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F1・F2入替戦で北海道と仙台が対戦 両監督がF1への思いを語る

2024.02.13

F1・F2入替戦を戦う北海道と仙台 [写真]=SHOKO, voscuore sendai

 2月17日、18日の2日間にわたり、駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場で、Fリーグ2023-2024ディビジョン1・2入替戦が行われる。来季を占う重要な試合を戦うのは、ディビジョン1最下位のエスポラーダ北海道と、ディビジョン2優勝のヴォスクオーレ仙台。2日で2戦を行い、F1への残留・昇格を争う。

■どんなチームを作りたかったか、初心に立ち返っている
 就任初年度で入替戦に回り、残留を目指す北海道の嵯峨祐太監督。現在は入替戦に向け2つの取り組みを行っている。1つは、就任当初に選手たちに伝えた目指すべきチームの姿の再認識。フットボールの本質である「ゴールに向かい点を取りにいくこと」や「ボールを奪い休みなく守備を行うこと」に重点を置いている。2つ目は仙台の分析。相手のいいところ、チャンスにつながるところへの対策を行っている。原点に立ち返った結果、感じている手ごたえは「ベテランだけでなく若手も声を出し、やろうという雰囲気を出してくれている」。チームの士気も上向いている。

■苦しい経験も財産や学びに変え、2戦を終えて喜べるように
 嵯峨監督は2008-2009シーズンから7年間、エスポラーダ北海道でプレー。Fリーグ開幕前年にフットサル地域チャンピオンズリーグで優勝した経験もあり「北海道からFリーグをとりたい」という強い気持ちを持っていた。下部組織のコーチなどを経て、今季監督に就任。教員と監督というふたつの顔を持ち、自宅からチームの本拠地である札幌まで2時間を超える道のりを“通勤”している。就任初年度の成績は4勝3分15敗で最下位と振るわず、今季限りでの退任も発表されているが、苦戦したのは距離や時間ではなく、選手時代にはピッチで戦うことで示せていた姿勢を監督として言葉で伝えることだったという。

 しかし、入替戦に回ったあとも「難しい、大変だと言っていてもどうにもならない」とチームが上向くことに目を向けた。「本当はこんな経験はないほうがいいのかもしれない」と前置きをしながらも「苦しい経験もチームの財産。長い目で見てプラスになればいいし、何年先になるか分からないが優勝への学びにもなる。そういう時間を過ごせていることにはやりがいを感じている」

 現役時代を過ごしたチームの残留に向けて、並々ならぬ思いがあるのではないかと問うと「自分は勢いの人間ではない。根本に何があるかを考えたら、毎日の積み重ねが成果につながり、それが勢いとなっていく。だから、ベースを大事にしたい」と冷静さを見せる。「シーズン中の勝った試合を振り返ると、40分間やるべきことをやり続けていた。そういった試合をために残りの時間を大切に過ごしたい」と静かに闘志を燃やす。

 ファンやサポーター、地元の応援については「本当に、本当に、1年間感謝しかない」と話し「できることを最大限やって、2戦が終わったときに一緒に喜べるようにしたい」と意気込んだ。

今季限りでの引退を表明している北海道の室田(中央) [写真]=SHOKO

■決定力不足の解決には若手の活躍が不可欠
 北海道が課題としてきた決定力不足を払拭し、チームを残留に導くためには若手の活躍が欠かせない。チームの中心を担う選手の顔ぶれは長年変わらず、水上玄太や鈴木裕太郎、堀米将太、今シーズン限りでの引退を表明している室田祐希といったベテラン勢だ。

 1月の最終節でも攻守にわたる活躍を見せていた室田に試合後に「サポートがありフィニッシュに注力できていれば違った結果が出るのではないかと感じたが、入替戦に向けてどうやってチームを引き上げていきたいか」と問うと「本当にシュート数が少ない。ゴール前には入っていても、誰もシュートを打たないのでシュートの意識を高めていきたい。入替戦は『いいフットサルをしよう』ではなく結果。先輩たちがずっと続けてきたチームを落とすわけにはいかない。仙台のほうが強い気持ちで臨んでくると思うが、飲まれないようにしたい」と答えた。

 技術や戦術よりメンタル面がポイントとなりそうだが「伝え続けていくしかない」と室田。「北海道は観客も多く、F1にいることが当たり前の中で加入してきた選手も多い。誰かがやってくれるではなく、僕も含めてもっと体を張って気持ちを出したプレーをしなくては。入替戦でも僕は冷静に、いつも通り楽しんでプレーをしつつ、要所、要所で気持ちを出して若手を引っ張っていきたい」と意気込みを語った。

■F1復帰への熱い思い。北海道との入替戦は運命を感じるストーリー
 2019年8月、シーズン途中で仙台の監督に就任した清水誠監督。しかし、およそ半年後にはチームの経営難によりクラブライセンス制度の審査でF2への降格が決まる。いつF1の舞台に戻れるか分からないなかで迎えたそのシーズンの最終節は、奇しくも今回の入替戦と同会場の駒沢屋内球技場で、北海道との対戦だった。残り10秒で森村孝志がゴールし、3-3の引き分けで終えた試合だったが、清水監督には苦い思いが残っている。「北海道は小野寺監督(当時)の勇退が決まっていて、僕らはネガティブな降格で。僕は、チームがリーグのお荷物みたいに思ってしまっていて苦しかった。素晴らしいゲームだったはずなのに、取材でもネガティブな言葉しか出てこなくて、今でも悔しさがある。でも、同じ場所で同じ相手と入替戦を戦い、僕らが勝てばF1に上がれる。本当に運命を感じるようなストーリーだと思う」と振り返る。

仙台をけん引する平澤凌主将 [写真]=voscuore sendai

■目標だったF2優勝。昨季との違いは「僕が変わったこと」
 2020-2021シーズンからの2年間、クラブは財政面の立て直しを図るためF2リーグ参戦を断念。2022-2023シーズンにF2への復帰が決まった。「完全に力負けをした」と感じたのはアウェイで戦ったしながわシティ戦のみだったにも関わらず、復帰初年度は9チーム中4位でフィニッシュ。F1復帰を熱望していた清水監督は、この時点で退任を考えていたという。しかし、誰かひとりでも諦めていたら「ヴォスクオーレ仙台」という名前さえ消滅するような苦難を乗り越えたからには投げ出すことはできない、と続投を決意。「今までだったら変えられなかったことまで、向き合い方を180度変えた」という。そして、今季は優勝を勝ち取った。

「僕は、掲げている理想や目指したいものに向けて『自分が連れて行く』と急いでいた。でも、選手たちにF2優勝やF1昇格に向かっていることをはっきり伝え『みんなで行きたい』と話した。今季は開幕から9連勝することができ、1点差のような厳しい試合を勝ち切りながら成長していった。第3節ではアグレミーナ浜松に3点差から追いつき、終了間際に逆転した。ああいった試合を勝ち切ってきたことで優勝にたどり着いたと思う」と振り返る。

■歴史的な試合、最後はうれしさで泣いて終わりたい
 先日、ペスカドーラ町田とトレーニングマッチを行ったという仙台。名古屋オーシャンズとの優勝争いを演じた町田に「ちゃんとやっつけられた」と話し、F1の基準を体感した。これまでもF1のクラブとトレーニングマッチを行っており「僕らはまだ、F1で優勝はできないと思うが、昇格できる力はある」と手ごたえを感じている。

 現役時代に所属していたステラミーゴいわて花巻ではFリーグ退会を経験し、仙台でも財政難による降格を経験。逆境に立たされることも多いが「ヴォスクオーレ仙台を5年、10年、30年と繋げていかなくてはいけないと思わせてくれたのは、応援してくれる人たちの存在」と清水監督。「試合はひとつの作品。演者である僕たちが勇敢でなくてはならないし、そういった空気感をお客さんが感じながら素晴らしいゲームになっていく。人生を懸けた試合で派手なプレーができなくても、一人ひとりの選手の生きざまを感じられるような歴史的な日にしたい。そして、最後は昇格を決め、うれしさで泣いて終わりたい」とF1昇格への強い決意を見せた。

Fリーグ2023-2024 ディビジョン1・2入替戦
2月17日 13:00 エスポラーダ北海道 vs ヴォスクオーレ仙台
2月18日 13:00 エスポラーダ北海道 vs ヴォスクオーレ仙台
駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場

By サッカーキング編集部

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