15日のオーストラリア代表と対戦したフットサル日本代表 [写真]=河合拓
2月10日に開幕したAFCフットサル選手権に出場しているフットサル日本代表には、2つの目標がある。一つはワールドカップへの出場権を獲得すること。今大会は4年に一度開催されるフットサルW杯の予選を兼ねており、大会の上位5チームに今年9月にコロンビアで開催されるW杯の出場権が与えられるのだ。
そしてもう一つの目標は大会3連覇である。フットサル日本代表は、2012年にUAEで開催されたアジア選手権と2014年にベトナムで開催されたアジア選手権を連覇しており、史上初の3連覇を目指している。
日本は、カタール代表、マレーシア代表、オーストラリア代表と同じグループDに組み込まれていた。上位2チームが決勝ラウンド進出となるレギュレーションのため、前回王者の日本は当然、このグループを1位抜けすると見られていた。
しかし、11日に行われた初戦のカタール戦は不安を残す戦いとなった。試合前日の会見で、カタール代表のチアゴ・ソウザ監督は「我々は日本に負ける。大事なのはどのように負けるかだ」と言い、残り2試合に向けて希望を残す敗戦にしたいと語っていた。そして試合当日、ポルトガル人指揮官は引いて守る戦術を選択する。
これに対して日本は大いに苦しんだ。ボールを保持するものの、初戦からくる固さもあり、守備に徹したカタールを崩すことができない。それでも前半16分、右サイドを突破したFP逸見勝利ラファエル(ベンフィカ)からの折り返しを、FP渡邉知晃(大連元朝足球倶楽部)がヒールキックでゴールに流し込み、1点をリードする。この大会に臨む前に行われたコロンビア代表との親善試合でも、FP仁部屋和弘(バサジィ大分)からのアシストを受けて同じようにゴールを決めていた渡邉が、自分たちの武器としているアラの突破からゴールを決めた。
先制した日本だったが、その後も追加点を挙げられなかった。安定した守備で相手にゴールを許さなかったものの、ミゲル・ロドリゴ監督は試合後の会見で「守備は80パーセントくらいのポテンシャルを示せたが、攻撃に関しては30パーセントから40パーセントしか出せていなかった。改善が必要だ」と試合内容に不満を述べた。
それでも、スペイン人監督の不満は第2戦のマレーシア代表戦の前半20分間で解消されることとなる。この試合、日本はFP吉川智貴(マグナ・グルペア)の先制ゴールを皮切りに、ハーフタイムまでに10得点をたたき出したのだ。
先制点を挙げた吉川は、初戦よりも攻撃を加速させることが必要だと感じていたと話す。「ホテルでカタール戦を振り返ってみたときに、チーム全体のスピード感が足りなかったと思いました。自分が(スピードを)上げることで、周りもついてくるのかなと思い、いつもよりスピードの緩急を意識して試合に入りました」と振り返った。
素早く周囲のサポートに入り、シンプルにボールを動かす。これが、前線からプレッシングを仕掛けてきたマレーシアに対して非常に効果的だった。さらにこの試合では、どこからでも、誰でも点を取れるという日本の強みも示せた。後半こそ1ゴールに終わったが、11-1の大勝を収めた日本は、試合途中で負傷したFP星翔太(バルドラール浦安)とFP酒井ラファエル良男(名古屋オーシャンズ)を除く、FP11人中9人が得点を記録したのだ。エースの森岡薫(名古屋)は1ゴールに終わったものの、それ以外に4つの得点を演出し、「自分一人が点を取るよりも、みんなで点を取って勝った方がオレもうれしい」と快勝に頬を緩ませる。
結局、グループDでは、日本とオーストラリアが2連勝を飾り、グループステージ突破が決定。15日のグループステージ最終戦、日本はオーストラリアと引き分け以上でグループ首位が決まることになっていた。
首位通過を狙う日本にとっては、この試合を引き分け以上で終えること。さらに出場停止につながるカードを受けないこと、ケガをしないことがテーマだった。試合は開始から日本がチャンスを作る。前半8分にはCKの流れから森岡がシュート。これはDFに当たってこぼれたが、逸見がヒールキックでボールをゴールに押し込み、1点をリードする。
マレーシア戦同様に先制点からゴールラッシュの流れに乗りたかったが、12分には同点ゴールを許してしまう。ミゲル・ジャパンには最前線、ハーフウェーライン、自陣とプレッシングをスタートさせる3つのポイントがある。カタール戦、マレーシア戦では最前線からのプレスがはまり、相手を押し込んだ状態でボールを回収し、攻撃に転じる展開が多かった。これに対してオーストラリアは、最前線に大柄な選手を置き、後方から一気にロングボールを入れる策で、日本のプレスを回避した。この12分のゴールも、GKのスローイングから、ボールを受けたFPグレゴリー・ジョヴェナリ(デュラル・ウォーリアーズ)に強烈なシュートを決められたのだ。
「今日は相手が大きく、ピヴォ(最前線の選手。サッカーのセンターフォワードに相当)にボールを入れてきました。それが失点になった場面もあったので、そこをどうするか。そもそもボールを入れさせないように守るのか、入れさせたところで奪うようにするのか。そういうところを突き詰めないといけない」と、過去2度の優勝を経験しているFP小曽戸允哉(シュライカー大阪)は、反省点を挙げた。決勝ラウンドに勝ち上がったタイ、イラン、ウズベキスタンといった国々は、大柄なピヴォの選手を起用する戦い方をしてくるため、その攻撃をどう凌ぐかは、どこまで勝ち上がれるかのポイントになるだろう。
オーストラリア戦、同点に追いつかれた日本は、前半19分に森岡の強烈なシュートで勝ち越すと、後半にも仁部屋がループシュートを決めて3-1で勝利。グループDの首位通過を決めた。
最初の目標であるW杯出場権獲得まであと1勝に迫った。ベスト4入りを懸けた一戦ではベトナム代表と対戦する。16日時点でフットサルの世界ランキングでは、日本が9位、ベトナムは44位となっているが、ベトナムは15日に行われた世界ランク16位のタイ代表戦でも最後の1分まで1-1という好ゲームを披露した。最終的には1-3で敗れたが、成長著しいベトナムとの試合は、油断が命取りになりかねない。
ミゲル監督は選手たちに対して「これまでの戦績とか、順位はうちの方が優位かもしれない。でも、それはあくまで100パーセントのパフォーマンスを出したときの話。それでも苦しむゲームをするから、100パーセントの集中力を持って臨まないととんでもないゲームになる」と注意を促した。
自分たちのスタイルを貫き、常に修正点を探しながらグループステージを突破した日本は、最初の目標である4大会連続のW杯出場権獲得に挑む。
文=河合拓
By 河合拓