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【コラム】11年間動員が落ち続けたフットサル・Fリーグ。過去最低の今、すべきこと

2018.03.07

写真・文=佐藤功

▼だからどうした、今さら

なんだか騒がしい。うっとしいぐらい騒がしい。Fリーグが危機だ、危機だと騒ぎやがる。ああした方がいい、こうした方がいい。いろんな意見が散見する。

だからどうした。

Fリーグ公式サイトには、通算記録という項目がある。すべての勝敗がデータ化され、選手ごとの通算記録がある。そこに、入場者数がある。今季のすべての試合を合わせた動員数は197,828人。ついに20万を割っていた。

だからどうした、見ればわかる。

この減少傾向は、14-15シーズンから。3年連続減だ。そんなことも知っている。こういう数字を見ればついついグラフ化してみたくなる。そんな理系の性が騒いだ。

ここ3年は減少傾向が目立つが、それでも開幕時よりも多い。急激に落ちている5番目は、東日本大震災があった年である。こればっかりは仕方がないだろう。あの年は日本そのものの危機である。
ここ数年は苦しいが、開幕以来なんとか増えている……というわけではない。この数値は条件が違う。初年度は8クラブ、現在は12クラブである。試合数が増えれば、動員数が増えるのは自然である。理系は『条件』という言葉を重んじる。その年に行われた全試合数で割れば、1試合あたりの平均値を求めることができる。簡単だが、条件を合わせよう。

綺麗な右肩下がりである。危機は今になって起きたわけではない。じわりじわりと首を絞め、今になって悲鳴を上げたに過ぎない。
だからどうした、今さら……である。

▼11年間積み重ねてきた負債

アリーナの人々は、ピーク時の半分にまで落ち込んでいた。そのことをちゃんと理解しているのだろうか。

どうにかしなければいけない、そう言うのは簡単だ。だが、11年間落ち続けてきた。11年積み重ねてきた負債が、重くのしかかっている。管理をする者は、とっくの昔に気づいている。そして、抗ってきた。だが、結果はこうである。

1年間で投資した金額が億ならば、11年も経てば2ケタの億を投資していることになる。そして減り続けた動員はすなわち、返ってくるものがなかったことを意味する。もう、かなり追い込まれている。危機はいつか絶望に変わる。その絶望が進めば、悟りにたどり着く。一番恐れていることは、得るものがなかった今、悟っていないか、である。

何をやっても無駄だった、と悟っていたら……。

そしてグラフの6番目、震災の翌年にある急激な伸び、ここにも恐ろしさがある。この年はキング・カズ、三浦知良がやってきた年である。この幻影に取りつかれていないか。一発逆転の神頼みをしていないか、他力をあてにしていないか、という恐怖がある。

11年積み重ねてきた負債は、11年かけて返すほどの覚悟が必要である。そして、いつか親はいなくなる、膨大な負債を子供たちに残して。この返済は、これからの若者たちに任されている。残酷な未来が待っている。

▼世間を納得させるだけの価値

もう危機だ、危機だと騒いでいる段階ではない。こうすればいい、ああすればいいと理屈を並べている段階でもない。雑な哲学めいた言葉を並べ、俺は知ってたぜと悟ってはいけない。

Jと連携をもっと……Jに何のメリットがある?

自治体の協力をもっと……介護に投資した方が世のためじゃないか?

スポンサー営業をもっと……動員数=宣伝効果に対し何を売り込む?

様々なアイデアを実現するためには、世間を納得させるだけの価値がいる。

その価値とは、勝つことだけじゃない、いいプレーをすることだけじゃない。勝てば客が入るは幻想である。17-18シーズン、年間で最も体育館にファンを呼び込んだのは、10位・エスポラーダ北海道。最も勝った1位・名古屋オーシャンズではない。勝つことだけが、愛されることではない。まずは『エスポラーダ北海道』という言葉を知っているから人は集まっている。

いい試合をすれば客は入る。それも幻想である。プレーオフは盛り上がった。だが、その動員は約1,600人。狭い箱に人が詰まっていただけだ。イメージだけで満足してはいけない、錯覚で満足をしてはいけない。実数は印象とは大きく異なる。

今、興味を持っている人たちを満足させることは大切である。だが、体育館の外にいる人は、1,600人が熱狂する密室を通り過ぎている。勝とうが負けようが関係がない、いいプレーをしようが知ろうともしない。知らない人は、後に動員数という数字のみを見て判断をしている。興味を持っていない数は、1億を超えるほとんどの日本の人々。盛り上がったということを知っているのは、興味があるごくわずかな人である。

何のために勝つのか、何のためにプレーをするのか。ワールドカップで優勝する、プレーヤー人口を増やす。そこに何の価値があるのか。その価値を数で現すと人数。そして人が持っているものは、金である。金を払らって観る。これはビジネスである。ビジネスは、金を生み出す行為。そのための手段を、最終目的と見誤ってはいけない。

▼世間に自らの存在を知らしめる

ならどうすればいい、実は簡単である。今のFリーグはすべてにおいて充実しているとは言い難い。ということは逆に考えればいい。何もできていないなら、何をやっても当たりである。できることから地道にやるしかない。金がないなら知恵を働かせるしかない。一発逆転は望めない。今、奇跡が起きるような価値は持ち合わせていない。今は理想ではない、現実を呼び込む力をつける段階にいる。

世間に自らの存在を知らしめる、まずはそこからである。

選択権は相手にある。知らなければ興味があるのかジャッジすらしてもらえない。人が楽しむ、時間を費やす、金を使う。そんなコンテンツはこの世の中に溢れている。常に天秤にかけられている。知らなければ、天秤にも乗らない。自分には価値があると思っていても意味がない。評価は他人がするものだ。知らないものは、いくら安くてもいくら高品質でも、誰にも気づかれずに朽ち果てていく。

いいものも、悪いものもすべてをさらけ出せばいい。ネガティブな意見もいい、騒いでくれるだけでもありがたい。黙っていては、誰もわかってもらえない。世界に今、自分たちの固有名詞が出ている今がチャンスだ。SNSある今は、組織に頼らなくても個人で動くことができる。その個人は、選手、サポーター、そして自分も含まれている。何も考えず数をこなすだけでも、世の中のタイムラインに存在感が出る。

駅を下りれば、もうここがどこかわかる景色。季節ごとにグッズや、飲食が変わる。スタッフひとりひとりが、その世界の住人として機能している。そして、世界から人を呼び込んでいる。ミッキーマウスだけに頼ってはいない。東京ディズニーリゾートは、すべてを進化し続けている。国内有数の動員を誇る彼らですら貪欲である。その貪欲さを見習うべきだ。

世間を動かすだけの価値。そこにたどり着かなければ、様々なアイデアは絵空事になる。まずはできることから、すべてが物足りない今すべての行為が正解である。知ってもらうだけで変わる、今はまだ地盤作りである。

▼もっと厳しい時代がやって来る

協会が、連盟が、リーグが、クラブが……確かにその通りだ。先頭に立って引っ張っていく存在には大きな責任がある。だが、彼らは投資を続けてきた。そしてもう11年、体力は限界に近づいている。

今年は、サッカーのワールドカップがある。その期間は、6月14日から7月15日まで、1か月も続く。例年だと、ちょうどFが開幕した時期にあたる。その1か月間は、1億の視線がロシアを見ている。

2年後、フットサルのワールドカップがある。だが、東京オリンピックもある。最近はピョンチャンオリンピックが頭の中心にあった。それが2年後は地元である。もう、体すべてがオリンピックになってしまう、しかも何年も語り継がれるものである。

ここから先、さらに厳しい時代がやってくる。もう迫ってきている、誰にも気づかれない孤独死が。そこを生き抜かなければいけない。

そう思いながら向かった先は恵比寿、『DAZNワールドフリースタイルマスターズ2018』だった。彼らは貪欲にパッケージで世界に進出していた。自分の力で変えることができる。そのことをフリースタイラーが魅せていた。

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