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[日大明誠]“Jクラブ消滅”の経験を胸に…強豪たちを退け初の檜舞台へ【高校サッカー選手権】

2019.12.29

一体感を武器に初の選手権出場を勝ち取った日大明誠 [写真]=安藤隆人

「3年間、同じメンバー、同じ場所でサッカーが出来る環境に感謝しよう」

 日大明誠を率いる後藤聡志監督は常々、129人の部員たちにそう話している。こうした言葉は多くの人たちが口にするが、後藤監督にとって非常に重みのある言葉だ。今から21年前のこと。当時、高校2年生だった後藤監督は、横浜フリューゲルスユースでプレーしていた。ジュニアユースから所属していたクラブへ愛着を持っていたが同年秋、突然の知らせがやってきた。

「フリューゲルスがなくなる。ジュニアユースも、ユースもなくなる」

 当時、ユースの監督だった安達亮氏(現カターレ富山監督)から伝えられると、後藤少年の頭の中が真っ白になった。Jリーグ開幕時から華々しく躍動していたクラブが、横浜マリノスとの合併という形で消滅する。ユースも同じくマリノスとの合併消滅となったのだ。

「亮さんから『マリノスのユースに行きたい選手は行ってもいい』と言われたのですが、当時のマリノスユースには金子勇樹など実力者が揃っていて、さらにフリューゲルスユースの1学年下には田中隼磨、坂田大輔、小原章吾らがいた。レベルの高い選手が一気にマリノスユースに移籍をすると、自分の実力では厳しいと思ったんです」

 後藤監督はフリューゲルスユースでプレーする傍ら、日大高に通っていた。迷った挙句、最後の1年は日大高のサッカー部でプレーすることを決断する。

「やっぱりフリューゲルスが好きだったので本当にショックでしたし、悲しかった。当たり前のようにチームがあることは幸せなことなんだなと痛感したんです」

 そして、2015年に人工芝グラウンドができ、本格的にサッカー部の強化に乗り出していた日大明誠に赴任すると、2年間コーチを務め2017年に監督に就任した。監督として大事にしているのはチームとしての一体感。所属していたチームがなくなったことで、大事なチームメイトたちと離れ離れになってしまい、一体感以前の問題に直面したからだ。

「もう今の子供たちはフリューゲルスというクラブがあったこと自体知らないと思います。でも、自分が当事者だったからこそ、『チームあっての一体感』だと伝えたいし、今サッカーを出来ている環境が当たり前ではないことを伝えることで、出ている選手、出ていない選手がどれだけお互いのことを思って過ごせるか。周りへの感謝の念や自覚が芽生えることで人としても大きく成長できると思っています」

 現3年生は後藤監督の指導をずっと受けてきた選手たち。1年の時から主軸ボランチの加藤友稀は文武両道の努力家で、特進クラスでも上位に位置する。キャプテンのFW鶴見來紀はムードメーカーで、リーダーシップもピカイチ。後藤監督が担任するクラスの学級委員長でもある。他にもMF大倉啓太、1年次からゴールを守るGK二上彰太、右サイドバックの西野隼人などもリーダーシップがあるキャラクターだ。

「言葉に対して素直に受け止めてくれる。盛り上げてくれるし、引き締めてもくれる存在がたくさんいて、キャプテンができる人間が複数いるのはチームの強みだと思います」

 指揮官の想いは確実に選手たちに伝わっている。だからからこそ、一体感を持ったチームは県予選で韮崎、日本航空という強豪を退け、1960年の創部以来初となる選手権を掴み取ることができたのだろう。初の檜舞台でも変わらぬ一体感を打ち出すのみだ。まずは初戦の相手である強豪・四日市中央工に対し、臆することなくチームとして立ち向かっていく。

取材・文=安藤隆人

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