飯倉大樹[写真]=舩木渉
天皇杯3回戦が7月11日に行われ、横浜F・マリノスは水戸ホーリーホックを破って4回戦進出を果たした。
2回戦のFC岐阜戦に続き、下位カテゴリの相手に苦しめられた。横浜FMは15分までにあっさり2失点。序盤から大きなビハインドを背負って戦うことになった。結局、井上健太と植中朝日のゴールで追いついたものの、2-2のまま90分間では決着がつかず延長戦に突入する。
その後もお互いにチャンスを作りながらゴールは生まれないままPK戦までもつれると、水戸の1人目だった久保征一郎のPKをマリノスのGK飯倉大樹が右に跳んでストップする。そして、後攻の横浜FMは5人目のエドゥアルドまで全員がしっかりと決め、次のラウンドへの挑戦権を勝ち取った。
リーグ戦では4連敗中、天皇杯でも岐阜や水戸にあと一歩のところまで追い詰められるなど、横浜FMのチーム状態はよくない。殊勲のヒーローとなった飯倉も、自らのPKストップを誇るより「最悪な入りだよね、ここ2試合」と序盤の不甲斐なさを嘆いていた。
直近のリーグ戦でも開始4分で失点し、ガンバ大阪に0-4の大敗を喫していたが、前後半の立ち上がりに失点する試合が続いてしまっている。G大阪戦、水戸戦と2試合連続でゴールマウスを守った飯倉はチームに対して意識改革を促していた。
「俺自身も(2失点のうち)どちらかは絶対に止めたかったし、止めなきゃいけない。今はチームがどうのこうのじゃなくて、個人のところでどうにか止める、個人のところで勝っていかないと。戦術も大事なんだけど、根本的にまず1対1のところで、俺も含めてもっともっと勝つことを意識しないと。どうしてもマリノスって最近戦術がメインになって(語られて)いて、それで結果が出ていたんだけど、そうじゃない。戦術の前に、まず俺たち自身が1対1のところで当たり前のように負けないようにしないと」
いくらチームとして優れた戦術を持っていても、1つひとつの局面で個々が相手に上回れていたら、その戦術はうまく機能しない。まず1対1を制さなければ、11対11で勝つことは難しくなってしまう。
「1対1で負けないというのを最初に持っておいて、だけどちゃんとチームとしてカバーする。そういうところって本当に基本だけど、基本ができてないから失点している。誰がではなくて、全員で受け止めて、矢印を自分に向けて何ができたのかを考えなきゃダメだよね。自分だけ良けりゃいいという話じゃないから」
天皇杯は一発勝負のトーナメントなだけに、勝ち上がれたことが何より重要な成果だ。2点ビハインドから追いつけたことも、プラスに捉えれば4連敗しているリーグ戦での巻き返しに少しはつながるだろう。それでも水戸戦は大きな課題を突きつけられる一戦となったのは間違いない。
次のリーグ戦は7月14日に予定されている鹿島アントラーズ戦となる。週2試合ペースの10連戦を締めくくるホームゲームで、不振を脱出するための一歩を踏み出せるか。立ち上がりの甘さや球際での勝負弱さなど、噴出する課題を少しでも改善するきっかけをつかみたい。
取材・文=舩木渉