決勝ゴールを上げた丸岡の川中浩夢は父親が記録した選手権3得点超えを狙う [写真]=平山孝志
取材・文=川嶋正隆(提供:ストライカーデラックス編集部)
拮抗した試合をこじ開けたのは期待の1年生だった。
スコアレスで迎えた52分、ピッチへ投入された川中浩夢(丸岡)は、「普段から意識している形」という馬場脩介の右アーリークロスに、逆サイドからダイアゴナルに走り込み、ワンタッチでゴールを決めた。決して簡単なシュートではなかったが「中に入れてくるのはわかっていました。僕の前にスペースもあったので、そこ(GKとDFの間)に入ればチャンスはあるなと思っていました。『来たー!』と思いました」と手応え十分の一撃だった。
川中は「自分は1年生で怖がるものは何もないです。なので、ゴール前にしっかりと入っていけました」と気持ちの強さも兼ね備えている。しかし、1回戦の東山戦では相手とのフィジカルコンタクトで後手を踏み、ひるんでしまって自分のプレーが出せなかったという。そんな川中のメンタルを変えたのが小坂康弘監督だった。川中をピッチに送り出す際に「絶対にひるむな。(体を)当てられても我慢し、自分から当たっていけ」と、気持ちの部分を強く伝えた。その指示が功を奏して生まれたゴールだった。
大きな仕事をやってのけた川中は、「これからも途中からの出場になると思うので、流れを変えることを求められていると思います。シュートも打っていけといわれているので(狙っていきたい)」とさらなる飛躍を誓う。そして最終目標は、背中を追いかける父を越えること。
川中の父・勝弘さんも丸岡の選手として選手権に出場。14番を背負い、この大舞台で3ゴールを奪う活躍を見せた。そんな父と同じ14番を背負い、1年生ながらにメンバー入り。決勝ゴールを奪った川中は父に「ありがとうと」とこれまでの感謝を口にした。
そして、「お父さんを越えたい。これからの試合で3点は決めて、お父さん(の3ゴール)を抜きたいです」と偉大な父が残した記録更新に意欲を見せる。チームの流れを変える役割を担いつつ、追いかけてきた父親の背中を追い抜くことができれば、自ずと丸岡の勝利が近づくだろう。1年生ジョーカーのこれからの活躍に期待したい。