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社会人が学ぶべきスポーツビジネス…早稲田大学の専門プログラム「スポーツMBA Essence」とは

2017.05.16

早稲田大学は「スポーツMBA Essence」の受講者募集を開始。原田宗彦教授(写真)はプログラムリーダーを務める

「上場企業に就職したけど、『将来的にスポーツ業界で働きたい』という社会人は多いですね。そして、『会社がオリンピックのスポンサーになったけど、何をやっていいか分からない』というような企業の社員さんも意外と多い。そういう人たちを集め、スポーツビジネスへの理解を深めてもらう機会を提供したいと考えました」

 そう話すのは、早稲田大学・スポーツ科学学術院の原田宗彦教授だ。早稲田大学は今年、スポーツビジネス学習のためのノンディグリープログラム「スポーツMBA Essence(Sport Master of Business Administration Essence)」の受講者の募集を開始した。

スポーツビジネスが持つ特異性
人々の「感情」が大きな訴求効果を生み出す

 クラブ経営、メディア、イベント運営、マネジメント、代理店…。スポーツを主としたビジネスは数多い。しかし、それらを一言で“スポーツビジネス”という言葉で表現すると、漠然としたイメージしか伝わらないだろう。実際、大企業は大型スポーツイベントの主催者となることは多いが、肝心の担当者が何をすれば良いか分からないケースが多いという。スポーツビジネスは一種の“特殊なビジネス”だからだ。

「授業でよく言うのは、『売り物が全然違う』ということ。スポーツビジネスでは、ものすごく喜怒哀楽の激しい商品を売っている。例えば、1000万円の高級自動車を買っても感激のあまり涙を流すことはありません。でもスポーツでは、涙は流すし、時には怒りで物を壊すこともある。その感情の振幅の大きさが(商品やサービスの)大きな訴求効果を生むと思います。大きな大会で冠スポンサーを引き受けてくれる企業は、みんなで応援しようという連帯感が生まれます。そういった感情をマーケティングにうまく活用するのが、スポーツビジネスです」

 いわゆる“普通のビジネス”が「物の売買」であるならば、“スポーツビジネス”は「感情を扱う商売」だ。スポーツの現場では連日、様々なエピソードが生まれる。そこには、大声で喜ぶ人や涙を流して悲しむ人がいて、たくさんの感情が交錯する。プレーする選手は「勝ちたい」、「もっと活躍したい」と実績を求め、ファンやサポーターは「もっと知りたい」、「また観に行きたい」、「グッズが欲しい」と、日常的にスポーツを欲する。それらの感情一つひとつに対して訴求していくことが“スポーツビジネス”の根幹を成している。

 原田教授がプログラムリーダーを務めるスポーツMBA Essenceは、社会人を対象としたプログラム。未来のスポーツビジネス界で活躍する人材を育成するため、様々な講義が展開される。大学の講義とは違い、学位を必要としないノンディグリープログラムで、講義が行われるのは週1回。それでも、スポーツにおける文化・ビジネス・観光などを題材とした多様なカリキュラムを設け、スポーツビジネスに関する最新トレンドを集中的に学ぶことができる。講師陣には、スポーツビジネスを専門とする早稲田大学スポーツ科学学術院の教授陣に加え、ビジネスの専門家である早稲田大学ビジネススクール教授らが名を連ねる。

待ち構えるビッグイベントとビジネスチャンス
スポーツMBA Essenceから“即戦力”を送り出す

 社会人として経験を積んだ後、スポーツ業界へ転職することも選択肢の1つです、と原田教授は語る。

「社会人としての素養を身に付けてからスポーツ業界に入っていくのも良いと思います。例えば一般企業に就職しても、スポーツビジネスに関する研修やOJTを行っている企業はありません。それなのに、例えばある企業が東京五輪のスポンサーになったことで、『オリパラを使ったマーケティングを考えろ』とか、『巨額の協賛金に見合う売り上げを確保しろ』ということになる。これらの課題への対応は、大学でスポーツビジネスを専門的に勉強するか、スポーツビジネスの現場を経験していないとかなり厳しい。そういった人たちが学ぶ場がスポーツMBA Essenceです。実際、徐々にスポーツ業界へ再就職するセカンドキャリアも増えてきています」

 経験を積んだ社会人がスポーツMBA Essenceで学ぶことで、スポーツビジネスの本質や特異性を内部から理解する。そうすることで、現場における適応力を身につけ、“即戦力”として実務を行うことが可能となる。こうしたセカンドキャリアの新たなモデルケースが形成されれば、スポーツ界全体の発展が期待できる。加えて、プログラムでは受講者同士でディスカッションを行い、「弱い紐帯の強み」(The strength of week ties)、すなわち日常では出会わない様々なキャリアを持つ人たちとつくる「弱くとも新しいつながり」から、イノベーションを生む仕組みづくりにも着手する方針だ。

「プログラムを受講した人には、たくさんのネットワークを作ってほしいです。スポーツMBA Essenceには色々な方が参画しているので、スポーツの今後に目を向けて語り合えるような専門家集団になってほしいですね。ノンディグリーなので受験のハードルは低く、卒業の要件も厳しくは定めていません。ただ、学ぶことのクオリティーは充分に高めていきたい。そして、将来的にはスポーツの発展に貢献するため、スポーツビジネスを教える環境を高いレベルで整備したいと考えています」

 第一期生の募集は6月30日まで。願書はホームページからダウンロード可能となっている(http://www.waseda.jp/prj-sportmba/)。2018年にはFIFAワールドカップロシア大会が。さらに翌年には、ラグビーワールドカップ2019、2020年には東京オリンピックなど、国内外でビッグイベントを控えている。つまり、それだけ多くのビジネスチャンスが訪れるということだ。スポーツビジネスの世界にトライしたい人は、ぜひスポーツMBA Essenceの受講をお勧めしたい。

スポーツMBA Essense 第一期生徒募集

By サッカーキング編集部

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