日本のフットサル界をけん引してきた“カリスマ”甲斐修侍の引退試合には多くの仲間が駆け付けた
日本のフットサル界をけん引してきた“カリスマ”、ペスカドーラ町田の甲斐修侍が2016-2017シーズン限りで引退。5月7日に、ホーム・町田市立総合体育館で引退試合「JOGO DESPEDIA」を行い、花道を飾った。
この日、甲斐がプレーする最後の姿を一目見ようと、会場には多くのファン、サポーター、町田市の石阪丈一市長、一般社団法人町田サッカー協会の関係者、サッカー、フットサルの関係者、そして共に業界を盛り上げてきた仲間たちが集まった。特に、引退試合のために結成された3つのチーム、「ペスカドーラ町田レジェンド」、「CASCAVEL(カスカヴェウ)レジェンド」、「KAI SHUJI FRIENDS」のメンバーは豪華そのものだった。
ブラジル代表として長年にわたってプレーし、2004年と2008年のFIFAフットサルワールドカップで最優秀選手に輝いたブラジルの“皇帝”ファルカンが友情出演。町田の応援ソングを歌う「ウカスカジー」からは、Mr.Childrenの桜井和寿は参加できなかったものの、GAKU-MCが参戦し、町田を象徴する曲を披露すると共に、ピッチでもプレーした。そして、甲斐の伝説の始まりとも言うべきチーム「AZUL(アズー)」や、「エスポルチ藤沢」、町田の前身「CASCAVEL」で一緒にプレーしてきた選手や、しのぎを削り合ってきた名選手たち。まるで“同窓会”のようなメンバーによる引退試合は、甲斐の最後にふさわしい華やかなものになった。
3チームが総当たりで3試合を行い、甲斐は、1試合ずつ別々のチームでプレー。かつての盟友とのコンビプレーや、甲斐の息子との親子共演、ファルカンとのレジェンドタッグなど、会場は大いに盛り上がった。
そして甲斐がCASCAVELレジェンドでプレーした2試合目に、自身が左足でゴールを決めると、敵も味方も関係なく全員が彼の周りを取り囲んで胴上げし、フットサル界の功労者を労った。さらに、ハイライトは3試合目。KAI SHUJI FRIENDSでプレーした甲斐にもう1点を取らせようと、仲間たちが粋な計らいを見せた。
急遽、レフェリーと交代した元湘南ベルマーレのGK・阿久津貴志がファルカンのエリア内への突破で相手のファウルを取ってPKを宣告。キッカーはもちろん、甲斐修侍。しかし彼は、これをまさか枠外へと外してしまう。その場にいた全員が笑い転げる展開となったが、GKのファウルで蹴り直しとなると、再びのシュートをきっちりと決めて、甲斐は再び仲間たちに胴上げされ、この超豪華な引退試合が幕を閉じた。
その後、ピッチではセレモニーが行われ、共に切磋琢磨してきた藤井健太や、CASCAVELの栄光の時代を知る市原誉昭や相根澄、前田喜史、そしてファルカンから花束が贈られ、甲斐は感極まった。そして彼は一人、ピッチの中央に立ち、最後の言葉を口にした。
「今年でFリーグが11年目を迎えるまでに一緒に歩んで戦ってきた仲間やスタッフ、協会関係者の方々、行政、地元、地域など本当に多くのご支援、ご協力があったことで今日を迎えられたと思っています」
「今日は本当にたくさんのFリーグのチームの仲間が来てくれました。僕たちはこれから何ができるかと言えば、このフットサル界をさらに盛り上げること。各ホームゲームが満員になり、フットサルが本当に楽しい競技だとたくさんの人に分かってもらえるように、全員で力を合わせてやっていきたいと思います」
「これから第二のフットサル人生となります。ペスカドーラ町田も、さらにプロ化を目指して、全力で戦っていきたいと思いますので、今後とも応援のほどよろしくお願いします」
いまだかつてない規模で執り行われた引退試合は、甲斐の人生そのものを映しているようだった。彼が築いてきた日本フットサルは、これから先も進化を続けていく。カリスマは引退してもなお、カリスマだった。
文・写真=本田好伸
By 本田好伸