FOLLOW US

127分にわたる死闘は残り4秒で決着 名古屋が町田を下し首位に返り咲く/F1リーグ第10節

2023.08.07

同点弾を上げた名古屋の甲斐稜人(右) [写真]=SHOKO

 7月28日から30日の3日間にわたり、Fリーグ2023-2024 ディビジョン1の第10節の5試合が行われた。

 勝点22で名古屋オーシャンズと並び、得失点差で上回る2位のY.S.C.C.横浜は、金曜ナイターで立川アスレティックFCと対戦。3-1で第1ピリオドを折り返し、一時は3点をリードされるも1点差に追いつく粘りを見せる。田村佳翔のハットトリックの活躍もあり最後まで立川ゴールを脅かしたが、4-5で敗戦し、連勝は6でストップした。

 30日に行われた首位のペスカドーラ町田と3位の名古屋オーシャンズの“天王山”は、今節最も注目を集めた。YS横浜が敗れたため、名古屋はこの試合で勝利すれば首位に返り咲く重要な一戦。F1リーグ今季最多の2077人が詰めかけた会場は大きな盛り上がりを見せる。名古屋のキックオフで幕を開けた一戦は、開始わずか6秒で吉川智貴のアシストからダルランがゴール。出鼻をくじかれた町田だったが、その後は集中した守備を見せながら同点の機会を窺う。第1ピリオド中盤には左サイドから野村啓介がシュート。これをGK篠田龍馬がはじき名古屋がカウンターを仕掛けるが、自陣で取り返した山中翔斗が左サイドを駆け上がる髙橋裕大にパスを出す。髙橋からのリターンを受けた山中が、逆サイドの伊藤圭汰にパスを送ると、伊藤が利き足とは逆の左足で放ったダイレクトシュートがゴールネットを揺らし、町田が試合を振り出しに戻した。

 さらなる追加点を狙い積極的に攻撃を仕掛ける町田だったが、10分には荒川勇気がラフプレーの判定で警告を受け、ファウルが5つたまってしまう。しかし、警告からわずか13秒、GKジオヴァンニのロングスローを受けた荒川が水谷颯真のマークを振り切り反転シュート。逆転に成功した。14分には町田が6つ目のファウルを犯し、名古屋が第2PKを獲得する。しかし、キッカーのアンドレシートがこれを左に外し、第1ピリオドは2-1と町田リードで折り返した。

 第2ピリオドでも激しい攻防がつづく中、1点のリードを守る町田だったが、早い段階でファウルがかさみ、28分には5ファウルとなる。30分には、名古屋GK篠田がキャッチからロングスローを送り、これを右奥に走り込んだ甲斐稜人が胸で落とし強烈なボレーで同点弾。実父の甲斐修侍氏が監督を務める古巣の町田から貴重な1点を奪った。追いつかれた町田は、GKジオヴァンニを上げたパワープレーで勝ち越しを狙う。しかし、スコアが動かないまま時間が経過し、名古屋のファウルも5つとなった。

 引き分けでも首位をキープできる町田に対し、首位奪還に勝利が必要な名古屋は残り3分を切りダルランをGKに置きパワープレーを開始。粘り強い守備を見せた町田だったが、残り13秒、自陣から攻撃を組み立てた名古屋は、吉川のショートパスをダルランが縦に送ると右サイドのアンドレシートがシュートパス。ファーに詰めた鬼塚祥慶が左胸に当てゴールに押し込み、残り4秒で逆転に成功した。野村をGKに置いたパワープレーでラストチャンスに懸けた町田だったが、ゴールを奪うことができず3-2で試合終了。猛暑での汗によるピッチ整備やファウルにより試合が止まり127分のプレイングタイムを記録した激闘は、名古屋に軍配が上がり勝点25で首位に返り咲いた。

 名古屋を率いるフエンテス監督は試合後の会見で「素晴らしいシーズンを過ごしている首位の町田のホームゲームは、すごく難しい試合になった。しかし、自分たちもしっかり戦えた。一番いい形で試合に入ることができ、6秒でゴールを決め、開始早々から自分たちがやるべきフットサルをできた。それでも思うようなスコアではなかったし、相手は少ないチャンスで決めてきた。第2ピリオドは第1ピリオドとはまったく違う試合になり、焦らずに構築することができた。残り少ない時間で追いつくことができ、パワープレーで逆転することができた」と試合を振り返った。

 首位を定位置とする名古屋にとって、上位を追う経験はあまり経験のないことだが「名古屋の歴史上、慣れないことではあったが、毎シーズンどおり勝点は取れていたので焦りはなかった。自分たちの調子が悪いのではなく、他の2チームが素晴らしい戦いをしていたから3位という立場になったと考えている。相手のチーム状況はコントロールできないので、直接対決という、勝たなければいけない試合で勝てて良かった。リーグ戦は長いので、首位であり続けることは難しく、この試合はより自然な気持ちで臨めるように心がけていた。去年とは違ったシーズンになるので不安もあるが、高いパフォーマンスでプレーができているので、ここからまた成長していきたい」と展望を語った。

 この試合がFリーグ通算300試合出場の記念試合となった篠田主将は、甲斐の同点弾をアシストした。そのシーンを振り返り「町田が前からプレスに来ることは分かっていた。名古屋にはいいピヴォもいるので、当てられるところは全部当てるつもりだった。(甲斐)稜人は考えるよりも感覚でプレーをするタイプで、あそこに走るのも好きだと分かっていたのでスローを出した。ただ、決めてくれないと意味がないので、稜人を褒めてあげてほしい」と後輩の好プレーを称えた。300試合出場については、あまり意識をしていなかったと言い「僕のデビューは2009年で、300試合に到達するまでにかなり時間がかかった。これまで苦い経験もしてきて、今ここにいられるのはすごく大きなことだが、チームのために何ができるか常に考えて行動し、それが結果として自分の成長にもつながっていると思う。ベテランの域に入っているが、プレーだけではなく姿勢でもいい影響を与えられるように意識している」と謙虚に語った。

 チームを勝利に導く決勝点を挙げた鬼塚は、チームの通訳も務める。自身の得点を「試合中に諦めたことはなく、最後まで勝つチャンスがあると信じてプレーをしている。決勝点もセグンドにくると信じてあの場所にいたから決まったと思う。自分に当たってのゴールなので綺麗な形ではないが、首位奪還につながる大きな1点を決めることができ本当によかった」と振り返る。値千金の活躍を見せた鬼塚に対し、フエンテス監督は「身長はこれ以上伸びないので、選手として成長してほしい」と笑いを誘いながら「どんどん良くなってきているので、このまま継続をしてもらえたらうれしい。大事な場面でプレーすることも多く、その責任感も今後の彼の糧になると思う。通訳としても働き、難しいこともあると思うが、どんなシチュエーションでも選手たちを鼓舞し、きちんと役目を全うしてくれている。今日は10点満点中の10点」と称賛。すると鬼塚は「うれしい気持ちはあるが、まだまだ成長しないといけないし、出場時間を増やさないといけない。毎日の練習を無駄にしないように、これからも全力で取り組みたい」と意気込んだ。

 敗れた町田の甲斐監督は「名古屋と勝点の差はあったが、彼らが例年どおり強いのは分かっていたので、自分たちが上回っていることは一切考えないようにした。名古屋は一番いい状態でこの試合に臨むと思っていたが、入りからそのとおりの印象を受けた。ただ、我々も8連勝を重ね、強度もメンタリティもこれまでにないくらい安定感を持っていたので、いきなり失点をしても慌てることなく修正し、対応することができた。選手たちも名古屋に食らいつき、長い時間、負けない戦いをしてくれたと思う。結果的に負けはしたが、勝負事は常に勝ち負けがつく。やるべき準備をして挑んだ試合で、出せるものをしっかり出して、選手たちは十分戦ってくれた。最後のパワープレーのワンシーンは僕の指示で失点したので、それは完全に僕のミス。選手たちは与えられた時間で、与えられた対応をしてよくがんばってくれた」と試合を振り返った。

 さらに「本来こういうところで言うべきことではないが、言わない限り変わらないのであえて声を大にして言いたい」と前置きをし、レフェリーのジャッジに言及。「人間なので、マイボールかマイボールじゃないか、ファウルかファウルじゃないかという点でミスがあるのは仕方がない。ただ、ここ最近、勝敗や得点が動くようなところでのミスジャッジが我々の試合以外でも多すぎる。(ジャッジミスの)結果、引き分けたり、負けたりということが起きるのは大きな問題。僕ら自身もリーグを盛り上げるため、チームが勝つために努力している。これだけのお客さんが集まり、名古屋という素晴らしいクラブと戦える貴重なゲームで、レフェリーのジャッジで勝敗が決まることだけは二度と起きてほしくない。選手たちも本当に日々努力してこの日を迎えているので、こういうことが起きたということだけは、目を瞑るのではなくちゃんと発信して、改善に向けて審判団にもしっかり反省してほしい」と苦言を呈した。

 バルドラール浦安とフウガドールすみだの一戦は、変則的な日程で8月27日の開催が予定されている。

Fリーグ2023-2024 ディビジョン1第10節>
立川アスレティックFC 5-4 Y.S.C.C.横浜
湘南ベルマーレ 2-3 しながわシティ
シュライカー大阪 2-0 ボルクバレット北九州
バサジィ大分 0-0 エスポラーダ北海道
ペスカドーラ町田 2-3 名古屋オーシャンズ

By サッカーキング編集部

サッカー総合情報サイト

世界のサッカー情報を配信する国内最高峰のサッカー総合メディア。日本代表をはじめ、Jリーグ、プレミアリーグ、海外日本人選手、高校サッカーなどの国内外の最新ニュース、コラム、選手インタビュー、試合結果速報、ゲーム、ショッピングといったサッカーにまつわるあらゆる情報を提供しています。「X」「Instagram」「YouTube」「TikTok」など、各種SNSサービスも充実したコンテンツを発信中。

SHARE

SOCCERKING VIDEO