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昌平|4度目の挑戦に臨む新鋭校…“当たり前のように”日本一を目指す優勝候補【選手権出場校紹介】

2020.12.29

 2010年代以降の高校サッカーを代表する新鋭校は、優勝候補の一角を担うと目される存在となっている。FW小見洋太がアルビレックス新潟、MF須藤直輝と小川優介が鹿島アントラーズ、柴圭汰が福島ユナイテッドに来季加入内定し、須藤と小川に加えて左サイドバックの小澤亮太も直近のU-18日本代表候補合宿へ招集を受けるなど、育ってきた「個」に対する外部からの評価も高まってきた。

 昌平は2007年に現校名となり、かつてFW玉田圭司(V.ファーレン長崎)らとともに習志野高校で高校サッカー選手権に出場し、日本高校選抜にも選ばれたことのある藤島崇之監督を招き、翌年から選抜アスリートクラスを設けて本格的に運動部の強化を始めた。2011年には公式戦の実施も可能な規格の人工芝グラウンドも完成し、体制を整えた。

 この翌年には同じグラウンドを使って活動する中学生年代のクラブチーム、FCラヴィーダの活動もスタート。実質的な育成組織として一貫指導体制を成立させている。藤島監督の実父で昌平のチームディレクターでもある元日本代表主将の藤島信雄氏が代表を務め、藤島監督と習志野高校時代以来の盟友で昌平高校コーチも兼ねる村松明人監督が率いるチームは着実に力を付けており、今年の関東U-15リーグでは並み居るJクラブのジュニアユースチームを抑えて優勝も果たしている。

 冒頭に挙げたプロ入り選手のうち、小見と小川もこのFCラヴィーダ育ち。こうして下から育ってくる選手たちと、高校から新たに昌平のグラウンドへ足を踏み入れる選手たちをミックスする形での強化が機能している。練習はゲーム形式中心で、紅白戦を重ねる競争的なトレーニングの中で個人を鍛えつつ、チームを錬磨してきた。

 また、「もともとサッカー部だけ強ければいいとは思っていなかったし、今の状況は本当にお互いの刺激になっている」と藤島監督が語るように、バスケットボール部や野球部、ラグビー部といった他の部活動も強化が進んでおり、“総合型スポーツ学校”となったことによる雰囲気の変化も見逃せないだろう。当たり前のように選手から「日本一を目指す」という言葉が聞かれるような雰囲気が生まれた今年度はコロナ禍の自粛期間中も、リモートでのチームトレーニングや各自の自主トレーニングを各選手が精力的にこなし、集合時は藤島監督が驚くほど状態の良い選手が多かったと言う。

 3度目の出場となった前回の高校サッカー選手権は興國高校、國學院久我山高校を破って8強まで進出も、青森山田高校に2-3と惜敗。準決勝以降の試合が行われる埼玉スタジアム2002へ進むという大きな目標は果たせなかった。今季狙うのはもちろん、そのリベンジ。「やっぱり青森山田と戦いたい」と須藤が語るように、対抗馬最右翼と目される新鋭校の4度目の挑戦が始まろうとしている。

【KEY PLAYER】MF荒井悠汰

[写真]=川端暁彦

 プロ入りカルテットや年代別日本代表選手にどうしても注目が集まりがちだが、このルーキーのタレント性は見逃せない。「ウチは実力主義なので、『経験を積ませよう』ということはまったくない。普通に選んだら、彼がメンバーに入ってきたということ」と藤島監督も認める実力派で、先輩の原田虹輝(川崎フロンターレ)ら名手が背負ってきた8番を託されたのも期待の証だ。

 左利きのテクニカルなドリブラーで、コンタクトプレーでも簡単に負けない強さを持つ攻撃的MF。「攻撃の最後のところは好きにやっていいと言われている」と語るように、カットインからのミドルシュートやスルーパス、ワンツーを使った突破、あるいはそれをオトリにして右サイドバックのオーバーラップを活用するといった縦横無尽の活躍を見せる。

 意識している選手は、海外のプロではなく同じレフティーで、帝京長岡高校の一員として前回の高校サッカー選手権を湧かせたU-18日本代表候補の田中克幸(明治大学)。「動画を観て参考にしている」と、豊富なプレーアイデアと技巧を模倣しつつ、選手権本大会で「点を取って勝利に貢献したい」と意気込む。

取材・文=川端暁彦

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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