天皇杯優勝に貢献した水沼 [写真]=Getty Images
その表情は晴れやかだった。クラブ初のタイトルとなるルヴァンカップを獲得したあの日、「どんどん欲が出てくる。こういう経験をまたしたい」と熱く語っていた水沼宏太は、その“欲”を自らのゴールで満たした。
1-1のまま、延長戦に入ってすぐの出来事だった。「あまり覚えていないんですけど」と前起きした水沼が、「準決勝と一緒で『来るかな』と思って走っていたら来た、みたいな感じ」と振り返った決勝点のシーン。同点弾を決めた山村和也が大きく蹴り出したサイドチェンジのボールを、豪快に頭で合わせた。
「急に感覚が研ぎ澄まされたのかな(笑)」と記者団の笑いを誘ったが、「あきらめずに走り切るとか、来るかなという予測は疲れているから働くこともある。だからそういう意味では準決勝でも、決勝でも、それが出てきたのかな」と分析した。
2017シーズンのセレッソ大阪に好不調の波がなかったわけではなかった。調子がいい時は問題ないが、うまくいかなくなった時には先制されるとズルズルと失点を重ねた。そんな弱点を踏まえた上で、「気を引き締めて、昔の自分たちに戻らないように、ということをチーム内で話していた」と水沼。結果的に、8分に先制点を許しながらも追加点を許さなかったことが、チームを天皇杯制覇に導いた。
「逆転勝ちできる力が付いたというのは、間違いなく成長した部分。今日も先制されたけど、『大丈夫だよ』と声を掛けていた。余裕というか、いい意味で落ち着きがあったので、問題ないと思っていた」
奇しくも決勝の相手は、自身がジュニアユース、ユース、そしてプロとして2008年から2年間在籍した、いわゆる“古巣”。「そこまで古巣という意識はなかった」と本人は口にしたが、「自分が育ったクラブなので、そこを倒して、自分が点を決めて成長した姿を見せられたのは良かったですけど、とにかくこのチームを勝たせたい、チームのために必死に戦うことだけを考えて戦った」と明かした。
それでも、元チームメートの先輩たちはやさしかった。表彰式に臨む階段ではすれ違い様に中町公祐に「よしよし」と愛のムチを頬にもらうと、飯倉大樹にはミックスゾーンでのメディア対応中に「良かったな〜」と声を掛けられた。
加入1年目での二冠達成に、本人も「うまくいき過ぎなのかな」とポロリ。それでも「自分がやれることをしっかりやれば結果が付いてくることを証明できたシーズンだったので、少なからず自分も貢献できたシーズンだったかな」と胸を張った。
By サッカーキング編集部
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