[写真]=松尾祐希
卒業後にJリーグでプレーする選手はいない。だが、攻撃力は他を凌駕する。流れるようなパスワークや、局面を打開するスキルは見応え十分。フィールドプレーヤー全員が高い技術を持つ“鹿児島の雄”が培ったコンビネーションで、強豪校が居並ぶブロックに挑む。
3年連続の出場となり、全国大会の常連になりつつある神村学園。2年前の主将・高橋大悟(ギラヴァンツ北九州)のような絶対的なエースはいないが、攻撃力は先輩たちに引けを取らない。アンカーの大迫魁士(3年)とインサイドハーフの永吉飛翔(3年)、濱屋悠哉(3年)のトライアングルが攻撃を組み立て、左ウイングの下川床勇斗(2年)、右ウイングの野邊滉生(3年)がチャンスメイク。最前線に構える寺田聡(2年)は狡猾な点取り屋で抜け目がない。また、キャプテンを務める左SBの軸丸広大(3年)、右SB中島吏九(3年)も技術が高く、攻撃参加に加えてゲームメイクができる万能型だ。
どの選手も攻撃センスを兼ね備えており、実力は夏のインターハイでも実証済み。1回戦で注目チームの國學院久我山(東京)を3-2で撃破すると、2回戦は前原(沖縄)に6-1で大勝した。迎えた3回戦は優勝候補の尚志(福島)と対戦。昨冬の選手権では1-1と勇戦しながらもPK戦で敗れた相手に対し、真っ向勝負で押し込んだ。
「選手権は一方的にボールを握られたので、それと比べて成長があった」と有村圭一郎監督が手応えを明かした通り、序盤に濱屋が強烈なミドルシュートを叩き込んで1点を先行。その後も試合を支配し、多くの決定機を創出する。惜しくも後半に追い付かれ、PK戦で敗れたものの、その攻撃力は全国で通用した。
「能力が高い選手がいないけど、力以上のものは出せたと思う」。
指揮官が尚志戦後に話した通り、11人全員が力を発揮できれば、全国の強豪とも互角以上に戦えた。
とりわけ、存在感を示したのは先制点を奪った濱屋だ。周りを上手く使いながら、自らゴールを狙うスタイルで躍動。「チャンスを決め切れれば、相当評価は上がったはず。なので、まだチームを勝たせられる選手ではない」と指揮官は愛のある言葉で叱責したが、十分に全国で戦えるタレントであることを証明した。
チーム全体でチャンスは作れるだけに、あとはいかに決め切れるか。インターハイ後、有村監督は「フィニッシュまで持ち込み、相手の守備陣を崩すことはできていた。あとはこれをいかに得点に結びつけるか。逆転する、加点する、そういう部分を突き詰めていきたい」と話していた。夏に掴んだ手応えと露呈した課題。今回の選手権予選では全ての試合で複数得点を記録し、出場権を手に入れた。プリンスリーグ九州でも苦戦を強いられていたが、終盤戦は3試合連続複数得点で3連勝。攻撃陣の決定力は上向きつつある。
磨きを掛けた攻撃力が全国舞台で爆発すれば、並み居る強豪校を抑えて2006年度以来の4強入りも不可能ではない。
取材・文=松尾祐希