今夏のインターハイを制している青森山田 [写真]=川端暁彦
28日、100回目の全国高校サッカー選手権大会が幕を開ける——。
こう聞いて、「あれ?」と思った人もいるかもしれない。例年、高校サッカー選手権の開会式と開幕戦の開催は30日だった。つまり、2日も早くなっているわけだ。
100回目の記念大会ゆえの特別措置というわけでもない。狙いはシンプルに大会日程のゆとりを増やすことにある。開幕を2日前倒しした上で、1回戦が29日(開幕戦のみ28日)、2回戦が31日、3回戦が1月2日、準々決勝が1月4日、そして少し間を空けて8日に準決勝、10日の成人の日に決勝という流れとなっている。従来は12月31日に1回戦、1月2日に2回戦、“中0日”となる3日に3回戦だったが、この“中0日”での試合を廃止。すべて中1日以上の間隔を確保することとなったわけだ。
最大の狙いは選手の健康面への配慮にあるが、大会の行方を占う上でも重要な要素となりそうだ。2回戦から登場のシード校と1回戦から勝ち上がった高校で最も大きな差が出るのが“中0日”での連戦となる3回戦と言われていただけに、クジ運による格差を小さくする効果も多少ありそうだ。また選手のフィジカルコンディションはもちろん、中0日では互いに戦術的な準備もほとんどできなかったため、3回戦の試合はどうしても内容的に行き当たりばったりの様相を呈すことが多かったが、それも少なくなりそうだ。
大会は昨年のような無観客ではなく、有観客で実施される見込み。会場の特別な空気感は高校サッカーならではの魅力だけに、さまざまな制限があるとはいえ、選手にとっては大きな励みとなりそうで、自ずとゲームの魅力も増しそうだ。また今年も全国各地の民放43社が分担してテレビ放送するが、インターネットでの放送も充実。今年は全試合のTVer、SPORTSBULLでのインターネット配信が実現している。全国どの地域にいても、どの代表校の試合も観られるというのはありがたい限り。記者にとっても至便である。
大会の優勝候補筆頭に推されるのは、夏の高校総体を制し、Jリーグのユースチームも含めて年間を通して争われる高円宮杯プレミアリーグEASTでも優勝を飾った青森山田(青森)。昨年、一昨年と2年連続で準優勝に終わっているが、「今年のほうが過去2大会より強いチームになっている自信はある」と黒田剛監督が語るとおり、例年以上の完成度だ。U-22日本代表で、FC東京に加入内定しているMF松木玖生を筆頭に役者も揃う。
もっとも、どれほど完成度高く仕上がったチームであっても食われることがあるのが選手権であり、他にも魅力十分のチームがひしめく。Jリーグ内定選手4名を擁する静岡学園(静岡)、質と圧が両立するサッカーを見せる流通経済大柏(千葉)、V・ファーレン長崎内定のMF笠柳翼、U-17日本代表候補のMF小池直矢など楽しみな選手が揃う前橋育英(群馬)、U-18日本代表候補の2年生FW福田師王を軸に爆発的な破壊力を持つ神村学園(鹿児島)、個性派しかいない公立の雄・大津高校(熊本)などなど挙げていけばキリがない。そして“個”という意味で言えば、U-22日本代表の最強CBチェイス・アンリを擁する尚志(福島)も外せない。
とはいえ、前評判をぶち破るようなチームや個人の躍進が必ずあるのも選手権の魅力であり、醍醐味である。前回大会を粘りの守備と見事なチームワークで制した山梨学院(山梨)はそうした選手権らしさの象徴のようなチームだった。連覇を狙う彼らも含め、どこが勝ち残ってもおかしくない。
28日、関東第一高校(東京B)と中津東(大分)の開幕戦から始まる100回目の高校サッカー選手権は、最後に笑う一校に絞られるまで目の離せない戦いの連続となることだろう。
文=川端暁彦
By 川端暁彦