5シーズンぶりのF1復帰を果たしたヴォスクオーレ仙台 [写真]=SHOKO
2月17日、18日の2日間にわたり、駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場で、Fリーグ2023-2024 ディビジョン1・2入替戦、エスポラーダ北海道vsヴォスクオーレ仙台が行われた。
初日の第1戦では、昇格を狙う仙台が積極的に先制を狙う。4分、CKの流れから森村孝志が放ったシュートを北海道GK関口優志がはじくと、ゴール前に詰めていた浅野岬がこぼれ球を押し込み先制に成功。さらに11分、丸山将輝のゴールでリードを広げた仙台に対し、たまらず北海道はタイムアウトを取得する。すると徐々にリズムを取り戻し、第1ピリオド終盤に堀米将太のゴールで1点を返した。
第2ピリオドでは一転、北海道が主導権を握る。しかし、ゴールに結びつかずに終盤を迎えると、室田祐希をGKに置きパワープレーを開始。仙台の6つ目のファウルで獲得した第2PKを室田が沈め、2-2の同点に追いついた。しかし、そのわずか14秒後には藤山翔太がゴール前に送ったボールを丸山が頭で押し込み仙台が勝ち越しに成功。そのまま試合が終了し、第1戦は3-2で仙台に軍配が上がった。
第2戦は入替戦のレギュレーションにより、ディビジョン1所属のアドバンテージを持つ北海道が勝利を収めれば残留決定。対する仙台は先に1勝を挙げたため、引き分け以上で昇格が決まる状況で2戦目を迎えた。
初戦では立ち上がりに課題のあった北海道だったが、第2戦では序盤から積極的にゴールを狙う。押される展開となった仙台だったが、この試合でも先にスコアを動かした。15分、右サイドでキックインを得ると、森村のパスに合わせ小野寺那央がシュートを放つ。すると、ゴール前にポジションを取る浅野のマークにボールが当たり、オウンゴール。仙台が先制に成功した。相手の3倍以上ものシュートを放ちながら得点に結びつかない北海道は、1点ビハインドのまま第1ピリオドを終えるかに思われたが、GK関口から堀米、福田亮とつないだボールを室田がワンタッチで流し込む。残り1秒、24本目のシュートがゴールネットを揺らし、1-1で第1ピリオドを折り返した。
第2ピリオドでも攻撃の手をゆるめない北海道だったが、仙台GK税田拓基の好守もあり、ゴールを割ることができない。スコアが動かないままジリジリと時間が経過すると、32分、仙台が丸山のゴールで勝ち越しに成功する。さらにおよそ30秒後には森村のキックインに合わせた浅野が追加点。残留を決めるために最低3点が必要となった北海道は、8分以上を残し室田をGKに置きパワープレーを開始する。しかし、連戦による疲労の影響も見え、仙台の守備を崩すことができない。終盤には藤山にパワープレー返しを決められ、さらにリードが広がってしまう。残り1秒までゴールを狙った北海道だったが、流れを引き寄せることができずに試合終了。4-1で勝利を収めた仙台が2連勝で入替戦を制し、5シーズンぶりのディビジョン1復帰を決めた。
敗れた北海道の嵯峨祐太監督は、時折、声を震わせながら「年間を通してチャンスを作っても決めきれないところが最後まで出てしまった。本当に選手は一生懸命、1年間取り組んできてくれたので、それを同じ方向に向け、もっと本気にさせられなかった自分の力不足だと感じている」と試合を振り返った。鈴木裕太郎主将は「1年でチームをF1に戻すという気持ちでいることで、やっと心がもっているようなところで、試合を振り返ると悔しいし悲しいし、ネガティブな言葉しか出てこない」と言葉少なに語り「せっかく記者会見を開いてもらったのにすみません」と肩を落とした。
2試合で2得点をマークした仙台の浅野岬は聖和学園フットサル部に所属し、特別指定選手としてFリーグのピッチに立つ18歳。ヴォスクオーレ仙台サテライトに所属する兄の翼も、同時期に仙台の特別指定を受けている。「翼」と「岬」の由来は人気サッカー漫画の「キャプテン翼」。父親の影響で自身も同漫画を好み、ヒーローは岬太郎なのだという。第1戦の先制点がFリーグ初ゴール。第2戦でも先制に絡み、追加点を挙げるなど大舞台で値千金の活躍を見せた。相手が森村や丸山を警戒する分、自身はノーマークであると考え「自分が点を取ればチームも盛り上がる」とゴールへの強い気持ちを持っていた。初ゴールのシーンでは「(森村)孝志さんが持ったときは絶対にシュートで終わってくれる」と、こぼれ球を狙えるポジションを取った。2戦目も自身のポジション取りがオウンゴールを誘発。「(小野寺)那央さんがいいところに折り返してくれたのでラッキーだった」と謙遜するが「感覚的なものもある」と話すとおり、ゴールへの嗅覚は鋭いようだ。「フットサル日本代表に入り、ワールドカップに出ることが目標」と話すルーキーが、来季はF1の舞台に挑む。
悲願の昇格を果たした仙台の清水誠監督は「勝ちしか必要なかったので、それを得られただけで十分。それ以外は何もない」と喜びを噛みしめ、平澤凌主将は「前半の最後に苦しい部分もあったが、後半はチーム力で戦えたので、そこは素晴らしかった。本当に素直に昇格を喜びたい」と笑顔を見せた。
2019-2020シーズン、仙台は経営難によりF2に降格。その後、2年間はFリーグへの参戦を断念し、クラブの立て直しに注力した。2020年の1月、F1最後の試合を終えて以来「4年間ずっと、1日も忘れたことはなかった」と清水監督。「暗闇の中を一生懸命走ったような、どこに向かっているかも分からない状況で強くなったのは間違いない。僕らの中から湧いてくるような強さもあると思うが、今日の試合を見てもらって、ストーリーというか物語みたいなものをもし、感じてもらえているとしたら、僕らが強くなった証拠かもしれない」と、苦難を乗り越えつかみ取ったF1昇格までの道のりを振り返った。
【結果】Fリーグ2023-2024 ディビジョン1・2入替戦
第1戦 エスポラーダ北海道 2-3 ヴォスクオーレ仙台
第2戦 エスポラーダ北海道 1-4 ヴォスクオーレ仙台
画像:
① F-sendai-f1-eyecatch
5シーズンぶりのF1復帰を果たしたヴォスクオーレ仙台
② F-sendai-asano
インタビューを受ける仙台のルーキー浅野岬
③ F-sendai-hirasawa2
感極まった表情を見せる仙台の平澤主将
クレジット:©SHOKO
By サッカーキング編集部
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