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苦境を乗り越えて生まれた今治東の団結力 Bチームの3年生も最後までともに戦う

2023.12.26

2年ぶり3回目の選手権出場となる今治東[写真]=森田将義

「今年(選手権に)行けたのは大きい。よく(チーム作りが)間に合ったなと自分でも思う」

 谷謙吾監督が苦笑いした通り、今治東の今年は順風満帆とは言えなかった。昨年からAチームでスタメンだった選手は、エースのFW大荒陽平とGK井門泰誠、DF樋口智大(いずれも3年)ぐらい。多くの選手がこれまでBチームを主戦場にしていたが、コロナ禍の影響もあり、遠征に行く機会も少なかった。

 経験不足は明らかで、新チーム発足直後に行われた愛媛県の新人大会は初戦で敗退。春休みの県外遠征も思い通りの結果が得られなかったという。4月に高円宮杯プリンスリーグ四国が始まってからも悪い流れは断ち切れない。志向するポゼッションサッカーがうまく行かず、ミスからの失点が続いた結果、開幕から5連敗。年間わずか3勝という成績で愛媛県リーグへの降格が決まった。「勝てない時期が長く、1回チームがバラバラになりそうな時期もあった」と振り返るのは、DF樋口智大(3年)だ。

「プリンスでうまく行かないのは仕方ない。何とか選手権に照準を合わせていければいいと思っていた」。そう話す谷監督は夏以降、チームに手を加える。就任以降4バックがベースだったが、初めての試みとして3-4-2-1のシステムにトライ。狙いについてこう話す。

「今年はサイドバックの運動量と攻撃力がある。後ろに置いておくと回数が減るので、思い切ってウイングバックに置いて、両サイドを駆け上がる形にした。FWも1トップにすればスペースが与えられて、足の速い大荒が生きる。今年の子たちの特長が生かせる配置だった」

 システム変更は功を奏す。後ろの枚数が増えたことで、課題だったビルドアップが安定。押し込まれても粘り強く守ってカウンターから得点を奪う場面が増えた結果が、全国高校サッカー選手権大会予選での勝ち上がりに繋がった。例年のテンポ良くボールを動かす今治東のスタイルとは違うが、チーム一丸となって粘り強く戦うスタイルは、今年の選手に合っていた側面もある。主将のDF三好康介(3年)はこう話す。

「前線には陽平のようなうまい選手はいるけど、ずば抜けた技術を持った選手はいない。仲間と協力してプレーすることで、持っている力の何倍以上も出せると思う」

 チームの雰囲気の良さも今年の特長だ。主力の多くを下級生が占めるが、Bチームにいる3年生がインターハイ後も引退せず、チームに残っている。

「チームの一体感や元気の良さはチームの武器。試合には下級生が多く出ているけど、3年生が気持ちを切らさず、チームに対してできることをやろうと思ってくれている」(三好)

 例年は自分たちが主導権を握れる愛媛県内での戦いから、押し込まれる展開が増える全国での戦いに切り替える難しさがあったが、今年は戦いを継続できるのも好都合かもしれない。苦しんだ1年を乗り越えた選手たちは、最後の晴れ舞台で飛躍を狙っている。

取材・文=森田将義

By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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