高円宮杯プレミアリーグとの二冠を目指す青森山田[写真]=吉田太郎
新生・青森山田が2冠に挑戦する。
約30年掛けて青森山田を全国屈指の「勝つ集団」に変えた黒田剛前監督が、2023年シーズンからJリーグのFC町田ゼルビア監督へ転身。恩師のJ2リーグ制覇、J1リーグ初昇格に刺激を受けた青森山田は、高円宮杯プレミアリーグEASTで16勝3分3敗という成績を残し、川崎フロンターレU-18や尚志(福島)、柏レイソルU-18、市立船橋(千葉)などを抑えて、2年ぶり4回目のプレミアリーグ優勝を果たした。
22試合のリーグ戦で2試合連続白星を逃したことは一度もなく、優勝チームに相応しい戦いで堂々のリーグ制覇。また、プレミアリーグWEST王者・サンフレッチェ広島F.Cユースとのファイナルでは0-1の後半45分にロングスローで同点に追いつき、45+4分の決勝ゴールによって“高校年代真の日本一”に輝いた。
新体制で早くもビッグタイトルを獲得。黒田前監督からバトンを引き継いだ正木昌宣監督は、「(黒田)監督がゼルビアでずっと結果を出し続けていて、刺激をお互いにもらい合っていた」と明かす。重圧を受けるというよりも、自分たちも結果を残そうと選手、スタッフが努力。プレミアリーグEAST優勝を決めたFC東京U-18戦で、今年のチームを初観戦した黒田前監督も「奮起して非常に力強くなったと思う」と目を細めていた。
その黒田前監督が「これを持続していくのが青森山田の強さなので、来年以降も勝ち続けていかないとならないし、青森山田である以上、こういうミッションは常に乗り越えていかなければならない」と語ったように、“常勝軍団”に満足している時間はない。
今度は2年ぶりの選手権タイトル奪還をかけた戦いに臨む。夏のインターハイは、3回戦で明秀日立のカウンターに沈められて0-1で敗戦。DF山本虎主将(3年)はその試合後、「泣く前にもっとやるべきことがあったんじゃないかと思っています」と厳しい言葉を発していたが、同じ轍を踏む訳にはいかない。ゴールを守ることへの執着心、また1本のシュートでも決め切る決定力、さまざまな相手に対応する多様性、そして最後までブレずに勝利を目指し続けるメンタリティが青森山田の強さを作り上げてきた。選手権では隙を見せることなく、ライバルたちを上回る。
戦力は充実している。U-17日本代表の山本と190センチのDF小泉佳絃(3年)は、いずれも高校年代トップクラスのストッパーで、シーズン終盤からボランチを務める万能型DF菅澤凱(3年)の存在がよりチームの守りを強固にしている。
また、過去の強い世代には強力なサイドハーフが必ずいたが、右のMF杉本英誉と左のMF川原良介(両者ともに3年)は、いずれも得点力と突破力を兼備。プレミアリーグEASTで得点ランキング2位の15得点をマークしたFW米谷壮史(3年)の存在も心強い。そして、10番の司令塔・MF芝田玲(3年)の高精度のプレースキックやDF小沼蒼珠(2年)のロングスローが青森山田の代名詞でもあるセットプレーでのゴールをもたらす。控え選手の層も厚く、有力な優勝候補であることは確か。
新生・青森山田が選手権でも、勝つ。
取材・文=吉田太郎
By 吉田太郎