藤枝順心が2大会ぶりの決勝へ駒を進めた [写真]=吉田孝光
第26回全日本高等学校女子サッカー選手権大会は4日、神戸市の神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で準決勝の2試合が行われた。
ともに優勝候補の呼び声高い、大商学園高校(関西2/大阪)と藤枝順心高校(東海2/静岡)の準決勝は、前後半に1得点ずつを決めた藤枝順心が、0-2で勝利して2大会ぶりの決勝進出を決めた。
ちょうど1年前、この大会の準々決勝で両校が対戦した際はCKとPKから得点を決めた大商学園が0-2で勝利していたが、今回は藤枝順心のDF大村琴美が、右CKのボールに頭で合わせて前半に先制した。後半には流れの中からFW今田紗良が0-2とし、去年とは反対のスコアで藤枝順心がリベンジすることに成功した。
藤枝順心の多々良和之監督は、前回大会を振り返りながら「その時は攻めても得点を取る術がなかった。大商学園に負けてからは、セットプレーの練習も多くやってきた。相手に極力CKを与えないようにもしたかった」と、敗退の教訓をすべて生かし、ついに大商学園を攻略した。
力強いキック力に加えて、選手全員が高いスキルを持つ大商学園は今大会、分厚い攻撃も持ち味の一つであったが、藤枝順心は攻め続けることによって、試合を制圧した。
準々決勝から先発の6人を入れ替えた藤枝順心イレブンに疲労の色は一切見られず、4-3-3の前の6人が懸命にプレスをかけ続ける。その中心にはキャプテンのMF千葉玲海菜がいて、空中戦でしっかりと競り合い、フリーでボールを持つことができない大商学園は、ファウルの数がどんどん増えていった。攻撃的なプレースタイルの大商学園DF西垣内由唯の裏のスペースを藤枝順心に突かれてしまい、大商学園は守備に追われる時間が長くなった。
藤枝順心には、中学年代から藤枝順心サッカークラブジュニアユースブルーという同じチームでプレーしてきた選手が複数いることもあり、多々良監督は「うちの強みは戦術実行能力。そこが勝ち切れている要因かな」と胸を張る。
試合終了間際には、大商学園のキャプテンDF林かおるが前線に上がって攻撃を仕掛けようとするも、藤枝順心が終盤も攻め続け、大商学園のシュート数は3本のみだった。
59分に鮮やかなミドルシュートを決めた、藤枝順心の今田は足首の痛みに耐えながらも、今大会2得点目でチームを決勝に導く活躍を見せ、「ピッチに立ったからには、出たくても出られない選手の分までプレーする義務がある」と、部員50人の分の気持ちを込めてフル出場した。
夏の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)決勝の再現となった、2回戦の日ノ本学園高校(関西1/兵庫)戦でも決勝点を決めている今田は「1年前の今日、(準々決勝で)負けた先輩たちへの恩返しのつもりでプレーしている。私が藤枝順心に来たのは、全国優勝するため。何が何でも絶対優勝します」と、様々な思いを背負って、中2日で迎える決勝へ意気込む。
満身創痍であるはずだが「今日もたくさんゴールを決めたかったけど、決勝で決めるために残しておきました。今年は戌年ですよね? ナンバーワン!を目指します」と、ミックスゾーンで自身を囲む大人を笑わせる余裕もあった。
文=馬見新拓郎
By 馬見新拓郎