日大藤沢の佐藤輝勝監督 [写真]=瀬藤尚美
第93回全国高校サッカー選手権大会の準決勝が10日に行われ、埼玉スタジアム2002で神奈川県代表の日大藤沢と石川県代表の星稜が対戦した。
日大藤沢は、22分にオウンゴールから失点を許すと、前半のうちに2点を追加される。苦しい状況の中、田場ディエゴを中心にゴールを狙うが、スコアは動かずに試合終了。0-3で敗れ、神奈川県勢初の大会制覇という夢は打ち砕かれた。
チームを率いる佐藤輝勝監督は、対戦した星稜に「さすが3年連続ベスト4、そして決勝に行くチームでした。ゲーム巧者だった」と称賛の言葉を送った。失点の場面を振り返ると、「アンラッキーという考えは持っていません。最初に与えたPKの流れからの失点も3点目も、自分たちが招いたものです」とコメント。「ただ後半、自分たちのサッカーをやれば、相手が45分で取ったものを取り返せるんだと、強気でいきました。失点は悔やまれるけれど、最後まで彼らが粘り強くやってくれたことは誇りに思っています」と選手たちを労った。
試合終了の笛が鳴ったとき、佐藤監督がピッチに立つ選手たちをじっと眺める場面があった。同監督は、「試合が終わったときから、次へのスタートが切れる。一番苦しいときに彼らがどんな顔をしているのかを見ていました」と明かすと、「自分が恩師に教わったことは、『しっかりと選手を見なさい』ということ。内面的なものやその時の様子など、本当に“見る”ということの難しさを、指導者をやってきて感じました。なので、最後の最後まで自分らしく彼らを見続けたというか、見つめていました。その時の様子をしっかりキャッチしている瞬間に、また新しいパワーが湧いてきました」と語った。
また佐藤監督は、今大会で「本当の悔しさを味わった」と言う。
「県代表になるのが難しい神奈川県の代表になって、勝ち進むごとに神奈川県の方々に応援してもらった。インフルエンザという見えない敵とも戦いながら、彼らはプラス思考で戦ってくれた。そういうことがあって、一歩一歩ですけれど成長できた。今日もまた半歩、もう一歩踏み出したからこそ悔しさがあると思う」
夏のインターハイ予選では、コーチが泣いている選手たちに「お前ら泣くほどやったのか」と厳しい言葉を投げ、その瞬間から選手たち自身が「本当に苦しいことをやろう」、「変わりたい」という気持ちで練習に取り組んできたと佐藤監督は語る。
「そういう意味では本当に悔しい思いをしたと思う。『お前たちは、本当に“悔しい”ということを今日味わったんだから、ここから先はさらに頑張って欲しい』と伝えました。大学でもサッカーを続ける選手たちには『このスタジアムに戻って来られるような選手になりなさい』、1・2年生たちには『来年また戻って来るためには、県のライバルとしのぎを削って勝つんだ。ここからスタートしないと間に合わない』と話しました。この場所に来たからこそ、それぞれが違う列車に乗っても前向きに、新しい目標に向かってチャレンジしていこうと思えました」
敗戦に悔しさを滲ませながらも、佐藤監督は早くも前を見据えた。