準々決勝で2ゴールを決めた前橋育英のFW青柳燎汰 [写真]=遠藤健次
「主犯は、自分なんです」
高校サッカー選手権準々決勝。難敵・京都橘を4-0で破る原動力となった2得点のFW青柳燎汰は潔く「自白」した。
話は試合前日の夜にさかのぼる。宿舎で夕食を囲んでいたとき、「盛り上げようと思って、ボケたり、ふざけたりして……」(青柳)騒いでいたのだという。段々と興が乗ってきた結果、「笑い声とか大きくなり過ぎていました」(青柳)。その騒ぎに入っていたのは、「完全に攻撃陣ばかりでした」(MF渡邊凌磨)。しかも、攻撃陣はここまで無得点。セットプレーからDFが決めるというパターンで辛くも勝ち残ってきていた。
落ちたのは、雷。
「これが勝負を前にしたチームの雰囲気か!? 点も取っていないのに、チャラチャラしているだけか!?」
山田耕介監督から一喝が入る。もちろん、悪意があって騒いでいたわけでないことは指揮官もよく分かっている。攻撃陣がどれだけ自分を犠牲にして守備に走り回っていたかも分かっている。だが、その態度を見た守備陣がどう思うのかというところも、また見えていた。
結果として前日夜に起きた「事件」は吉と出た。「見返さないといけない。そう思っていた」と青柳は言う。主将の鈴木徳真は、「今日は試合前から攻撃陣の気合いがまるで違いました」と証言してくれた。攻撃陣はアグレッシブにプレスバックし、FWとMF、MFとDFの間でボールホルダーを挟み込む。そこまでは過去の試合と同じだったが、その後が違った。「今日はみんなに連動性があった。これがない育英は普通の弱いチーム」(渡邊)。GKのキックを受けた渡邊がすかさず裏のスペースへ出したボールを、来ることが分かっていたかのように走り込んだ青柳が決めた8分の先制点はその典型だろう。
青柳が37分にもDF下山峻登のクロスを押し込んで2点目を奪うと、試合のペースは完全に前橋育英のものとなった。70分にはMF坂元達裕がドリブルシュートを叩き込み、ロスタイムにもFW横澤航平が追加点。奇しくも4点すべてを攻撃陣が挙げる形での快勝に、山田監督も「今日は攻撃陣が獲ってくれて本当に良かった。嬉しかった」とご満悦。「事件」を経た後で、勢いが出る勝ち方をした前橋育英は、10日の準決勝で同じ関東の流通経済大柏(千葉)と対峙する。
文=川端暁彦