浦和南の主将・鹿又耕作(左) [写真]=吉田太郎
選手権優勝3回を誇る浦和南。1969年度にインターハイ、国体(現在は選抜チームによって開催)、選手権の高校年代三冠を達成し、サッカー漫画『赤き血のイレブン』のモデルとなった“特別な”伝統校だ。
人工芝グラウンドに通じる通路の掲示板には、『選手権優勝』や『三冠王』のペナント。加えて、75年度選手権決勝で田嶋幸三氏(現日本サッカー協会会長)が決めた決勝ヘッドのシーンや、75、76年度の選手権連覇時の写真などとともに、今年成し遂げた埼玉制覇の記事が張り出されている。
校内だけでなく、地域からの注目度、期待も大きい。主将のMF鹿又耕作(3年)は「色々な人に『おめでとう』と言ってもらえて、南高って改めて凄い高校なんだなと実感しています」とコメント。全国出場を決めたことへの反響と同時に、『赤き血のイレブン』と評された先輩の存在の大きさを選手たちは実感していた。
その“特別な”伝統校は全国に出ただけで満足はしていない。初戦はインターハイ2回戦で0-3のスコアで敗れている東福岡。いきなり強敵との対戦となったが、チームは組織の部分で成長した手応えを持っている。
埼玉県予選では初戦から3試合連続1-0で勝利。そして、決勝の対戦相手はインターハイ3位の昌平だったが、強固な守備ブロックを敷きながら、相手のキーマンをマンマークで封じる戦いで0-0のまま試合を進めた。後半6分に失点しても怯まず、ロングボールとセットプレー中心の連続攻撃。セカンドボールを拾いながら攻め続け、エースMF大坂悠力(3年)、CB庄司千暁(3年)のゴールによって逆転勝ちをしてのけた。
伝統校のプライドと声援の後押しも力に、今年4戦全敗だった相手から勝利。これは、今年の全都道府県予選の中でも特にインパクトを残したアップセットだった。私立勢優勢の埼玉県で、私立勢に4連勝して全国切符を勝ち取ったチームは、その予選からさらに細部を突き詰めて本番の舞台へ。気迫溢れる攻守、知将・野崎正治監督の采配にも注目の『赤き血のイレブン』が、「(NACK5スタジアムでの試合で)完全ホームなので赤く染めたいですね」(大坂)という初戦から選手権を大いに盛り上げる。
取材・文=吉田太郎
By 吉田太郎