日ノ本のGK木付優衣 [写真]=吉田孝光
開催地を兵庫県に移した第23回全日本高等学校女子サッカー選手権大会は、地元・日ノ本(関西地域第1代表/兵庫県)が2年連続3回目の優勝を収めて幕を閉じた。優勝候補の本命と見られていた日ノ本は、選手権最多優勝を誇る常盤木(東北地域第1代表/宮城県)を決勝戦でPK戦の末に下し、全国383校の女子サッカー部の頂点に立った。
夏のインターハイも連覇中の日ノ本は、これで史上初の『夏冬2連覇』を達成。そのインターハイでは常盤木との対戦がなかったため、今回の決勝で常盤木を下したことにより完全優勝を成し遂げた。
日ノ本の強さを象徴していたのは守備だ。チームの主将である万屋美穂が負傷によって今大会を欠場したことにより、副キャプテンを務めていた竹村美咲が大会前に立候補して主将となり、木付優衣や國武愛美、吉田凪沙を中心に強固なディフェンスを作り上げた。「守備面では、今季一番いいパフォーマンスを見せてくれた。相手をよく見て体をしっかり寄せた守備をしてくれた」と田邊友恵監督が頷く守備は強固なものだった。
決勝のターニングポイントは、10分だろう。GK木付が相手選手と接触して倒れ、顔から流血して約9分間の中断を余儀なくされたが、「本人の意識がしっかりしていたし、話せていた。だから血が止まるまで待った」という田邊監督の英断が吉と出た。結果的に木付の速い飛び出しでピンチを凌ぎ、PK戦での好セーブで、日ノ本の優勝を引き寄せた。
今大会を見渡すと、大きな波乱がなく有力校が上位に進出した。ひとつの傾向を挙げるなら、日ノ本の木付だけでなく、村田女子(関東地域第1代表/東京)の有倉唯夏など、優秀なGKを擁するチームが勝ち残っていったことだ。大会全体のレベルが徐々に上がっているように、GKのレベルもまた、間違いなく向上している。この年代のチームは特にGKのパフォーマンスが勝敗に左右される。
優勝の立役者となった木付は、JFA(日本サッカー協会)が取り組んでいる『スーパー少女プロジェクト』のメンバーである。これは、将来性のあるGKを発掘・育成することを目的としたもので、そこでの『出会い』が自らを成長させたと話す。
「世代が近い同じポジションの選手と出会って合宿をして、そこで話す中でお互いに刺激し合って、日々の練習に取り組んできた」
女子チームに1〜3人しかいないGKは非常に孤独なポジションだ。様々な境遇にいる選手同士で情報を交換してきたから、そのポジションを続けてこられたのだという。
GKは次回大会以降も、間違いなくキーポジションとなる。
我々大人が、高校生に頑張ることだけを求めず、『スーパー少女プロジェクト』のように、選手に出会いと刺激を与え合う場を数多く創出することで、この全日本高等学校女子サッカー選手権、引いては、日本女子サッカーのレベルも間違いなく向上していく。
文=馬見新拓郎