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2019シーズンの浦和に見る、チーム運営とクラブ経営の評価の難しさ

2019.12.25

ACL決勝第2戦で浦和のファン・サポーターが見せた圧巻のビジュアルサポート [写真]=近藤篤

 2019シーズンが終了し、さまざまなデータが出そろってきた中で、Jリーグが12月10日の理事会で報告した入場者数に関する報道が目を引いた。

 理事会での報告とは、J1リーグ(18クラブ)の1試合平均入場者数が、リーグ開幕27年目で初めて2万人の大台を超え、2万751人に達したということ。一方で、入場者数の説明の中で示された、浦和レッズのJ1リーグホームゲーム入場者数が2018シーズンの60万3,534人(1試合平均3万5,502人)から、58万1,135人(同3万4,184人)へと減少したことも話題になった。

 浦和は14シーズン連続で最多入場者数をキープしたが、2位クラブ(※2017年シーズンから3年連続でFC東京)との差も前年より縮まっている。それに、今シーズンはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で決勝に進んだものの、J1リーグでは残留争いをし、14位と低迷した。

 こういったチーム状況を踏まえると、クラブの経営面への影響はないのだろうか。現状を知るべく、浦和を取材した。

 まず、J1リーグ入場者数が減少した背景を尋ねた。すると、チームが不振だったこととともに、平日開催が過去10年の「多くて3試合」から、その倍以上である「7試合」あったことが大きいという回答があった。

 なぜこうなったのか。浦和は今シーズンのJ1リーグの試合日程を組むときに、リーグ優勝を目指すと同時に、ACL史上初となる3度目の優勝も本気で掴み取ろうとしていた。そのため、ACLにチームがより良いコンディションで臨むにために、J1リーグとの試合間隔をなるべく空けるという方策を採ったのだ。

 これによって、通常なら土曜日に組まれる試合を金曜日に前倒ししたのが7試合あった。過去10年の浦和の平日開催は前述の通り最大で3。いかに今シーズンがACLシフトだったかが分かる。

 さらに、この平日開催増が入場者減の要因だという裏付けも示された。過去10年のデータを見ると、浦和のホームゲームの入場者数は、土日祝日開催と平日開催で1試合平均1万~1.5万人の差があり、今シーズンも過去と同じ規模の差(1万3,371人差)があった。ACLに出ると平日開催が増えるため、社会人も子どもも行きにくくなり、J1リーグの入場者数が減る。それはある意味、仕方ない。ちなみに、2019シーズンより入場者数の多かった2018シーズンは、ACLに出ていないのでリーグ戦の平日開催は3試合だった。

 ところで、そもそも浦和の入場料収入は他競技と比較するとどんなレベルなのだろうか。

 ひとつの指標としてプロ野球を見ると、2019年のセ・パ公式戦入場者数は1試合平均3万929人。この数字を超えるJクラブは浦和とFC東京の2クラブのみだった。ただし、4万2,935人の阪神タイガースと4万2,643人の読売ジャイアンツが牽引するセ・リーグは、3万4,655人で、浦和とほぼ同じだ。プロ野球のスタジアムと比べてキャパシティが大きい埼玉スタジアム(6万3,700人)をホームとしている以上、浦和にはもっと伸ばしてもらいたいところではある。

 とはいえ、もうひとつの指標として2016年の開幕以来、着実に入場者数を伸ばしている男子バスケットボールのBリーグの数字を見ると、試合会場の規模の関係でサッカーとはかなりの差があることが分かる。

 例えば、2018-19シーズンに最多入場料収入を得た宇都宮ブレックスの年間入場料収入が約4億3,000万円であったのに対し、今シーズンのACL決勝第2戦(11月24日)の浦和対アルヒラル戦の入場料収入は、約2億7,000万円だったという。わずか1試合でこの金額とは、シンプルにすごい。埼玉スタジアムをホームとして使っている浦和には、やはり非常に高いポテンシャルがある。

 入場者数減がフォーカスされるとあれば、気になるのはクラブの収入面だが、この点に関しては浦和は盤石のようだ。クラブによると、2019年度の営業収入は、過去最多の80億円超となる見込み。これは、ACLで決勝に進出したことによりホームゲーム数が増え、それに伴って入場料収入が増えたことや、ACL賞金を得たことによるものだという。

 また、ハートフルクラブなどの継続的な地域貢献が理解されていることなどから、スポンサー収入も増加傾向にあるそうだ。

 2019シーズンは、ACLで3度目の決勝進出を果たした反面、J1で残留争いをし、非常に印象の良くないシーズンだった。しかも、3年連続でシーズン途中に監督が交代するというネガティブな事態や、守備的な戦術で攻撃力が発揮されず、1993年以来となる低い得点(1試合平均1.0点)に終わったこともファン・サポーターの足を重くさせる要因となったのは否めない。

 しかしながら、チームを運営する浦和レッドダイヤモンズという会社は堅実な業績を持続している。さらに、観戦初心者の来場を促す「ウェルカムシート」やファミリー向けの料金設定をした「ファミリーシート」を新設するなどの施策により、土日祝日開催試合の平均入場者数が増加しているのは、来シーズン以降に向けてポジティブな要素だ。

 ここ3シーズンの土日祝日開催試合の平均入場者数は、2017シーズンが3万5,538人、2018シーズンが3万7,160人で、2019シーズンは3万9,690人と増えているのだ。

 J1リーグ最終戦のガンバ大阪戦は、リーグ戦5試合連続で勝利がない状況で迎えたうえに天気が悪かったにもかかわらず、4万7,188人が来場した。浦和の試合は、スタンドから発せられる高揚感も魅力の一部。大勢が集まりそうな試合だからこそ行きたいというファン・サポーターもいると思う。

 浦和は2020年を変革元年と位置づけ、チームを統括する強化部門は2022年のリーグ優勝をゴールとする3カ年計画を発表した。こういった施策を打ち出す中で、企業としての力はやはり非常に重要だ。J1リーグ入場者数だけでは見えにくい、クラブの総合的なポテンシャルに今後とも注視していきたい。

文=矢内由美子

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