青森山田に敗れた東海大仰星 [写真]=小林浩一
この冬の第95回全国高校サッカー選手権大会で最もインパクトを残したチームかもしれない。東海大仰星(大阪)は5度目の出場で同校初のベスト4進出。藤枝明誠(静岡)、鹿島学園(茨城)、富山一(富山)という強豪に勝利すると、特に準々決勝では2連覇を狙った王者・東福岡(福岡)に決定打を打たせず、1-0で勝利して高校サッカーファン、関係者を驚かせた。
東海大仰星が示したのは堅守。「チャンピオンになる上で守備の構築というのは間違いなく大切なポイントだと思います。ワールドカップで優勝するドイツだったり、やはりワールドクラスで考えると守備の組織というのは間違いなく重要だと思います」と語る中務雅之監督の下、守備の構築に取り組んできた。
東福岡戦では縦パスのコースを完全に消し、青森山田との準決勝も4バックと中盤のラインが相手のパスワークに距離感良く対応して仕掛けのパスを通させなかった。そしてチャレンジ&カバーを徹底。普段のトレーニングから特に求められてきた守備の連続性、一歩二歩のアプローチ、ポジショニングにまでこだわった守備、またバランスを取り続ける動きをプレミアリーグ勢の強豪相手に貫いた。組織に加えて球際での気迫溢れるプレーの連続など、2年生GK宮本一郎が「来年、また見せたいですね」と語った守り。それが東海大仰星を初のベスト4へ導いた。
準決勝では先制された3分後に同点に追いついて見せた。大阪府予選から対戦相手を苦しめてきた左SB面矢行斗のロングスローを起点にMF大崎航詩が左アーリークロス。これにファーサイドからフリーで飛び込んだMF松井修二が右足で鮮やかなゴールを決めた。指揮官も「彼らがしっかりゲームを読みながら、バランスを把握しながら、こういった舞台で美しいゴールを奪ってくれたのは、日頃彼らが取り組んでくれた成果だと思います」と目を潤ませたゴール。彼らは攻撃面でも埼玉スタジアムの観衆を沸かせた。
だが、チームにはもっとできたという悔いが残っている。それは自慢の守備について。面矢は「僕らがちゃんとやれば日本一の守備やったんで、僕らがまだまだ甘かったんで、先生のサッカーをまだまだ表現できなかったのがあります」と首を振る。準決勝ではセットプレーで人任せになった部分が出て、その隙が失点に繋がった。全国上位を争う勝負でその緩みが何をもたらすのか。敗戦からまた学んだ東海大仰星はより個人、チームが徹底して全国準決勝、決勝で勝つチームになる。
文=吉田太郎
By 吉田太郎