小さな守護神の活躍で瀬戸内は初出場ながら快進撃を見せている [写真]=平山孝志
取材・文=森田将義(提供:ストライカーデラックス編集部)
初出場ながらも、ベスト8入りを達成。徹底した最終ラインからのポゼッションサッカーが特徴の瀬戸内を支えるのが、安藤正晴監督が「足元はピカイチで、あと10センチ背があればJリーガー。彼がいるから今のサッカーができる。小さいけどハイボールにも強くて、県内であれだけ安定しているキーパーはいない」と称賛する守護神の井上大也だ。
指揮官の言葉の通り、174cmの身長はGKとしては物足りない。だが、「小さくてキーパーをやっている人たちに希望を与えられるような選手になりたい」と大型GKに見劣りしないように努力を続けてきた。チームメイトの児玉絢が「相手が前から来ても、一つ奥にボールをつけてくれる。キックの精度がとても高いので助かっています」と口にする精度の高い左足キックはそうした努力の賜物だ。CBとのパス交換で、組み立てのスタート地点になりつつ、相手がプレスをかけて来れば、前方にフィードを送る。フィールド選手並みのキックは、憧れの選手として挙げるGK西川周作(浦和レッズ)を彷彿とさせるほどだ。
もちろん、本業であるセービングの質も高い。この日の前半は持ち味であるキックのミスが目立ったため、「後半に1本か2本ピンチが来ると思っていた。キックがダメな分、カバーできるプレーがしたいと思っていた」。予感が的中し、68分には岡山学芸館の上山拳史郎にゴールの上を突かれる決定的なミドルシュートを打たれたが、好反応でCKに逃げた。以降も集中力を保ったセービングで逃げ切りに貢献。失点はしたものの、勝利への貢献度は高かった。
今でこそ絶対的なポジションを手にしているが、ここに至るまでの道のりは決して楽ではなかった。1つ上の学年には、中学時代に世代別代表に選ばれたこともある藤元瑞樹がいたからだ。ただ、彼が2年生のころにヒザを手術し、1年間プレーできなくなったため、井上にチャンスが訪れた。
「藤元さんはすごくうまいんですけど、ケガをされたときにここがチャンスだと思って頑張った」と懸命にアピールに励んだという。今大会は藤元と長谷川智貴の3年生GK二人が試合に出られなくても、「頑張れよ」と井上に声をかけ、サポートに励んでくれていることが力になっている。彼らと一日でも長く、選手権を楽しむためにも井上は準々決勝以降でも活躍を続けるつもりだ。