専大北上のFW菅原新 [写真]=小林健志
岩手県は長らく盛岡商と遠野の公立伝統校が2強として君臨し、この2校の対戦は人気カードとして多くの観客を集めてきた。しかし、その勢力図は近年変わりつつある。私立校が台頭し、上位進出を果たすようになってきたからだ。
その急先鋒となっているのが専大北上だ。近年力をつけ、あと一歩のところで全国大会出場を逃してきたが、今季は大きな結果を残した1年となった。
まずは県大会で初優勝を達成し、インターハイに初出場。1回戦で大社(島根)に勝利し、念願の全国での1勝を挙げた。2回戦の京都橘(京都)戦も強豪相手に全く怯まず前後半を終えて1-1、惜しくもPK戦敗れたが、「守備に追われる時間は長かったのですが、自分たちのリズムでボールを動かせる時間もありました。強豪校相手にこういうゲームができたのは選手権に向けて前向き」と小原昭弘監督は語り、大きな手応えを得た。そして、選手権予選でも決勝で盛岡商に勝利し、選手権初出場を決めた。岩手県リーグ1部も優勝し、プリンスリーグ東北参入戦にも出場。惜しくも聖和学園に敗れ、来季のプリンスリーグ東北参入は叶わなかったが、躍進の1年となったことは確かだ。
大きな成果となったのは、一貫して“ポゼッションサッカー”にこだわったことだ。岩手県だけではなく、全国で勝つことを意識した小原監督の20年にわたる指導がようやく花開いた。センターバックのDF岩渕蓮也(2年)は攻撃につながるフィードの正確さが持ち味。ボランチを務めるキャプテンMF阿部柊斗(3年)の繰り出すパスは非常に正確で、多くの決定機を演出する。両サイドハーフと2トップのアタッカー陣はいずれもシュートへの意識が高いことから、ゴールに向かうためのポゼッションを可能にする。
とりわけFW菅原新(3年)の存在感は大きい。前線でしっかりボールをおさめ、ゴールに絡むことができる上、時には強引な突破からシュートまで持ち込むこともできる。DFラインの背後を狙うFW千田舜(3年)とのコンビネーションも絶妙で、攻撃力は非常に高い。
小原監督はインターハイ後「全国は精度が高いと気付いたので、基本の部分が大事だと思いました。全国でどうしても守備がベースになりますが、しっかり守備した中でチャンスをつくり出すことが大事」と全国大会での戦いでも攻撃に意欲を見せる。インターハイに続き、選手権でも悲願の全国1勝を成し遂げたい。そして、目標は全国ベスト8。岩手のポゼッション集団は全国で大暴れする準備万端だ。
取材・文=小林健志