ACLグループステージ最終節で神戸と対戦する水原三星 [写真]=Getty Images
中断前から決勝トーナメント進出を悲観する声も
2019シーズンのFAカップ王者として、2年ぶりにAFCチャンピオンズリーグに参戦した水原三星ブルーウィングス。ACLの前身であるアジアクラブ選手権で2連覇(2000-01シーズン、2001-02シーズン)を成し遂げたKリーグ屈指の名門クラブだが、中断前に行われたグループステージ2試合では不安定さを露呈した。
ヴィッセル神戸をホームに迎えてのグループステージ初戦では、アンドレス・イニエスタを徹底マークして封じ込めに成功するも、後半アディショナルタイムに古橋 亨梧の決勝点を許し、0-1で敗れた。
続くアウェイでのジョホール戦では、格下とされる相手に終始劣勢。PKとセットプレーの処理ミスで2失点を喫し2敗目を喫した。ここから新型コロナウイルス感染拡大の影響で大会が中断することになるが、韓国内では早くも水原三星の決勝トーナメント進出を悲観する声が上がっていた。
チーム再建で若手中心の構成に
■試合日程(日本時間)
2月19日(水) 対 ヴィッセル神戸 0-1
3月3日(火) 対 ジョホール 1-2
11月22日(日)対 広州恒大 0-0
12月1日(火) 対 広州恒大 1-1
12月4日(金) 22:00 対 ヴィッセル神戸
ジョホールの撤退が決まったことで、1-2で敗れたジョホールとの試合が無効扱いになったことがせめてもの救いか。ただ、再開初戦で広州恒大相手にスコアレスドローで終え、続く2戦目では1-1と引き分ける善戦を披露したとはいえ、依然としてグループステージ突破が危ぶまれていることは確かだ。
水原三星は現在、チームの再建途中にある。今シーズンのKリーグでは序盤から不振にあえぎ、一時は最下位に転落するなど2部降格もささやかれた。それでも、2度の指揮官交代で復調に成功し、最終的には12チーム中8位でリーグ戦を終えた。
水原三星を率いるパク・ゴナ監督は、“世代交代”をテーマに掲げる。リーグ戦でも、それまで出場機会の少なかった若手選手にチャンスを多く与え、来シーズンに向けたチーム作りを進めてきた。
今回のACL再開にあたり、キャプテンを務める37歳のベテランMFヨム・ギフンをはじめ、2019シーズンのKリーグ得点王に輝いたオーストラリア代表FWアダム・タガートなど、従来の主力選手の多くが不参加となった。その代わり、招集メンバー24人全員が国内出身選手で、うち12人が25歳以下と、若手中心の構成となっている。
12月4日に控えるヴィッセル神戸戦では、決定力不足の解消が水原三星の勝利のカギを握る。再開初戦は広州恒大の枠内シュートをゼロに抑えた一方、16本ものシュートを放ちながら一度もゴールネットを揺らせなかった。得点力に優れるストライカーが不在とはいえ、ゴールを決められなければ決勝トーナメント進出の可能性は薄い。
【KEY PLAYER】DF 12 キム・テファン
世代交代中のチームで存在感を放ち、ヘアバンドを巻いて長髪をなびかせる姿が特徴的な攻撃型サイドアタッカー。今シーズン序盤は全く出場機会を与えられていなかったが、監督交代によってプレータイムを得ると、すぐさま台頭。主に右サイドのウイングバックやサイドバックでプレーし、13試合出場1ゴール2アシストを記録した。
左右両足でボールを扱える選手で、ACLデビューとなった再開初戦の広州恒大戦では、カットインから左足で強烈なミドルシュートを数回放つなど、積極的にゴールを狙う姿勢も見せた。
自身のロールモデルをウェールズ代表FWギャレス・ベイルと明かす20歳の新鋭は、水原三星を牽引する新たな原動力ともいえる存在だ。
【MANAGER】パク・ゴナ
2019シーズンからチームを率いたイ・イムセン監督が成績不振で解任され、チュ・スンジン監督代行が臨時で指揮を執ったのち、今年9月に就任。以降はリーグ戦8試合で4勝2分け2敗の勝ち点14を稼ぎ、一時最下位まで沈んだチームを8位でフィニッシュさせた。
現役時代は主に水原三星でプレーし、前述のアジアクラブ選手権2連覇も経験。かつての栄光を知るクラブOBとして、「栄光の再現には時間が必要。今回のACLは、若い選手をチェックするいい機会になる」と現実的路線で再建を図る。
文=姜 亨起(ピッチコミュニケーションズ)