GS突破したBGパトゥム・ユナイテッド(上)とGS敗退が決まったチェンライ・ユナイテッド(下) [写真]=Getty Images
★明暗が分かれたタイ勢
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージは、タイ勢にとって明暗の分かれる結果となった。手倉森誠監督が率いるBGパトゥム・ユナイテッドはグループGを首位で突破し、昨年に続いて2大会連続の決勝トーナメント進出。一方で3大会連続出場のチェンライ・ユナイテッドは、1勝も挙げることができずに初の決勝トーナメント進出を果たすことはできなかった。
20―21シーズンのタイリーグ王者として2大会連続の出場となったBGパトゥム・ユナイテッドは、昨年に続いてグループステージ全試合をホームのパトゥムターニースタジアムで戦えるという大きなアドバンテージがあった。開幕節ではメルボルン・シティに先制を許したもののティーラシン・デーンダーのゴールで追いついてドロー発進。第2節で全南ドラゴンズを 2―0と下して波に乗ると、その後もユナイテッド・シティに5―0、3―1で連勝するなど3勝3分けの無敗でグループ首位通過を決めた。
地の利を生かして結果を出したBGパトゥム・ユナイテッドとは対照的に、チェンライ・ユナイテッドは苦しい戦いとなった。同グループに入っていた上海海港の出場辞退によって初のグループステージ突破の期待も高まったが、グループ内でのライバルと目された傑志に連敗を喫するなど1分け3敗でグループJ最下位。初戦では0―5と大敗したヴィッセル神戸から2戦目に勝ち点1を奪う意地は見せたものの、自国開催とライバルの出場辞退というチャンスを結果につなげることはできなかった。
タイには昨年から本戦ストレートイン2枠+プレーオフ2枠という韓国と同等の出場枠が与えられている。チェンライ・ユナイテッドは3大会連続のグループステージ敗退に終わったものの、BGパトゥム・ユナイテッドは地の利があったとはいえ韓国勢とオーストラリア勢を押さえての首位通過。その戦いぶりは、アジアにおけるタイ勢のプレゼンスが着実に高まっていることを感じさせるものだった。
★クラブ史上初のベスト8も期待されるBGパトゥム・ユナイテッド
BGパトゥム・ユナイテッドの成功の一因は、手倉森監督の就任以来、ACLに向けて着実に準備を進めてきたことにある。
21―22シーズンのBGパトゥム・ユナイテッドは開幕から波に乗れない状況が続き、2度の監督交代。1月27日に手倉森監督が就任した時点で、リーグタイトルの行方はすでにライバルのブリーラム・ユナイテッドに傾いていた。監督就任時から「ACLの準備を早めに進めてほしい」とクラブの会長や社長らから伝えられていたという手倉森監督は、国内リーグを戦いながらもACLを見据えてチームを構築。「プレーの質も、組織的な戦い方も備わったなかでACLを迎えられた」と手ごたえを得てグループステージに臨んでいた。
国内リーグでさまざまな選手の組み合わせを試してきた手倉森監督は、中2日で6試合を戦うグループステージでもうまくローテションを用いることに成功。第3節のユナイテッド・シティ戦では本来はボランチのカノクポン・プッサパーコムをサイドハーフとして起用すると、同選手が貴重な先制ゴールを挙げる活躍を見せた。この起用に対して手倉森監督は「アタッカーが少し手薄になっていたので、実はリーグ戦のときからトレーニングでサイドアタッカーをやらせていた」と、準備万端であったことをうかがわせた。
U-23日本代表を率いてリオデジャネイロ五輪アジア予選でタイと対戦した経験のある手倉森監督は、当時からタイの可能性と課題を感じていたという。その時に感じた課題の修正をBGパトゥム・ユナイテッドで実践し、現在のところ国内リーグ、ACLと計14戦して無敗と好調をキープしている。2年連続の決勝トーナメント進出を決めたACLでは、ラウンド16で傑志と対戦することが決定。クラブ史上初、そしてタイ勢としても2013年のブリーラム・ユナイテッド以来となるベスト8への期待も高まっている。
文=本田辰成