尚志の2年生エース染野唯月 [写真]=梅月智史
取材・文=竹中玲央奈(提供:ストライカーデラックス編集部)
勝者となった尚志の攻撃にギアを入れたのは、後半途中に投入され先制点を記録した伊藤綾汰であることは間違いない。ボールを簡単には奪われず、複数人のプレッシャーもかいくぐれる彼がピッチに立つことで周囲の選手にも余裕が生まれ、自分たちのペースを掴むことに成功した。しかし、80分間トータルで見たときに、尚志の攻撃を支えていたのは先発メンバー11人の中に2年生で唯一名を連ねていた染野唯月だ。今年、U-17日本代表にも選出されたストライカーは、得意とするポストプレーや空中戦の強さで大いに存在感を発揮。得点こそなかったものの、その価値を十二分に示した。
「自分の1つの武器である“収める”というところは今日もできていて、尚志の攻撃のリズムを作れていた」と本人も振り返る。しかし、「自分は決定力を求められているので、決めなければいけない。チームを楽にさせなかったことは反省点です」と反省の弁を続けて語った。やはり得点という目に見えた成果を残せなかったことの悔しさのほうが、起点となってチームを助けられたという自認できる貢献度を上回るようであった。ある種“ストライカーの資質”を感じる。
そんな彼が目標としているのが、日本代表の大迫勇也だ。プレースタイルも自身と近いことから、理想の選手として彼の名前を挙げる。
「日本人の中では大迫勇也選手のように収められるプレーヤーが少ないと言われていて。自分はその中である程度、日本の中では身長もあるほうだと思うので、そこでボールを収めてさばいてゴール前に入るというのを見てもらえれば。そこはストロングなので、見てもらいたいですね」
染野は鹿島アントラーズの下部組織でプレーしていたのだが、それも大迫に憧れる理由の1つだ。「自分はアントラーズ出身なので、アントラーズの選手に憧れて見ていた。その中で自分が誰にも負けないという思いは、誰よりも大きいので。負けたくないという思いを前面に出していければなと思っています」
鹿島の強化部も彼には目線を向けている。“ポスト大迫”となるために。東福岡と戦う2回戦は彼の人生にとっても大きなターニングポイントになる。