長崎総科大附のキーマンは2年生GK梶原駿哉だ
小嶺忠敏監督がチームを率いて早10年。島原商や国見で一時代を築いた名伯楽の下で、長崎総科大附は着実に力を付けてきた。一昨年は安藤瑞季(セレッソ大阪)を擁して高校サッカー選手権で初のベスト8入り。昨年も鈴木冬一(湘南ベルマーレ)を中心に総合力の高さを見せ、ベスト16まで勝ち進んだ。
九州を代表する強豪校に成長を遂げ、今年も期待が懸かる長崎総科大附。しかし、今年は個人で勝負できる選手が少なく、苦戦を強いられた。1月の県新人戦は9連覇を逃し、ベスト8で敗退。インターハイも県予選の準々決勝で敗れた。
結果を残せず、チームもまとまりを欠いてしまう。例年であれば春先にキャプテンを決めていたが、今季は適任者が不在。インターハイ前に高武大也(3年)が名乗り出るまで固定できず、その惨状に監督歴51年の小嶺監督も、「今まで見てきたチームで一番厳しい」と抱えたほどだ。
それでも夏以降に高武を中心にチームが1つになると、選手権予選は安定感のある戦いでライバルたちを次々に撃破。決勝では前評判の高かった国見を2-1で破り、4年連続の全国出場を決めた。
指揮官の期待を良い意味で裏切った今年のチーム。とはいえ、全国では厳しい戦いが予想される。そこでキーマンになりそうなのが、GKの梶原駿哉(2年)だ。
最大の武器は187センチの高さを生かしたハイボール処理とセービング。今大会のGKでは唯一世代別代表に選ばれた選手であり、今大会の活躍次第ではブレイクの可能性を秘めている。特に成長曲線が急激に変わったのが、今年5月のU-16日本代表の候補合宿だ。
「キャッチの質が違った。周りは落とさないけど、自分だけはたまに落としたんです。ステップワークも僕より速く、視野も広い。マークの指示も的確でした。ピッチ外でも感じることが多く、食事も野菜やフルーツも含めてバランスよく食べていました。そういうところから、プロを目指す選手は違うと感じました」
世代トップクラスの選手から様々なことを吸収すると、徐々に意識や取り組みが変わっていく。課題と向き合い、自分を磨く作業に没頭。メンタル面も鍛えられ、調子を落としてBチームに降格しても、腐らずに日々を過ごせるようになった。
「代表から戻ってきて、ビルドアップを意識するようになったけど、うまくいかなかった。そこからミスが続いて、Bに落とされることがあったんです。メンタルが強くなっていたので、腐らずにやれました」
現状では絶対的な存在とは言えず、チーム内で激しいポジションを争っている最中。だが、小嶺監督は将来性を高く評価しており、予選決勝では周りの反対を押し切ってスタメンに抜擢するほど期待を懸けている。
「選手権が待ち遠しい。レギュラーが固定されているわけでもないし、自分の立ち位置はサブ。正GKを取れるように頑張りたい」
長崎の大器は選手権までにレギュラーの座をつかめるのか。梶原がブレイクを果たせれば、チームの上位進出もより現実的になるはずだ。
取材・文=松尾祐希