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ニューバランスが見せた新たな試み ”育成年代をサポートする大会”のモデルケースとは

2016.10.03

『new balance championship』では選手の体をトータルケアする『ヘルスケアブース』を設置。大会期間中は連日のように選手が殺到した

 スポーツメーカーのニューバランスは今年、育成年代にスポットを当てた新たな大会『new balance championship』を開催した。ニューバランスがこの大会を開催する最大の目的は、「出場機会が少ない選手に全国規模で戦える場を提供すること」で、カテゴリーはU-11、U-12、U-13、U-16と分けられている。ニューバランスが招待した出場チームは、全国指折りの強豪チームばかり。特に9月17日から開催されたU-16は高校1年生を対象で、昨年の選手権王者の東福岡高校(福岡県)をはじめ、星稜高校(石川県)、市立船橋高校(千葉県)、静岡学園高校(静岡県)ら、名立たる名門校が集結。大会は、3日間に渡る戦いの末に、青森山田高校(青森県)が初代王者に輝いた。

全国の名門が顔を揃えたU-16は、青森山田高校がの王者に輝いた

全国の名門が顔を揃えたU-16は、青森山田高校がの王者に輝いた

 一聞すると、ただ強豪校の1年生を集めただけの大会のように思えるが、これまでの大会にはない様々なアイデアが施されていた。まず特筆すべきは、各カテゴリーの決勝戦で、データスタジアムによるデータ収集が行われていることだ。デジタル化が進むに連れ、スポーツ界ではデータ分析が主流になり、野球やラグビーはもちろん、Jリーグでも対戦相手の分析や、戦術の構築にデータを用いるチームが増えている。そこでニューバランスは、「細かいデータを抽出することで、チームの強化・育成に役立ててほしい」という思いの下、決勝戦ではデータスタジアムによる試合分析を導入。Jリーグにも使用されている分析システムと同じフォーマットでデータを取得し、決勝戦に出場した2チームに分析レポートを特別に提供した。

 一方、すでにデータ分析を主としたトレーニングを行っているチームも見受けられた。U-16に出場した昌平高校(埼玉県)は、『FieldWiz(フィールドウィズ)』という装着型GPS装置を練習に導入。試合やトレーニング時に装着しプレーすることで、選手個々のフィールド上でのプレイエリアや走行距離、スプリント回数などを継続的に収集。さらに、心拍数の変化から見た体への負担度も数値で知ることができる。それらの集積したデータを、戦術分析やフィジカルトレーニングの効率化に役立てている。フィールドウィズは、フランスのリーグ・アンやスイスのスーパーリーグで導入されている他、今年のコパ・アメリではパラグアイ代表も使用。従来の装置に比べて低コストな上、複雑なソフトウエアも不要であることから、今後も多くのチームが導入する可能性を秘めている。

昌平高校は装着型GPS装置『FieldWiz(フィールドウィズ)』を使用したトレーニングを行っている

昌平高校は装着型GPS装置『FieldWiz(フィールドウィズ)』を使用したトレーニングを行っている

 さらに、選手のフィジカルケアにもこの大会ならではの試みが実施されていた。大会期間中、グラウンドの近くには『ヘルスケアブース』を設置し、柔道整復師やトレーナー、鍼灸師ら計十数名が常駐させた。試合中の怪我の治療はもちろん、試合前のコンディションのチェックから、試合後のアフターケアまで、選手個々の状態を万全に整える環境をニューバランスが提供した。ヘルスケアブースで選手を診療した石原龍馬さんは、「ニューバランスさんから『“怪我はいつでも治せる”そういう大会にしたいから来ないか?』という話をいただきました」と、参加した経緯を語った。ニューバランスからの考えに素晴らしさを感じ「是非参加させてください!」と返答したそうだ。

▼ヘルスケアブース フォトギャラリー

 診察に来た選手の状態はカルテに細かく記録し、いつ誰が来ても万全の状態で診察できるよう準備されている。さらに、不慮のアクシデントへの対策も万全だ。試合が行われるグラウンドには必ずスタッフが待機し、痛んだ選手をすぐに診察できる態勢をとっている。実際、選手が捻挫だと感じていたケガもスタッフの判断ですぐに病院へ直行し、骨折が判明した一幕があった。選手の体を医院ではなく現場で診ることのメリットについて、トレーナーの水野裕典さんは次のように語る。「現場で怪我を診るのは、医院で診察するのとは全然違います。例えば、同じ捻挫でも、すぐにアイシングすれば腫れが引いて痛みが取れる場合があります。痛みが取れたら選手も安心感を覚えてくれます。そこから信頼関係も築けるのも大きいですね」。その場で診療するからこそ治せる怪我もある。成長過程にある育成年代の体を思うからこそ、ニューバランスは診断のプロフェッショナルを大会に招集した。姿勢矯正施療家の西本健一さんは、「『もし(ヘルスケアブースが)なかったらどうなるんだろう?』というのが正直な感想です。この形がスタンダードになって、サッカーの大会にはこういうブースがあるのが当たり前になってほしい」と語った。

大会期間中ヘルスケアブースで選手の治療を行ったスタッフの皆さん(左から西本健一さん、水野裕典さん、石原龍馬さん)

大会期間中ヘルスケアブースで選手の治療を行ったスタッフの皆さん(左から西本健一さん、水野裕典さん、石原龍馬さん)

 マッサージやスポーツ鍼灸を受けられるブースには選手が殺到。何度も訪れるリピーターが続出し、ブース内は“憩いの場”と化すほどの盛況ぶりだった。他にも、スパイクの試履きブースも設置。ニューバランスの最新シューズ『VISARO(ビザロ)』と『FURON(フューロン)』のフィッティングはもちろん、実際に試合で使用することもでき、“N”のロゴが入ったシューズを履きプレーする選手が多く見受けられた。

 データ提供や選手のコンディションケア、自社商品の提供……。大会を通じてニューバランスが育成年代の強化・サポートに懸ける思いが随所に見られた。new balance championshipが今後のサッカー大会の新たなモデルケースとなる日も近いのかもしれない。

By サッカーキング編集部

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