作陽の攻撃陣をけん引する
文・写真=安藤隆人
Jクラブのスカウトの視線の中、和倉ユース2日目で彼は持ち味であるワンタッチプレーと、狭い局面での正確なプレーを披露した。
1年の時から注目を集める彼は、今年は絶対的なエースとして、チームに君臨している。だが、インターハイ岡山県予選。右もも肉離れから復帰して間もなかったのも影響したが、彼のプレーの精度は上がらず、チームも準々決勝で岡山学芸館にPKで敗れ、インターハイ出場を逃してしまった。
「岡山学芸館との試合のビデオを見て、自分が全く動けていなかった。時間が進むにつれて、どんどん動きが落ちていってしまって…。プレスバックや前からのプレスが行けなくなってしまったことで、チームに大きな迷惑をかけてしまったし、敗因を作ってしまった」
自分への不甲斐なさから、この夏は運動量と守備の質の向上に徹底してこだわった。「コンディションはばっちりです」と臨んだ今大会、トップ下の位置でゲームをコントロールするだけでなく、果敢なプレスとプレスバックで、その成長の跡を見せた。東京ヴェルディユースとのグループリーグ最終戦、5分にドリブルで高い位置で起点を作ると、正確な股抜きパスで、チャンスを演出。その後も相手に囲まれてもボールを失う事無く、前に運んで攻撃のリズムを作った。守備面では攻撃陣にタレントを有する東京Vユースに対し、厳しい球際を披露。自由を与えなかった。後半に入り、先制を許すと、38分にはロングボールに反応すると、素晴らしいファーストタッチでボールを収め、そのままスピードで縦に仕掛けてシュート。これは相手GKの好守に阻まれたが、流れるような一連のプレーは、技術の高さを裏付けていた。
だが、試合は0-2の敗戦。チームは1勝2敗でグループ3位でフィニッシュ。17〜32位トーナメントに回る事になった。
「今年のチームは守備が弱い。今日も我慢をしてゼロに抑えたかったけど、抑えられなかった。それは自分にも責任がある。僕がもっと前で取りきらないといけないし、もっと周りを助けるようなプレスバックを仕掛けないといけなかった。もっとワンプレー、ワンプレーに責任を持たないと、上では通用しません」
彼の言う通り、まだ寄せるべきところで寄せきれなかったり、密集地帯に飛び込むあまり、サイドのスペースや縦のスペースを有効活用できなかったりと、課題は散見された。だが、それを彼はしっかりと自覚をしている事が大きい。
彼が口にした「ワンプレーに責任を」。これは練習参加したサンフレッチェ広島で感じた事だった。「プロの選手は絶対に奪う、絶対に決めるという気持ちが強かった。自分のプレーに責任を持って、強い気持ちで戦っていた」。この刺激が彼をさらに成長させた。
「プロに行くなら、絶対に高卒で行きたい。スカウトの方が見てくれているのに、変なプレーは絶対にできない。責任を持ってやっていきたい」
自分の目標に向かって。伊藤涼太郎は和倉の地で、躍動を誓っている。