多彩な得点パターンを誇る草津東のFW渡邉颯太 [写真]=森田将義
身体能力が高く、大型ながらもスペースへの飛び出しが鋭いため、多彩な得点パターンでゴールネットを揺らせる。草津東のFW渡邉颯太(3年)は、今年の関西で間違いなくNo.1ストライカーだ。中学時代は無名の存在ながら、ルーキーイヤーからスタメンに定着した通り、その実力は確か。牛場哲郎監督も「クロスに飛び込むのが上手い。ゴール前での強さがあり、点が獲れる選手」と事あるごとに口にし、彼への期待を隠さなかった。
周囲が大きな期待を寄せる一方で、通り自己評価は決して高くない。過去には「自分に自信がない」と話していたこともある。エゴイスティックな選手が多いFWのポジションでは珍しいタイプの選手だ。内気な性格はプレーに見え隠れもする。強引にでもシュートまで持ち込める状況でも、ポストプレーで周囲に味方のお膳立てを優先する場面が珍しくない。何でも一定以上の基準でこなせる選手だからこその選択であり、チームのための選択肢としては正しい判断だが、観ていてもどかしさを感じるのも事実だ。本人も、「周りからもっと前を向いてシュートまで行けと言われるけど、獲られることを考えたら(ポストプレーに)逃げてしまう。そこが弱いところ」と自己分析する。
そうした性格を変える意味合いもあったのだろう。最終学年を迎えた今年は、内場監督からキャプテンに指名された。「小中学生の頃もキャプテンから逃げてきた」という渡邉は、2週間ほど熟考した末に引き受けた。チームを盛り上げるために懸命に声を出し続けたが、「ちょっとのことでも気にし過ぎていたし、不満をこぼせなかった。周りの人から『今年はキャプテンとしての仕事を頑張ろうとし過ぎて、ストライカーとしての色が消えていた』と指摘をされた」。
一方で、7月末にはJ1クラブの練習に参加。「練習はきつかったけど、めちゃくちゃ楽しかった。これまでは大学でサッカーするのも迷っていたけど、プロの練習に参加してみて初めてプロに行きたいと思った」と話す通り、より上のステージでプレーしたいという欲がようやく出てきた。能力が高く評価され、日本一の経験を持つ強豪大学への入学が決まったことも自信を深める一因になったのは間違いない。
夏以降はコンディション不良に苦しんだため、選手権予選では時間限定での出場となったが、チーム最多得点を奪い、3年連続での選手権出場に貢献。「しんどい中でも点を獲ってチームを勝たせたい」との意気込みを体現した。
一定の成果を残したことで、点取り屋とキャプテンの役割を果たしたが、選手権予選では「このまま終わったら絶対に後悔する」と話していたように不完全燃焼な気持ちはまだ晴らせていない。特に2年連続で大敗し、初戦で涙を飲んできた選手権の舞台となると、なおさらだ。予選を終えてからは1か月以上期間が空くため、必ず万全の状態に仕上げてくるだろう。高校最後の舞台で、ストライカーとして大暴れする渡邉の姿が見られるはずだ。
取材・文=森田将義
By 森田将義