FOLLOW US

韓浩康が描く共生社会の在り方「サッカーによって、在日と日本社会の架け橋に」

2023.02.28

「非日常の体験を通じて、未来への”チョウセン”を紡ぐ」という思いのもと、2021年『MIRERO FESTIVAL』が立ち上がりました。昨年12月上旬に、2回目を終えたこのプロジェクトの発起人は、プロサッカー選手の韓浩康選手(現在:韓国K1リーグ・水星三星ブルーウィングス所属)です。

なぜ、学生を対象とした、この活動を始めたのか。現役プロサッカー選手としての価値と可能性、そして彼が目指す共生社会とは。

2023シーズンキャンプ前に、『MIRERO FESTIVAL』立ち上げの経緯や背景にある思いについて、語って頂きました。(取材日2023.1.4)

「非日常の体験」こそ、私が夢を抱いたキッカケ

私はとても幸せなことに、幼い頃からの夢を叶えて、現在もプロサッカー選手として競技活動を続けています。そして、夢を抱いた特別なキッカケは、朝鮮民主主義人民共和国が44年ぶりに本戦出場を果たした2010年「南アフリカワールドカップ」でした。

右端:安英学(アンヨハ)氏は、昨年のプロジェクト立ち上げを後押ししてくれた偉大な先輩のひとりであり、南アフリカワールドカップの舞台に立った幼い頃から尊敬してやまない存在

『ああ、自分もこの同じ憧れの舞台に立ちたいな』

自分自身と同じルーツを持つ選手たちが、強豪国を相手に奮闘する姿を観た時に、こう強く思いました。

当時、高校生だった自分自身が感じた「非日常の体験」を学生たちへ届けることは難しいかもしれませんが、現役プロサッカー選手の今だからこそ、そして日本にルーツを持ち世代の垣根を越えられる存在だからこそ、このプロジェクトの立ち上げに踏み切りました。

言いづらいからこそ、誰かが讃えなければならない

皆さんは、高等学校の授業料無償化の対象から朝鮮高校が除外されたことをご存知でしょうか?

また、朝鮮高校を卒業した学生たちは、各種学校扱いとなるため、最終学歴が中学校卒業になることをもしかしたらご存知ない方もいるのではないでしょうか?

私自身も、プロサッカー選手の先に続くキャリアを見据えて、朝鮮大学校の在学中に通信制高校へ通い、高校卒業の資格を取得しました。しかし、朝鮮大学校と通信制高校の学費は本人の負担となるため、経済的な理由により、朝鮮大学進学と同時にプロサッカー選手になることを諦める同世代も少なくありませんでした。

もちろん、*経済的な理由でプロサッカー選手を諦めなければならない学生たちは、”朝鮮高校の学生たちのみではない”ことも私は知っています。

*1%FCでは、プロサッカー選手や、サッカーにまつわる活動をしているコミュニティが、何かの1%を寄付し、「サッカーをしたくても諦めている子どもたち」の環境を変える活動を実施しており、韓浩康選手も参画しております。

将来的には、朝鮮高校生のみならず、自らの夢に向かい”チョウセン”するキッカケを日本の学生、更には世界各国のすべての学生に届け、奨学金制度を整備し、高校卒業後におけるそれぞれのキャリア形成における選択肢を拡げていける団体に「MIRERO FESTIVAL」を皆さんと育てていきたい。

しかし、歴史的背景や政治的な兼ね合いもあり、私たちが実施しているこの取り組みを「ぜひ応援してください」とは、なかなか言いづらいというのも事実です。

だからこそ、人々の心を動かすスポーツというコンテンツを通じて、共生社会の実現に向けた取り組みを応援してもらえる仕組みを一歩ずつ整えていかなければなりません。

想いを伝播する

共生社会の実現に向けた取り組みを応援してもらえる仕組みにしていくため、今回の「MIRERO FESTIVAL」では、新たに2つのことに取り組みました。

1. クラウドファンディングによる一般の方々からご支援いただける環境整備
2. プロサッカー選手として共に闘ってきた戦友や同胞たちがプロジェクトへ参画

結論、過去在籍したブラウブリッツ秋田や横浜FCのファンの皆さま、オフシーズンにも関わらず二つ返事で学生とのトレーニングマッチへの参加を決めてくれた戦友や同胞たちのファンの皆さま方の日本各地からの多大なる支援により、スポーツというコンテンツの力で、微力ながら在日と日本社会の架け橋となるキッカケを生み出すことができたと実感しています。

クラウドファンディングのリターンとして、韓浩康の想いに賛同したプロサッカー選手と朝鮮高校選抜チームのトレーニング
マッチの観戦チケットを用意。

2年前の初開催の際は、朝鮮大学時代の監督である恩師・金載東(キムジェドン)氏や在日朝鮮人蹴球協会・朝鮮大学校OB会などの全面的なバックアップがありました。2回目となる今回の開催に当たっては、在日のみならず日系企業の経営者の方々からも多大なるご支援を頂きました。     

学生たちには、サッカーという競技を通して感化させることだけでなく、このプロジェクトを継続的に開催し続け、非日常の体験を通じて未来へ”チョウセン”を紡ぐために、多くの方々の支えがあって成り立っていることも感じて欲しいですね。

たとえ、サッカー選手になるという夢を抱かなくても、自分だけの夢を抱くキッカケを届けられるように、自分自身は夢を追い続ける姿を見せることが大事だと思っています。4年後に開催されるワールドカップは、憧れの安英学氏がワールドカップに出場した年齢と同じ歳で迎えます。4年後の舞台に、このプロジェクトを通して共に母国を背負って戦う選手が出て来ることを信じています。

“共生社会の新しいカタチ”を作る

サッカーによって、共生社会を目指すために、「MIRERO FESTIVAL」は立ち上がったと言っても過言ではないと思います。

共生社会の新しいカタチを作るため、変えるため、この活動が素敵だと思い支援いただける方々を増やしていくために自分たちは何をしないといけないのか。まだまだやらなければならないことは多く、これまで挑戦してきたことでもまだやり切れていないこともあります。

共生社会の新しいカタチを作ることは簡単ではないけど、競技活動における夢を追うことと同時に諦めず時間をかけてやっていくしかないですね。

*꿈은 이어진다(夢は続く)。

*꿈은 이어진다(クムン イオジンダ)の이어진다には、繋がっていく又は紡がれていくという意味も含まれる。

By サッカーキング編集部

サッカー総合情報サイト

世界のサッカー情報を配信する国内最高峰のサッカー総合メディア。日本代表をはじめ、Jリーグ、プレミアリーグ、海外日本人選手、高校サッカーなどの国内外の最新ニュース、コラム、選手インタビュー、試合結果速報、ゲーム、ショッピングといったサッカーにまつわるあらゆる情報を提供しています。「X」「Instagram」「YouTube」「TikTok」など、各種SNSサービスも充実したコンテンツを発信中。

SHARE

SOCCERKING VIDEO