『JA全農杯全国小学生選抜サッカーIN東北』を制したベガルタ仙台 [写真]=板垣晴朗
3月6日と7日に、『JA全農杯全国小学生選抜サッカーIN東北』が開催された。福島県相馬市の相馬光陽サッカー場を会場に、東北6県それぞれの4種委員会から推薦された2チームずつ、計12チーム214選手(大会開催時3〜5年生)が参加。この大会は、5月3日から5日まで神奈川県横浜市で開催される『JA全農チビリンピック2021 JA全農杯全国小学生選抜サッカー決勝大会』の東北ブロック予選でもある。各チームは東北地方ナンバー1の称号とともに、地域代表として2チームが参加できる全国の舞台を目指した。
試合形式は8対8で、12分×3ピリオド。第1ピリオドと第2ピリオドで選手は総入れ替えし、第3ピリオドでの交代は自由。チーム全員が主役といえる試合のなかで、選手たちは元気にボールを追いかけた。
6日の予選リーグでは、3チームずつの4グループに分かれ、総当たりで対戦。各グループの上位2チームが7日の決勝トーナメントに進出し、決勝戦に進出した2チームが5月の決勝大会に出場できる。また、グループ3位のチーム同士でもフレンドリーマッチが行われ、各チームは多くの相手と対戦できた。
決勝トーナメントの準々決勝と準決勝を勝ち抜き、14時30分からの決勝戦に駒を進めたのはAグループ1位のACジュニオールと、Cグループ1位のベガルタ仙台ジュニア。ともに、宮城県代表のチームだ。
ACジュニオールはAグループを1勝1分、無失点のトップで勝ち上がり、決勝トーナメントでも勿来・フォーウィンズ(福島)に3-0、青森FC U-12(青森)に1-0と、やはり無失点。ゴール前での守備が特に堅く、ガッツあふれるプレーが魅力。試合前の円陣での一声も、元気いっぱいだ。
ベガルタ仙台はCグループで2勝。こちらは全チーム最多の総得点6で勝ち上がった。準々決勝ではバンディッツいわき(福島)と0-0からのPK戦を制し、準決勝ではFCサン・アルタス大船渡(岩手)の堅守をセットプレーなどから打開して4-0で勝利。決勝戦へ進んだ。
決勝戦は第1ピリオドから一進一退の攻防が展開される。立ち上がりにACジュニオールがループシュートからチャンスを狙ったが、ベガルタ仙台GK加藤志優が好セーブ。逆に11分、ベガルタ仙台側の決定機ではGK佐藤大翔がストップと、両GKが素晴らしいプレーを見せ、0-0で終わった。
第2ピリオドではベガルタ仙台が攻めこむ時間が続くが、ACジュニオールも鉄壁の守備からカウンターで反撃。ベガルタ仙台の尾立翔琉が再三シュートチャンスをつかんだが、ACジュニオールGK菅原凜央もナイスセーブ。引き締まった展開で、0-0のまま試合が進む。しかしピリオドの終了寸前、ベガルタ仙台の吉田伊武希からのCKを、尾立がピタリと合わせた。見事決めた尾立は「伊武希選手からのボールがすごく安定していて、あとは自分が決めるだけだと思ってきちんと当てることを意識していました。入って嬉しかった」と笑顔。ベガルタ仙台が先制し、1-0とした。
第3ピリオドになると、さらに両チームは積極的にゴールに迫る。ACジュニオールは藤澤亮太のパワフルな守備で相手の攻撃を跳ね返し、伊藤稜のドリブル突破などでチャンスを作る。ベガルタ仙台は庄司蔵人の細かいステップを生かした攻撃や、鑓水桜雅の素早いディフェンスなどが局面で光った。それぞれ持ち味を出す中、次のゴールを取ったのはベガルタ仙台。ハイボールから連続攻撃をしかけて、尾立がこの日2点目。最終スコア2-0でタイムアップして、ベガルタ仙台が勝利。東北の頂点に立った。
ベガルタ仙台の福田直人監督は、選手たちの成長に目を細める。昨年から続く新型コロナウイルス感染症を警戒するなかで、なかなか思うようにプレーできない時期も長く過ごしてきた。「あらためてサッカーをできる喜びからスタートしました」という福田監督は、日常で制限が多い時期にも選手たちとオンラインで話し合い「新しいコーチングのかたちを模索しましたし、選手たちも向き合ってくれました」と、工夫。オフラインでのトレーニングにもそれが反映された結果、「選手達は相手の特徴などを見て、このときはこうしよう、と考えられるようになり、試合の本質を押さえられるようになっていきました」と柔軟なチームに成長していった。福田監督は、試合ごとに布陣を変えて、そこからどう攻めるか、守るか、という選手たちの対応能力にも手応えを得た。
そしてこの大会中にも、選手たちは多くの試合をとおして成長を見せた。PK戦にもつれ込んだ準々決勝のバンディッツいわき戦の経験は特に大きかったそうで、決勝戦のときにはACジュニオールが素晴らしい守備を見せた中でも、慌てずに試合を進めることができたという。
全国大会では、「みんなで協力して一つひとつ勝って、(決勝戦会場の)日産スタジアムに行きたい」と尾立。チームキャプテンはまだ決めていないとのことだが、この大会では試合ごとにゲームキャプテンを代え、5年生全員が腕章を巻いた。準決勝でゲームキャプテンを務めた吉原希音は、「4年生がミスをしてもカバーしようと思ったし、チームの雰囲気を盛り上げたりベンチからでもみんなを励ましたりしていました」と心がけ、自身もその試合でハットトリック。「全国でも自分が点を取ってチームが楽になれるように頑張ります」と吉原は言葉に力を込める。こうして全員でチームを引っ張る意識で、全国に挑む。
決勝で激闘を演じた2チームだけでなく、全参加チームが楽しく、ボールを追いかけた2日間。まだ日常に制限が残る状況だが、その中でもサッカーができる喜びを、選手たちはのびのびとしたプレーで表していた。
文=板垣晴朗
全国9地区で開催される『JA全農杯全国小学生選抜サッカー』の模様は@zennoh_sportsにてTwitter速報を実施。