J1京都に内定が決定している尚志の安斎悠人[写真]=吉田太郎
全国高校サッカー選手権大会で地元・福島県に初の日本一をもたらす。尚志のMF安斎悠人(3年)は福島県福島市出身。幼少期に東日本大震災を経験しているが、そのハンデを乗り越え、U-19日本代表選出、そして京都サンガF.C.への内定を勝ち取った。
尚志の仲村浩二監督は、福島県出身の選手がJ1クラブへ進むことを喜ぶ。「(震災の影響で)小さい頃の運動ということに関しては、『ハンデがあったんじゃないかな』って僕自身、すごく思っていて。やっぱり、この福島県内のメンバーからこのような形でJリーガーになれるのは、もう本当に嬉しいなと思っています」と語る。
尚志は震災直後の2011年度大会とFW染野唯月(現:東京ヴェルディ)が大活躍した2018年度の選手権で全国3位。最近10年間で9度も選手権に出場している強豪校は、茨城県出身の染野や神奈川県で中学時代を過ごしたDFチェイス・アンリ(現:シュトゥットガルト)のように、県外から挑戦してくる選手の比率が高い。
それでも、安斎は福島県出身でも「できる」。「たくさん辛い思いをした人もいますし、福島を明るくしたい」と志を持って尚志へ進学。1年時のU-16全国大会で圧倒的な突破力を発揮するなどチーム内での評価を高めていった。
仲村監督が「1年生の頃から特筆するものがあった」と説明するように、下級生時から周囲を驚かせるような、また「すげぇ」(仲村監督)と思わせるようなプレーを見せた。2年時、冬の高円宮杯プレミアリーグプレーオフで先発起用されると、武器のドリブルなど、攻撃力を発揮してチームのプレミアリーグ昇格に貢献した。だが、続く選手権では「不甲斐ないプレーで終わってしまった」と、思うようなプレーできずに“自滅”してしまい、チームも2回戦で敗退に終わっている。
安斎は、その悔しさもバネに、この1年間で成長した。課題のメンタル面を改善。どの試合でも安定して「サイドからの突破やクロス、シュートが武器」という強みを発揮できるようになった。
内定先の京都サンガF.C.・安藤淳強化部長代理(現:強化部長)は、突破力とゴールまで行き切る力を高く評価。「Jリーグの選手でも、これだけ突破力を持っている選手はなかなかいない。ポテンシャルは間違いない」と称賛する。安斎はリベンジの舞台でもある選手権で、その強みを最大限発揮する意気込みだ。
「しっかり僕たちの代で歴史を塗り替えたいなって思っています。絶対、優勝します」
福島県勢にとって選手権の最高成績は尚志のベスト4。安斎はその記録を塗り替え、地元・福島の人々を笑顔にする。
取材・文=吉田太郎
By 吉田太郎