兵庫県内三冠を達成した神戸弘陵[写真]=森田将義
2023年、J1リーグではヴィッセル神戸が優勝し、プロ野球では阪神タイガースとオリックス・バファローズがリーグ制覇するなど、スポーツシーンは兵庫県のチームが席巻したが、1年を締めくくるのは神戸弘陵かもしれない。
「子どもたちも“アレのアレ”とよく言っているので、その勢いにも乗って、子どもたちを輝かせるよう全力でサポートしたい」
そう意気込むのは谷純一監督だ。指揮官の言葉通り、今年は日本一を狙えるだけの手応えはある。主将のDF岡未來、MF大井孝輔、北藤朔、FW馬場悠平(いずれも3年)と、下級生から出場機会を掴んだ選手が各ポジションに揃うほか、DF阪上聖恩(2年)ら新たにポジションを掴んだ選手も実力派が揃う。後方からショートパスとロングパスを判断よく使い分けながら、積極的にゴールへ迫る“弘陵スタイル”に磨きがかかり、今年は新人戦、インターハイ、全国高校サッカー選手権大会予選の“兵庫県内三冠”をチーム史上初めて達成。充実したチーム状態で、最大のターゲットである選手権に挑む。
戦力が充実するだけでなく、この1年の成長も著しい。特に夏以降の成長角度は右肩上がりだ。転機となったのは高円宮杯プレミアリーグ勢との対戦。インターハイ1回戦では青森山田と対戦し、チャンスを作ったが、「セカンドボールの回収とフィジカルで全く通用しなかった」(MF佐波昂大、3年)ため、1-3で敗れた。夏休みに実施した島根県でのフェスティバルでは東福岡に0-5で大敗。佐波は「東福岡とは球際での攻防、前線のクオリティが全く違った」と振り返る。
二つの屈辱的な敗戦を機に、選手同士で「俺らと何が違うんだろう」と話し合いを進めた結果、日々のトレーニングから球際、切り替え、ヘディング、ゴール前の勝負強さを、より意識するようになったという。全国トップレベルとの差を痛感したフィジカルの差を埋めるため、食事に対する意識も大きく変わった。中でも大きく変わったのは、寮生の佐波。「おかわりは絶対にしようと決めている。多い時は3杯する。それでも足りない時は夜食も食べるし、間食も意識している」と食べる量を増やした結果、夏以降だけで4キロも体重が増加。他の選手もたくましさが増しており、これまでと比べてプレー強度が格段に上がっている。
「ここが足りない、ここはできるという所がハッキリした。それを子どもたちが理解して、取り組んでくれた。普段から言ってはいるけど、実際に高校サッカーのトップはまったく違うと肌で感じられたのは彼らにとっては非常に大きかった」(谷監督)
強さを示して掴んだ兵庫県内三冠の自信は、選手をさらに成長させるのは間違いない。「選手権を決めてからの1カ月は、選手が自信を持ち、上手くなりたいと欲を持って取り組む。出場権を得たチームの特権ではあるが、この1カ月で高校生はかなり伸びるので、しっかり導いてあげたい」と谷監督が話す通り、進化は今も続いている。
取材・文=森田将義
By 森田将義