10番を背負ってプレーした長江伊吹 [写真]=吉田孝光
第27回全日本高等学校女子サッカー選手権大会が3日に開幕し、兵庫県内で1回戦の16試合が行われた。
前回大会で優勝した藤枝順心高校(東海1/静岡)と、夏の全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会(インターハイ)で優勝した常盤木学園高校(東北1/宮城)が対戦する今大会屈指の好カードは、0-0のまま前後半を終え、PK2-4で常盤木が勝利を収めた。
昨季の藤枝順心の無失点優勝を1年生レギュラーとして経験したDF長江伊吹は、2年生となった今季から背番号10を背負って今大会に臨んだ。
長江は昨年11月にU-17日本女子代表の一員として、FIFA U-17女子ワールドカップウルグアイ2018に参加。2試合にフル出場し、日本のベスト8進出に貢献した。ウルグアイでともに戦ったU-17日本女子代表の池田太監督や、1,731人の観客が見守る中、左CBの位置に入った長江は常盤木のエースFW中村恵実らを次々に抑え、持ち味のカバーリングでチームを何度も救った。
しかし、試合開始直後の1分に、藤枝順心の多々良和之監督が「攻撃の中心で一番ボールが収まる選手だった」と評するFW池口響子が負傷し、5分後にそのまま交代。霜が降りて滑りやすくなったピッチが藤枝順心の連覇の可能性を下げ、名門対決は両者譲らずPK戦にもつれ込んだ。
「PKの練習はしていて、その中でもよく決めていた選手を選んだ」と多々良監督。長江も「PKではいつも1番目に蹴っていた」と自信をのぞかせたが、「でも(静岡を)出発する日には外してしまって…」
この日も1番目のキッカーを務めたが、右足でゴール左へと放ったシュートは、常盤木のGK今井佑香に両手でセーブされた。続く藤枝順心のFW木許和心のキックもポスト左を叩いて、2人連続で失敗。連覇を期待された東海の有力校は、早くも今大会から姿を消した。
「勝ちたかった。気持ちが足りなかったのかな。常盤木の方は声を出していた。シュートを打ち切るところや、体も張って守るところも(常盤木が勝った)。最後のシュートを打たせてしまったり、前を向かれたり、サイドチェンジを簡単に許してしまった。そこを重点的に、あと一歩寄せないとピンチを招いてしまう」
試合直後から泣き崩れた長江は、ロッカールームから出てきてもまだ涙が止まらなかった。
多々良監督は「今の2年生は少し大人しいが、自分たちで考えて行動できる選手が多いので期待できる」と、不安と期待の両方を話したが、長江は「自分がもっと引っ張っていかないといけない。まずは夏のインターハイを目指して」と、ふたつ先の季節に待つ大舞台を、強い視線で見つめていた。
取材・文=馬見新拓郎
By 馬見新拓郎