2得点でホーム初勝利に貢献した浦安の本石猛裕 [写真]=SHOKO
8月27日、変則日程で未開催となっていたFリーグディビジョン1第11節のエスポラーダ北海道対ペスカドーラ町田、第10節のバルドラール浦安対フウガドールすみだの2試合が行われた。
最下位の北海道は、暫定2位の町田をホームに迎えた。北海道のシュート数9本に対し、町田は17本と2倍近いシュートを打たれながらも、第1ピリオドは0-0のスコアレスドローで折り返す。第2ピリオドでは22分にキックインを得た北海道が、FP4人全員が絡んだ攻撃から鈴木裕太郎のシュートでゴールをこじ開けると、24分には町田のGK攻撃の隙を突いた室田祐希が30メートルを超えるロングシュートを決める。さらに室田、水上玄太と得点を重ねリードが広がると、4点ビハインドの町田は10分近くを残し野村啓介をGKに置きパワープレーを開始。しかし、ヴィニシウスが放ったシュートがディフェンスに当たり跳ね返ったところをすかさず室田が拾い、無人のゴールに流し込む。このゴールで室田はハットトリックを達成。古巣から貴重な追加点を奪った。35分にはシュートをキャッチした北海道のGK関口優志が自らロングシュートを決め、今季初得点をマーク。終了間際に野村に1点を許すが、上位の町田に6-1で快勝し、勝ち点3を獲得した。スポンサーマッチデーでもあったこの試合は3573人が来場し、F1リーグの今季最多入場者数を記録している。
勝ち点14で暫定8位の浦安は、勝ち点13で同10位のすみだをホームに迎えた。立ち上がりからペースを握りチャンスを作る浦安だったが、先制点はすみだに生まれる。5分、浦安がGKピレス・イゴールを上げての攻撃を仕掛けると、パスをカットした星龍太が無人のゴールにロングシュート。これがゴールネットを揺らした。7分にはセットプレーから北村弘樹が追加点。2点を追う浦安も本石猛裕や柴山圭吾がチャンスを作るが、今季Fリーグデビューを果たしたすみだのGK入江悠斗が落ち着いてゴールを守り、0-2で第1ピリオドを折り返した。しかし、第2ピリオドでは浦安が反撃の狼煙を上げる。開始わずか28秒、左サイドでパスを受けた本石が深い位置に切り込み、利き足とは逆の左足でニアハイを打ち抜く。さらに22分には加藤竜馬のキックインにファーの本石が頭で合わせ、入江がはじいたところを押し込んで2-2の同点に。勢いに乗る浦安は23分、宇野伊織が追加点を挙げ、わずか3分で逆転に成功した。第1ピリオドのようにチャンスを作れないすみだは36分、栗本博生がこの試合2度目の警告で退場処分を受ける。数的不利の2分間を守り切ると、2分強を残して中田秀人をGKにパワープレーを開始するが、得点には結びつかない。終了間際には浦安がパワープレー返しで2点を追加し、5-2で試合を終えた。浦安はこれが今季ホーム初勝利。順位も6位に浮上している。
逆転勝利を収めた浦安の小宮山友祐監督は「今季初めてホームで勝つことができ、安堵の気持ちでいっぱい。ここで勝つことがどれだけ大切で、どれだけ価値があることかをずっと選手たちに伝えてきたので、しっかり勝利し後半戦でいいスタートを切れたことは非常に大きいと思っている。改善しなくてはならないところも多々あるが、これまで0-2で折り返して後半も1点も取れずに終わるような試合を何度もしてきたので、後半立ち上がりからギアを入れて逆転できたことも大きい。選手たちもタフになってきたし、自分たちが目指しているところに届く可能性はまだあるので来週に向けていい準備をしてがんばっていきたい」と試合を振り返った。第2ピリオドの巻き返しに関しては「前半も枠内に14本のシュート打っていたが、(相手GKの)入江選手に止められてしまった。ただ、枠には飛んでいたので何かを大きく変えるかというとそうではなかった。ロッカールームでは『このままだと横浜戦、立川戦、町田戦の繰り返しになる。本当に勝ちたいのであれば何を変えるべきか。点を取るべき選手は誰なのか。もちろん全員だが、特にピヴォの選手、出場時間の長い選手が決めるという意識を強く持ってほしい』と喝を入れ、全員が何をするべきかを理解して臨んだ後半だったと思う」と評価した。
敗れたすみだの北隅智宙監督は「前半は自分が準備をし、思い描いた形で終えることができた。同じような時間がつづく中での相手の戦略的な部分を想定して後半に入ったが、立ち上がりの3失点がすべてだと思う。選手たちは20分間をパーフェクトに戦い、そのあとの20分間は『何かひとつきっかけがあればすべてが変わった』と思うような結果になった。なかなか受け入れることは難しいが、浦安の強みを消しきれず、あとひとつ早く決断をしていればと多く感じたゲームだった。自分も含め、ゲームのマネジメントなどをもう一回考えていかなくてはいけない。また、負けたので悪いところだけを見てしまうが、入江という素晴らしいGKが多くのピンチを防ぎ、攻撃に参加するなどいいプレーもあった。若い選手がプレッシャーをはねのけてピッチで堂々と戦う姿勢は、これからのすみだの新しい光になる。それを見たベテランがハードワークをし、中堅が飲み込まれずに一歩前に飛び出していくといういいサイクルが始まっているので、年齢(だけが重要)ではないが、彼がこれだけのパフォーマンスを示したのは大きなポイントになったと思う」と試合を振り返った。
この日、デビューから3戦目にして初のフル出場となったGKの入江は2005年、東京都生まれの18歳。北隅監督は、前節初めてスタメン起用をした入江が第1ピリオドの20分間でほぼエラーなくプレーしたことを評価し、今回フルでの起用を決めたという。また「GKは40分を通して戦って初めてGKである」という持論があり、「若い選手が失点したからといって重要な局面で交代してしまうと、責任が薄くなってしまう。1試合を通して出すことでいろいろな経験ができたのではないか」と起用のポイントを語った。ディビジョン1の舞台で「経験を積む」という言葉が的確ではないことは理解しながらも、若手に経験する機会を与え成長を促すことは自分にしかできない仕事だと考えているという。この「種まき」が肥しとなり先々に大きな花を咲かせると思ってピッチに立たせているが、その成長は北隅監督の想像を上回るそうだ。この日、出場のなかったGK岸将太のベンチワークについても「試合全体を見ながら若い選手を支え、いきいきとプレーできるように振舞ってくれている」と評価し、目指すクラブの形に進んでいる手ごたえを感じさせた。
その入江は、小学校低学年でサッカーを始めた当初はフィールドの選手だった。あるとき、チームメートの体調不良からGKを任せられ、最初は「やらされているだけ」だったGKというポジションの魅力に徐々に気づき、自ら好んでプレーをするようになったという。バーモントカップ(全日本U-12フットサル選手権)にサッカーチームで出場してフットサルに触れた程度の経験しかなかったが、友人の親からの勧めでセレクションを受け現在の所属チームであるフウガドールすみだの下部組織に入団。今年3月にはトップ昇格を果たし、着実にキャリアを積んでいる。
試合前に清家大葵GKコーチからフルでの起用を伝えられたという入江は「正直ビックリしたが、チャンスが巡ってきたのでやってやろうと思っていた。最初のプレーが一番大切だと考え、立ち上がりを意識した。前半はいい入り方ができ、終わり方もよかったが、後半の立ち上がりで悪い流れになってしまった。自分から流れを断ち切るプレーをしないといけないと思うし、悔いが残る試合になった」と悔しさをにじませた。自身の強みは「足元で落ち着いてつなぐこと。セービングももちろんだが攻撃参加のほうが得意」。今季序盤の連敗していた時期を振り返り、「連敗を避けるためにも、今日の前半のような試合を続けていけば結果が出るはず。次節からも一戦、一戦、目の前の試合を大事に戦っていきたい」と展望を語った。
By サッカーキング編集部
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