサルでも。私は受け将棋と言われるけど、フットサルではだいたい攻めますが(笑)」
――室谷女流はストライカーですもんね。
「点を取りたい! ゴール前で美味しいところを持っていきたいんです!」
――詰みの局面を読むところは似ているんでしょうか。
「サッカーやフットサルは瞬時に判断しないといけない難しさがありますよね。将棋は考える余裕がありますから。フットサルは一瞬だから、難しいなと思います。思っていても、身体が反応してくれない(笑)」
――もともとは関西将棋連盟でフットサルをされていたんですよね。フットサル歴はどのぐらいなんですか。
「女流3級になってからなので、6年ぐらいですね。関西でもやってましたが、東京ほど活動は活発じゃないんですよ。やりたいときにやるという感じでしたね。真剣にやり始めたのは東京に来てからです。フットサル部以外にも、テニス部とバドミントン部もやってましたよ」
――運動自体が好きなんですね。昔はダンスもやっていたと聞きました。
「ジャズダンスです。将棋よりも早くからやっていました。ダンスの発表会に出るために、将棋をやめていた時期もあったぐらいです。昔から活発だったので、将棋をやってると聞いた周りが、『えっ?将棋ってあのジッとしてるやるでしょ?』と驚かれました(笑)」
サッカーや様々なことをきっかけに将棋に興味を持ってほしい
――今回、開発に協力してもらったサッカーと将棋のグッズ。Tシャツを着てみた感想はどうでしょうか?
「可愛いですね。初めて出来上がりを見ましたが、イメージしていたよりも、すごく良いです。もう少し、サイズは小さいのかなと思ってましたけど、着やすいです」
――男女両方にオススメできるTシャツですね。
「将棋ファンだけではなく、サッカーファンの方にも着て欲しいと思ってます。『Go!Straight』と書いてあるので、香車の動きだけでも覚えてもらえれば(笑)」
――他のアイテムでは、スマートフォンケースのデザインは、みなさんで何度も会議を重ねてましたね。どのへんにこだわりましたか?
「みんな気になりだすと、凝りたがるタイプなんです。将棋は年齢の幅が広いと思うので、いろんな年代の人が使いやすいような色であったり、パッっとみてサッカーと将棋とわかるようにしました。ここが盤上になっているんですよね。線の太さとかも、紙で折ってみたりして、みんなでディスカッションしました。Suicaも入るし。私はスマホケースは手帳型じゃないとダメなんです」
――それはなぜ?
「すぐ落として、割ってしまうので(笑)。ここ(画面)も全部シールを貼っているんですよ。このケースは、香車と王様、両方とも可愛いですよね」
――将棋に興味を持ってもらうきっかけのアイテムにもなれば良いですね。
「いきなり本将棋から入るのって難しいかもしれないですからね。私も最初に、『はい、将棋!』って渡されて嫌でした。最近では9マス将棋やどうぶつ将棋もありますし、3月のライオンなど漫画や本を読んで・・・というのも良いかもしれませんね。カロリーナ(カロリーナ・ステチェンスカ女流3級)は『NARUTO(ナルト)』を読んで興味を持ったそうですが、それは少数派ですよね(笑)」
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――本業の話題も聞かせてください。昨年はタイトル戦の挑戦者になるなど活躍した年だったと思います。充実していたのでは?
「そうですね。対局が多かったので、良い感じで予定が埋まってきました。本当に不思議です」
――自分が強くなっている実感ってあるものですか?
「強くなったかどうかはわからないですね。女流3級になって二段になって・・・・ただ今までは、タイトル挑戦までいかなかったですから。この1年は成績に出たので、強くなってきたのかな?・・とは思ってます。ここで頑張れるかどうかですね」
――室谷女流は将棋イベントにも引っ張りだこですよね。そのへんの兼ね合いも大変なのでは?
「対局優先で考えています。それが決まってから予定を入れてますが、普及の仕事も大事だと自分では思ってます。どっちかに絞れと言われたら難しいですね」
――昨年は、横浜F・マリノスとコラボした『サッカー×将棋イベント』で、乃木坂46の伊藤かりんさんと公開対局を行いましたね。どんな雰囲気だったんですか。
「面白かったですね。サッカーファンの方もいれば、ペンライトを持ってかりんさんを応援しているファンもいれば、いつも来てくれる将棋ファンの方もいて・・・・いつものイベントとは全然違いましたね。優しい方が多かったです。対局中は、かりんさんファンが気を使って私の名前を呼んでくれたり(笑)」
――そういうファンを集めて、サッカーと将棋のイベントをやってみても面白そうですね。
「そうですね。サッカーファンや伊藤かりんさんファンで、将棋に興味ある人を集めてフットサルや将棋で交流してみたり、特にアイドルの効果は大きいと思います」
――今後の野望を聞かせてください。
「プレイヤーとして上を目指していきたいです。それはみんなが持っていると思います。ただ普及もしっかりとやりたいので、両方で成功したいんです。わがままですけど、どっちかというのができない性格なので。それに、将棋の魅力を伝えるには、自分も結果を出さないと説得力がないという思いもあります。強い方は注目されますから。里見さん(里見香奈)は、強いことで注目されていると思いますし、その説得力を持ちたいと思っています」
――こうなりたいという理想の人はいますか?
「女流囲碁棋士の謝依旻(しぇい いみん)さんですね。彼女を見ていたら、ここまでしないといけないんだと思いますし、彼女に比べたら、自分はまだ甘いですね。自分はこの先、どうなるんだろう?と思うと、毎日しんどいです。お腹、痛くなります(笑)」
――最後に。将来的な夢はありますか。
「将棋道場を開くことは決めています。将棋の人口を増やしたいので、将棋道場を開きます!」