帝京長岡FW小池晴輝 [写真]=安藤隆人
帝京長岡の伝統行事として、選手権に出場した際に、3年生は自分の背番号を自由に選ぶことができる権利を得られる。2年ぶり6回目の出場を果たした今回も、その伝統行事は敢行された。
その中で10番を背負うことを率先して名乗り出たのが、FW小池晴輝だった。小池が県予選まで背負っていた番号は16で、10番を背負っていたのはFW矢尾板岳斗(2年)だった。小池はゴールへの意欲が高く、積極的に仕掛けるプレーで攻撃のアクセントとなるが、“バリバリの主力”というわけではなかった。
矢尾板やFW田中克幸(2年)の台頭により、レギュラーの座を明け渡すこともあった。だが、小池は10番を選んだ。それには強い意思があった。
「県大会準決勝の前に体調不良になって、先発から外れて、決勝は僕の力不足で出場できなかった。この状況で僕がさらに成長するには『覚悟』が必要だと思ったんです。今までの僕はちょっと自分に甘い所があって、それが最大の課題だと思っていた。去年10番の陶山(勇磨)さんは家も近くて、小学校からずっと一緒にサッカーをしていて、憧れの存在だった。僕も陶山さんのように10番を背負うことで、責任が生まれると思ったんです。10番背負う以上は試合に出て活躍をしないと周りが納得してくれない。もっとこだわりを持ってプレーをすることで、覚悟を形で表して、自分をもっと強くして行きたいと思いました」
最後の選手権。今年のチームは矢尾板、田中、GK猪越優惟、DF吉田晴稀、MF丸山喬太、谷内田哲平、FW晴山岬と2年生にタレントを揃えており、3年生は支える役割を担う。だが、彼らもただ脇役に徹しているわけではない。
「(エースの晴山)岬と(ゲームメイカーの谷内田)哲平とは中学時代(長岡JYFC)のころからずっと一緒にプレーしてきたし、岬とはずっと2トップを組んできた。だからこそ、彼らとの連携を全国の舞台で見せたい。それにやっぱり最後の選手権だし、メンバーにも入れなかった3年生の気持ちは分かっているつもりです。だからこそ、最後は3年生の意地というものをしっかりと見せたい。僕個人としても、もちろんスタメンで出たいですが、例え途中出場であっても、10番を背負っている以上、自分のやるべきことは点を獲ること。心を整理して挑みたいです」
今大会、帝京長岡はかなりの激戦ブロックに入った。3回戦まで勝ち上がれば、浜松開誠館vs長崎総合科学大附属の勝者と、さらに上に行けば前橋育英、東福岡、尚志らが同居する激戦ゾーンの勝者と戦わなければならない。もちろん初戦の高知西戦が重要になってくるのは言わずもがなだ。
この厳しいブロックを勝ち抜くには総力戦で臨まねばならない。その時こそ、10番に名乗り出た小池の覚悟が形になる時だ。『有言実行』の10番になるべく、小池は全身全霊でその牙を研ぎ澄ます。
取材・文=安藤隆人