文・写真=小林健志
8月23日(日)、「第2回全日本ユース(U-18)フットサル大会」は最終日を迎え、ゼビオアリーナ仙台では3位決定戦、決勝戦が行われた。
11時より行われた3位決定戦、エスパッソU-18(以下エスパッソ)vsPSTCロンドリーナU-18(以下ロンド)は、前半から互いに激しく攻めあう展開に。4分、ロンドは中央突破したFリーグ湘南ベルマーレ特別指定選手の植松晃都がゴールを決めて先制。植松は12分にも左サイドから切れこんでシュートし、追加点を挙げた。さらにロンドは13分、右サイドから切れこんだ吉森慎斗がゴールを決めて3点をリード。ここまでロンドの守備にてこずっていたエスパッソも、前半終了間際の20分に浅井拓とのパス交換からゴール前に顔を出した中学3年生イワハシナオキがゴールを決めて1点を返し、2-1で前半を終えた。
後半もロンドが攻勢を強め、植松が21分ロングシュートを決め、24分にも中央突破から得点を決めた。エスパッソは浅井にGKユニフォームを着せてパワープレーを行ったが、26分、ロンドの吉森にロングシュートを無人のゴールに決められた。28分には植松が左サイドからゴールを決め、6点差とするが、ここからエスパッソも反撃し、双方点の取りあいに。エスパッソは35分、宇田川幸輝のパスを受けたイワハシがゴール。35分、36分とロンド吉森が連続ゴールを決め、その直後エスパッソは、イワハシからパスを受けた市川宙がゴールを決めた。市川は39分にもゴール。40分にはロンドの植松がダブルハットトリックとなるゴールを決めて試合終了。派手な打ち合いは10-4でロンドが勝利し、3位ロンド、4位エスパッソとなった。
植松は「エスパッソの市川君が得点王だったので、追いつこうと頑張ったが、大会通算13ゴールで追いつかなくて悔しい」と大会通算17ゴールで得点王となった市川に追いつかなかったことを悔やんだ。それでも「3位になるのと4位になるのは全然違うので、3位になれて良かった。胸を張って神奈川に帰りたい」と3位決定戦を勝てたことを誇った。
13時30分より行われた決勝、釧路北陽高校(以下釧路北陽)vs岡山作陽高校(以下作陽)は、立ちあがりから激しい点の取り合いとなった。開始早々1分に釧路北陽は中尾謙太からパスを受けた松野史靖がゴールを決めて先制。直後に作陽は今川朋睦がゴールを決めて同点。さらにその直後の2分、釧路北陽キャプテン伊藤圭汰が得意の左サイドに流れてのシュートを決めて再び突き放すが、作陽は5分に眞中佑斗のシュートを敦賀大河がコースを変えてゴールし再度同点に追いつく。そして9分、CKから再び今川がゴールを決めて今度は作陽がリード。その後は作陽が相手陣内に押しこむ展開が続き、3-2と作陽リードのまま前半を終えた。
後半は互いにこう着状態が続き、迎えた終盤37分、釧路北陽は中尾が左サイドから出したパスを受けた大西一生がゴールを決めて3-3の同点に追いついた。残り時間が1分を切り、互いに4点目をめぐり攻めあう中、「残り時間が少ない中で相手に追いつかれた状況だったので、勝ちにいく姿勢を見せて自分が決めて勝ってやろうと思った」という作陽の眞中佑斗が左サイドからカットインしてゴールを決めた。そして程なく試合終了。4-3で作陽が劇的勝利を飾り、初優勝を決めた。
作陽は昨年、名古屋オーシャンズU-18(今大会ベスト8)に敗れたが、三好達也監督はその時から「見返そう」と思ったという。春の段階で3年生から希望者を募り、フットサルチームを結成。今大会に出場した選手は春からフットサルしか練習していない。サッカーの練習で採り入れられる動きは積極的にフットサルの練習にも採用し、フットサルの動きが得意でない選手たちにはドリブルで突破する動きを求めるなど工夫もしたという。三好監督は「Fリーグの公式サイトで試合映像を100試合は見た」と語るほど研究熱心。大会中もスカウティングは欠かさず、決勝の対戦相手の釧路北陽のサイドからカットインしてシュートを狙う動きや、長いボールをピヴォに入れる動きなどは全て研究済みだった。こうした研究の成果が初の栄冠を引き寄せた。
ヒーローとなった眞中はかつてベガルタ仙台の前身、ブランメル仙台でもプレーした眞中幹夫氏を父に持つ。父に続き、仙台の地で輝いた。「何度かチャンスがあったので、最後まで諦めずにチャンスを決めきろうと思った。仕掛けろと練習で言われ続けたことの積み重ね」と練習の成果であることを強調した。
今後この大会で活躍した選手が高校サッカー選手権に出場することもあるという。「高校サッカーの部活がフットサルに臨むモデルケースになりたい」と語る三好監督。サッカーの強豪チームが本気でフットサルに取り組み、タイトルを獲得したことは、高校サッカー界、フットサル界双方に大きな影響を与えることだろう。