大津のエース 碇明日麻[写真]=吉田太郎
覚醒した注目エースを中心に、初優勝に挑戦する。
過去10大会の全国高校サッカー選手権大会でベスト4以上に進出している公立校は、2021年度大会準優勝、前回大会3位の大津だけだ。九州の名峰、阿蘇山の麓に位置する人口3万人強の大津町で、選手育成と進化を続ける“公立の雄”が今冬、全国制覇を成し遂げる。
2023年、大津は“高校年代最高峰のリーグ戦”高円宮杯プレミアリーグWESTで4位と健闘。総失点はリーグで4番目に多い43だったが、総得点47は優勝した広島ユースの51に次いで2番目に多い数字だった。その半数近くの20得点を叩き出したのが、MF碇明日麻主将(3年、水戸ホーリーホック内定)だ。
碇は1年前、2年生センターバックとして空中戦の強さや守備能力の高さを発揮するなど、選手権準決勝進出に貢献。また、年代別日本代表や高校選抜ではボランチとして展開力やボール奪取力を見せていた。
その碇は2023年シーズン、トップ下やFWというよりゴールに近いポジションでプレー。プレミアリーグWESTでは19試合で20得点と1試合1得点以上のペースでゴールを量産し、得点ランキング2位タイの神村学園(鹿児島)FW西丸道人(3年、ベガルタ仙台内定)とジュビロ磐田U-18FW舩橋京汰(3年、愛媛FC内定)に6点差をつけて得点王に輝いた。
その得点数の約半数にあたる9得点が頭で決めたもの。5月の横浜FCユース戦では、すべて頭で3得点を叩き出している。188cmの高身長と抜群の跳躍力から繰り出すヘッドは、相手の警戒を上回る破壊力。加えて、しなやかな身のこなしと柔らかいボールタッチ、正確なシュートも武器にゴール前で違いを生み出してきた。
センターバック、ボランチ、アタッカーとしての才能も兼備。前回の選手権では、FWとセンターバックを務める198cmの“二刀流”、日大藤沢FW森重陽介(現:清水エスパルス)が注目を集めていたのに対し、碇は「(来年は)森重選手を超えて三刀流で」と微笑んでいた。ポジションは前線に固定されたが、この1年で点取り屋としての力を覚醒。「どこでも結果残せるのが自分の良さなので、どんなポジションでスタメンで呼ばれてもそこのポジションでしっかり活躍する」という言葉通り、前線でチームを牽引している。
有力な得点王候補として選手権を迎えるが、一方で主将の碇は全国制覇を目指す上で「個人だけじゃ無理」とチーム力の向上を強調してきた。昨年からのレギュラーで大会屈指の左SB田辺幸久(3年)やプレミアリーグWESTで10得点のFW稲田翼(3年)がリーダーシップも発揮。チーム全体で雰囲気を盛り上げ、CB吉本篤史(3年)を中心としたDF陣の粘り強さも着実についてきている。
「選手権で優勝して水戸にいきたい」と語る碇は、チームメートととともに一戦一戦に集中。そして勝ち上がり、過去2敗の国立競技場で2勝して目標を達成する。
取材・文=吉田太郎
By 吉田太郎