帝京長岡にとって堅守速攻は苦手とする相手だったが… [写真]=小林渓太
取材・文=安藤隆人(提供:ストライカーデラックス編集部)
「ウチはこういうチームにめっぽう弱かった。そこをなんとか変えたいなと思っていた」
試合後、古沢徹監督が語ったように、技術ある選手をそろえ、ショートパスとドリブルを駆使して相手を切り崩していくスタイルの帝京長岡にとって、堅守からのパワーとスピードで押し切って来る長崎総科大附は苦手とするチームだった。
県予選でも準決勝で堅守とスピードカウンターを得意とする日本文理に大苦戦をし、2点のリードを守りきれずに一度は同点に追いつかれた。それでも、終盤に田中克幸のゴールでなんとか勝利をすることができた。大会6日前に流通経済大柏との練習試合を行ったが、そこでも関川郁万(鹿島アントラーズ内定)を擁する堅守と、前への爆発的なパワーを持った攻撃の前に1-2の敗戦を喫した。
「流通経済大柏戦は相手のプレッシャーに屈して、こっちも蹴ってしまって、リズムを掴めなかった」(古沢監督)
だが、こうした経験がチームを強くした。
「流通経済大柏とやって、絶対にひるんだらこうなるということがはっきりと分かった。ビビっても何も始まらない」とエースストライカーの晴山岬が語ったように、この試合で徹底したマンツーマンの守備と、強烈なロングキック、スピードアタッカーが飛び出して来る強烈なカウンターにも、慌てることなく対処する選手達の姿があった。
「ワンタッチと3人目のセットで崩して行く。ボランチを使ってワンタッチとか、角度をずらして出すことを意識しました。ロングボールを蹴られても、マイボールにしたら余裕を持って繋いで、一つ先を見ながらやるようにいいました」(古沢監督)
この言葉通り、梨本夢斗と丸山喬大のダブルボランチがセカンドボールを拾って落ち着かせた。そこから谷内田哲平、田中の両サイドハーフ、晴山と小池晴輝の2トップにボールを配給して、得意のショートパスとドリブルを融合した多彩な攻撃で押し込んだ。
20分にカウンターから先制弾を浴びるが、それでも一切慌てることなく、39分に谷内田がPKを決めて同点に追いつく。後半は得意のテンポのいい攻撃を展開しながら、相手のカウンターにもGK猪越優惟を軸に跳ね返し続けた。そして、田中が左足で決勝弾をたたき込み、勝負有り。選手権という大舞台で見事に苦手をはね除けた帝京長岡が、準々決勝に駒を進めた。