10番を背負い、キャプテンマークを巻く中村健人
文・写真=吉田太郎
チームはボールが思う程回らず、前線でもボールが収まらない。25分にワンツーでMF三宅海斗のゴールに絡んだものの、自分自身もモヤモヤした気持ちを抱えてハーフタイムを迎えていた。そのハーフタイムに東福岡高校の森重潤也監督から指摘されたことは「攻撃においても、守備においても、ヒガシの10番らしくないプレー、時間帯が多かった」という点。「自分が一番戦って、背中で見せろ」とまずは10番として、主将としてしっかりとプレーすることを求められた。後半、東福岡の10番MF中村健人主将は見違えるようなプレーとリーダーシップで前回のインターハイ王者・東福岡を四日市中央工業高校との一戦で4-1の勝利へ導いた。
まず意識したのは走ること。中村は左右両足からスルーパス、クロスなど決定的なパスを出し、スペースへの持ち出しや相手の急所を突く飛び出しでゴールももたらすなど、高いサッカーセンスの持ち主だが、「とりあえず動こうかなと。そうしたらスペースも空くし、調子が悪い時は動くようにしている」という言葉どおりにまずは走って、背中でチームを鼓舞することを意識した。
そして積極的に攻撃に絡むという点で相手との差を生み出したMFは、左サイドから一発のロングキックでサイドを変えて決定機の起点になるなど、互いにチャンスをつくり合い、1-1のまま終盤を迎える好勝負の中、質の高いプレーでも存在感を放っていた。そして65分、FW餅山大輝が獲得したPKを何食わぬ表情で右隅に決めて決勝点。試合終了間際にもMF藤川虎太朗のゴールをアシストして勝利に貢献した。
相手の中盤には特別指定選手としてJ1のサンフレッチェ広島に登録されているU-18日本代表MF森島司がいた。「昨日試合に見に行ってあまり目立っていなくて油断していた部分もあった。やってみたらボールを取れないし、質も高い」と感じた。だが、「1試合通じて圧倒する、存在を見せつけたい」というMFはその動きの量で流れを変え、得点に絡み、試合にも勝利。世代屈指のMFと変わらぬ実力を関係者たちの前で示した。