大商学園戦で決勝ゴールを挙げた十文字MF村上真帆 [写真]=吉田孝光
第25回全日本高等学校女子サッカー選手権大会は8日、ノエビアスタジアム神戸で決勝が行われた。
ともに初の決勝進出となった十文字高校(関東第3代表/東京)と大商学園高校(関西第2代表/大阪)の一戦は、十文字の主将FW村上真帆のロングシュートが決勝点となり、1-0で十文字が初優勝を収めた。
「いい流れが来ていたから、焦らずに余裕を持ってゴールを見ることができた」
61分に決めた自らの決勝点を振り返る村上は、記者たちに囲まれながら満足そうな表情を浮かべた。大商ゴールから約25メートル、中央の位置でMF源間葉月からパスを受ける直前、村上は一瞬、ゴールの位置を確認した。そして左足アウトサイドでトラップ。そのまま反転して左足を振り抜いた。すると、数々のピンチを凌ぎ、大商の決勝進出に大きく貢献してきた今大会No.1GK西村清花が伸ばす手の届かない、ゴール左上隅へと飛んでいく。
「右足が利き足だけど、アンバランスなのが嫌いで左足で蹴る練習をして、正確性も追求してきた」
村上の左足から放たれたシュートは、ゴールに吸い込まれるように収まり、5458人が集まったスタジアムからは、この日一番の歓声が轟いた。
部員59人、東京の名門・十文字の主将を任された村上は、小3でサッカーを始め、中学時代は栃木SCレディースでプレーした。そして高校進学と同時に十文字へ。
「苦しい時に決めてくれる選手」とは、創部から十文字を率いる石山隆之監督の評価だ。村上の決定力もさることながら、指揮官が褒めるのはその粘り強い守備だ。「前であんなに献身的に守備をする選手は、滅多にいない。背中で引っ張る選手」と絶賛した。
決勝の後半では、大商が攻撃を仕掛ける時間があったが、十文字守備陣が大きくクリアすると、周りの選手はそのボールを目で追うだけでなく、今大会3得点のMF松本茉奈加、準決勝で足を打撲したMF蔵田あかり、そして村上が追いかけた。
その十文字の高い集中力と堅実な守備が、卒業生であるFW横山久美(AC長野パルセイロレディース)、MF野口彩佳(INAC神戸レオネッサ→AC長野)も達成できなかった初優勝を手繰り寄せた。
今大会、正確な左足で前線にパスを供給しチャンスを演出してきたMF鈴木紗理も守備に追われ、「決勝はボールにあまり触れなかった」と悔しがったが、「大商はセットプレーが強い相手。ボールが切れた後の切り替えなども、全員で声を掛け合ってやろうと話していた」と、勝利のために走り回ったことに、最後は納得の表情だった。
全国433校の頂点に立ち、追われる立場になると見られるが、石山監督は即座にそれを否定する。
「いやいや、たぶんね、そうはならない。またチャレンジャー。来年度、東京予選を抜けるのが厳しいと思うから」と指揮官が話せば、早稲田大学ア式蹴球部女子への加入が内定している村上も「いつもチャレンジャーの気持ちでやってきたから、後輩にも、1試合1試合またチャレンジャーの気持ちで臨んでほしい」と、頂点に立った後のチームにアドバイスを送っていた。
文=馬見新拓郎
By 馬見新拓郎