[写真]=森田将義
今年の京都橘高校は、例年とは違う。183cmのGK中村青(3年)、182cmのDF小山凌(3年)を筆頭に、スタメンの半数以上が180cmを超える大型のチームで、競り合いの強さや攻守両面での迫力が持ち味だ。強みを生かすため、朝練ではセットプレーを猛練習。左右両サイドからロングスローを投げられる選手もいる。予選決勝で奪った2得点もロングスローとCKから生まれたゴールで、米澤一成監督も「全国で通用すると思う」と太鼓判を押す。また、今年は徳島ヴォルティス内定のFW西野太陽(3年)と、2年生ながらもすでに水面下で争奪戦が繰り広げられるFW木原励(2年)がいるのも心強い。大会屈指の2トップとの呼び声もある2人に、ボールが入れば得点の匂いが漂う。予選を通じて、トップ下を含めたコンビネーションも良くなっており、西野は「練習でもテンポが良いし、ミスも少なくなってきた。全国でやれるなという感覚はある。得点感覚はどんどん良くなっているので、後はやるだけ」と手応えを話す。
明確なストロングポイントがある一方で、不安要素もある。予選決勝ではロングボール主体の攻撃を仕掛けてきた東山高校に歩調を合わせ、攻撃が単調になってしまった。準決勝もリスタートからの得点が多く、MF中野晃弥(3年)が「もっと足元でサッカーをしたいけど、選手権予選はあまり足元で点が獲れていない。準決勝も相手に『橘はセットプレーだけ』と言われ悔しかった」と振り返る。全国に向けては得点のバリエーションをいかに増やせるかが、ポイントになりそうだ。また、予選では自分たちが主導権を握る試合が多かったが、全国では守備の時間が増える。予選後はそうした場面を想定し、県外の強豪との練習試合を行ったが、「今になって守備の課題が出てきた」(中野)。今年はコロナ禍の影響により、例年よりも事前の練習試合が限られていたため、練習で攻守のレベルアップを図ってきた。
持てる力を出せれば、全国でも十分上位を狙えるだけの力はある。チームとしても最大のターゲットは全国の頂点だが、中野は「雰囲気は良いけど、京都を獲れたことで満足している気もする。全国に向けて締まっていくとは思うけど、引き締まる時期が遅ければ質が上がらないので僕らが締めていかないといけない」と足元を見つめる。「京都勢はこの5年、1回戦を突破できていないので、まずは1回戦を突破したい」と続けるのは、西野だ。まずは松本国際高校との初戦に勝って、勢いに乗れるか注目だ。
【KEY PLAYER】DF金沢一矢
高さとセットプレーを武器にする今年の京都橘の象徴と言える選手だ。現在はCBを主戦場とするが、元々はFW出身。小学生の頃に、選手権で躍動するMF仙頭啓矢(京都サンガF.C.)とMF小屋松啓矢(サガン鳥栖)の姿をテレビで見て、京都橘への入学を志願した。憧れのチームに進みはしたが、入学当初はコンバートされたDFでのプレーに戸惑った。慣れないポジションであるためミスも多く、「試合に出るのが嫌だった」が、2年目になるとAチームでの出番が増え、飛躍を遂げていく。
最初はFWへの思いは強かったが、CBとしての素質は高かった。高さを生かした競り合いの強さと屈強な肉体を駆使した球際の強さで守備の防波堤となるだけでなく、攻撃への貢献度も高い。機を見て繰り出す3バックからの持ち上がりや、自らの武器と話す左右両足での正確なフィードで攻撃のスイッチを入れられるのは、彼の強みだ。また、昨年の選手権からはロングスローを投げる機会が増えた。勢いよくゴール前に入る彼のスローインが、相手にとって脅威なのは確か。金沢は全国に向けて、「自分たちの高さは武器なので、そこでも勝てるセットプレーを磨いていきたい」と口にする。全国では、攻守両面で今まで以上に彼の姿が輝くはずだ。
取材・文=森田将義
By 森田将義