高川学園は全国で1勝した前回大会から、攻守の要・MF新山大地主将と中国地方屈指のセンターバック田中誠太郎、GK古屋潤一、FW福地優雅と先発4人を残すほか、10番を背負うMF林晴己や県予選6ゴールのFW中山桂吾、高精度のクロスを配給する奥野奨太、対人守備が強みのDF加藤寛人と2年生も主軸へ成長。県予選決勝で決勝点をマークした2年生MF西澤和哉らサブ組も結果を残すなど攻守に充実している印象だ。
選手権出場26回、2度の全国3位も経験している伝統校は個々がハードワークを徹底。組織的な守備でボールを奪い、サイド攻撃へつなげる一方、林のテクニックとアイデアや中山の決定力、MF末永章太郎のドリブル、田中の展開力など個々の強みがアクセントとなっている。セットプレーも複数のバリエーションが準備されており、勝負のポイントになりそうだ。
今年は新人戦3回戦で公立校の岩国に3-4で敗戦。この悔しさがチームのエネルギーになった。「新人戦で負けて、悔しさを持ってどこよりも走って、どこよりも練習してきたという自信が僕の中ではある」と新山。9月の公式戦開幕後は空回りした部分があったか、なかなか一体感が出てこなかったり、「やるべきことが徹底できていなかった」(新山)という。だが、ミーティングでチームやポジションごとの決まりごとを確認。全体ミーティング後に各ポジションでのミーティングも実施した。
高川学園は17年から導入している部署制度が話題に。全部員が総務部や分析部、広報部、農業部、おもてなし部などの部署に所属し、仲間のために何ができるか考え、レギュラー・サブ、学年関係なく意見を出し合っている。サッカー以外で“小さな社会”を経験し、目配り、気配り、心配り、言葉配りのできる人間へ成長。自主性を持って、チームのために意見を出し合う彼らは、今回も意見を出し合ってボランチならば横パスを避けたり、セカンドボールを拾って2次攻撃につなげたりするなど、チームとして求めるプレーを明確化し、一体感のある戦いに結びつけた。
そして、県予選はノーシードから6試合を勝ち抜いて2連覇。新人戦の雪辱を果たした。新山は「これだけ(132人)部員がいる中でAチームだけやっている、ということではダメですし、チームが一つにならないと山口県というのは勝てないと思う」と語っていたが、一体感があったからこその勝利。個々の力があるだけに、楽しみなチームは全国でも一体感を持って戦い、目標の全国ベスト8以上を目指す。
【KEY PLAYER】MF林晴己
山口の名門、高川学園の10番は2年生MF林晴己が背負っている。今春、「(エースと)みんなからそう思われたいですね。2年生なんですけれども、自分が点を取って3年生に頼らずに自分が見せられるような年にしたいです」と語っていたMFは、崩しのアイデアとテクニックを表現。対面するDFの弱点を分析し、そこをしたたかに突く賢さも持つ林は、狭い局面をドリブルで打開し、ワンタッチのラストパスやクロスで相手の守りにズレを生み出すなど、違いを生み出している印象だ。
今年は新型コロナウイルスの影響で公式戦が減少。アピールする機会がなくなったが、その中で1試合1試合を大事にし、多くの課題を見つけることができたという。左足をより活用してプレーすることでボールロストが減り、クロスやシュートで終わる回数が増加。課題を改善しながら、成長を続けている。まだ軽いプレーで流れが変わってしまうリスクを考えてしまうというが、より積極性が出てくれば本人も目指している「相手から怖られる選手に」なりそうだ。
昨年は1年生ながら選手権初戦でベンチ入り。だが、出番はなく、敗れた2回戦はベンチ外だった。山口県選抜の一員として出場し、全国3位となった19年国体も出場機会が少なかっただけに、今回の選手権でエースと認めさせるプレーでチームを勝利へ導き、飛躍につなげる。
By サッカーキング編集部
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